ロバート・クレイマーVS空族 三本勝負！＋RAP IN TONDO
今年の夏、「neoneo03」の編集作業が大詰めを迎えるなか、なんとか観た2本の衝撃が忘れられない。ロバート・クレイマーの『アイス』と『マイルストーンズ』だ。
舞台は60年代後半〜70年代のアメリカ。”革命思想”や“カウンターカルチャー”の幻想性にシニカルな視線を加えながら、それでも突き進まざるを得ない人々の物語と生を緊密に見せ続けていく。同じ作家が、その問いをアメリカという“国家”にぶつけた大作『ルート1』を見た時の感動が甦った。どこか頽廃的だが、リアル。出ている人々は、どこまでが役者で、どこまでが実在するのか分からない。はて、この感じ、以前どこかで観たな…と思ったら、この企画を見て納得した。『サウダーヂ』だ！
「ドキュメンタリーとフィクションの違い…」の議論など吹っ飛ぶような、今回の日米両作品の異種格闘技対決。優れたリアルを孕んだ映画は、その境界を易々と越える。
（neoneo編集室 佐藤寛朗）
ロバート“孤高”クレイマー meets ジャパニーズ・ヤンキー！DIG! DIG! DIG!
『サウダーヂ』は「ロバート・クレイマー的」作品である
––フランシスコ・フェレイラ
（映画批評家「L’Expresso」（ポルトガル）／ロカルノ映画祭『サウダーヂ』上映時）
ヴェトナム戦争とゲリラ活動、ドラッグと自然、地方と国道、国家と土着、人種間の不寛容…40年の歳月を超え、無数に通底しあうクレイマーと空族。1970年代アメリカが最も刺激に満ちた時代を駆け抜けたロバート・クレイマーと、バブル以降のニッポンをソリッドに切り抜いた空族の映画異種格闘技戦！
『サウダージ』
『マイルストーンズ』
【上映スケジュール】
10月27日（日）14:10 マイルストーンズ／18:00 サウダーヂ
10月28日（月）14:30 ルート1（途中休憩10分）／19:20 国道20号線
10月29日（火）14:10 アイス／16:50 花物語バビロン+バビロン2 –THE OZAWA-／18:30 アイス
10月30日（水）14:10 マイルストーンズ／18:00 サウダーヂ
10月31日（木）14:30 アイス／17:10 マイルストーンズ
11月1日（金）14:30 花物語バビロン+バビロン2 –THE OZAWA-／16:20 国道20号線 ／18:00 サウダーヂ
11月2日（土）14:10 アイス／16:50 花物語バビロン+バビロン2 –THE OZAWA-
11月3日（日）13:40 ルート1（途中休憩10分）
11月4日（月・休）14:45 マイルストーンズ
11月5日（火）15:00 花物語バビロン+バビロン2 –THE OZAWA-／16:40 国道20号線
11月6日（水）15:00 サウダーヂ
11月7日（木）14:45 マイルストーンズ
11月8日（金）14:45 アイス／17:15 RAP IN TONDO【特別上映】
【会場】
オーディトリウム渋谷
東京都渋谷区円山町1-5 KINOHAUS 2F TEL: 03-6809-0538
公式HP：http://a-shibuya.jp/
【料金】
当日券：一般=1500円／学生・シニア=1200円／高校生=800円／中学生以下=500円
＊特集3回券=3300円（会期中も販売／複数人でのご使用も可）
各回入替／自由席（136席）
■ロバート・クレイマー（1936-1999）
1936年ニューヨーク生まれ。1960年代のヴェトナム反戦と若者たちの反逆のうねりのなかで、ジョン・ジョストらと共に映像による左翼前衛闘争集団“ニューズリール”を結成。集団制作により4年間に50本の作品を発表。その後もドキュメンタリーとフィクションの境界線上に、現代社会の本質を政治的・批評的立場から見つめる作品を発表し続けた。80年代からはパリに在住。ヨーロッパにもその視野を広げる。82年にはヴィム・ヴェンダース監督『ことの次第』の脚本を共同で執筆。1989年の『ルート1／USA』は、山形国際ドキュメンタリー映画祭’89で最優秀賞を受賞。没後の2001年に特集上映が行われた。
■空族（くぞく）
2000年～2003年にかけて製作された『雲の上』（監督・富田克也、撮影・高野貴子、共同脚本・故 井川拓）の現場に、当時『かたびら街』を撮影中だった相澤虎之助が参加。両作の同時上映イベントを7ヶ月間敢行したことをきっかけに、映像制作集団『空族』と名乗るようになる。2006年、『国道20号線』（富田＆相澤の共同脚本）の製作を機に、空族としての活動を本格化、“不満”をキーワードに、映画だけに留まらない活動をモットーとして現在に至る。『サウダーヂ』（2011）は異例のロングヒットを記録。現在のメンバーは石原寛郎、河上健太郎を加えた５名。
