New【文学と記録⑧】ジョン・オカダと物語の不在 text 中里勇太

 ジョン・オカダという日系アメリカ人が書いた『ノーノー・ボーイ』(*1)という小説がある。舞台は第二次大戦後すぐのアメリカ・シアトル、主人公はイチロー・ヤマダという日系アメリカ人二世であり、物語の背景には第二次大戦中の日

New【Interview】 沈黙も、大事なコミュニケーションの一部です〜『日常対話』ホアン・フイチェン監督インタビュー

2016年に台湾で公開され、2017年2月のベルリン国際映画祭テディ賞(LGBT作品賞)に輝いたホアン・フイチェン監督の『日常対話』が、いよいよ日本でも劇場公開される。 本作は、一児の母親となった監督と、