【ロバート・クレイマー作品】
アイス
ICE
1969年／アメリカ／英語／132分／モノクロ／16mm／提供：シネマトリックス
出演：トム・グリフィン、ポール・マクアイザック、ロバート・クレイマー、ジョナス・メカスほか
近未来、若き革命家たち――革命組織全国委員会のメンバーが潜伏状態から抜け出すためにゲリラ活動を開始する。メキシコでは解放戦線がアメリカ政府相手に抗争を続けており、目標は白人の革命家たちが黒人、プエルトリコ人、メキシコ人と同盟することだが、同じように搾取された犠牲者たちでありながら、互いを理解し合うことができない。終わらない闘争。69年のヴェトナム戦争が泥沼化する時代状況を鮮烈なフィクションとして描いた。
マイルストーンズ
MILESTONES
1975年／アメリカ／英語／カラー／206分／16mm／共同監督：ジョン・ダグラス／提供：シネマトリックス
出演：G・W・アボット、アンバー・アン、ローレル・バーガー、ノア・バーガほか
50人を超える登場人物からなる6つの物語が互いに干渉を繰り返しつつ巨大なモザイクを作り出す。背景に広がるのは「ユタの雪を被った山々から、自然がモニュメント・ヴァレーに作り出した彫刻まで、ホピ・インディアンの洞窟からニューヨーク・シティの汚れと埃まで」の壮大なキャンヴァス。アメリカの左翼ラディカルの生き残りたちの生活と生きざまが、政治的にも個人としても変化に直面した人々の社会の質感の中に入り込み、複雑にからみ合う。
ルート1
Route One/USA
1989年／フランス／英語／カラー／255分／35mm／提供：山形ドキュメンタリーフィルムライブラリー
クレイマー後期代表作にして『マイルストーンズ』の続編とみなされている本作。10年ぶりにアメリカに戻ったカメラマンとその友人ドクが、カナダ国境からフロリダまでルート1（国道1号線）を辿って東海岸を南下する。旅の途中で出会う様々な人々をスケッチするように映画は進む。4時間を超える本作で浮き彫りになるのは合衆国そのもの。
【空族作品】
花物語バビロン
1997年／8mm→デジタル／35分／監督・脚本：相澤虎之助
出演：柳田祐記、安田豊久、行友太郎
１人の若者はバンコクの安宿である夢を見る。一面のケシの花畑の中で声が聞こえてくる。「わたしたちを救ってください」その声にひかれ若者は20世紀の歴史の闇に葬り去られようとしている東南アジアの少数民族モン族の村へと向かうのであった。
バビロン2 –THE OZAWA-
2012年／8mm→デジタル／45分／監督・脚本・編集：相澤虎之助
出演：富田克也、伊藤仁、鷹野毅
新宿でキャッチをしていたオザワはベトナムでひとりの日本人に出会う。革命家だと名乗る謎の男、古神（コガミ）に誘われオザワはインドシナをさまようことになる。いつしかベトナムの戦場にまよいこんだオザワは、バビロンの銃を手にすることとなる。
サウダーヂ
SAUDADE
2011年／35mm／167分／監督：富田克也 脚本：相澤虎之助、富田克也
出演：鷹野 毅／伊藤仁／田我流(stillichimiya)／ディーチャイ・パウイーナ
2010年代のインディペンデント映画を代表する空族最高傑作。山梨県甲府。不況の土木建築業、その中に日系ブラジル人・タイ人をはじめとする様々な外国人労働者たちがいる。「SAUDADE」一言では説明できないポルトガル語。郷愁、情景、憧れ。そして、追い求めても叶わぬもの。苦難を忘れる束の間の喜びのとき、彼らは集い、歌い踊る。
国道20号線
THE ROUTE 20 NATIONAL ROAD
2006年／16mm→デジタル／77分／監督：富田克也 脚本：相澤虎之助、富田克也
出演：伊藤仁、りみ、鷹野毅
かつて暴走族だった主人公ヒサシは、同棲するジュンコとパチンコ通いの毎日。地方都市を走る国道。カラオケBOX、パチンコ店、消費者金融のATM、ドンキ･･･。現代の地方のありきたりの風景。ヒサシは夜の国道の灯が届かないその先に闇を見つけてしまった。宇宙のようにからっぽで、涯てのない闇のなかで繰り返されるありふれた事件、そしてかつて見たシンナーの幻覚の残像がヒサシを手招きする。
【特別上映】
RAP IN TONDO
2011年／デジタル／60分／構成：高野貴子／企画：富田克也
フィリピン最悪の犯罪地域とも言われているトンド地区。ヒップホップを通して地域の対立を失くそうという主旨のワークショップ招かれたstillichimiya（『サウダーヂ』出演）のYoung GとBig Ben。ヒップホップを通して地域の対立を失くそうという主旨のワークショップでの若者たちの交流を空族の富田＆相澤が見つめる。
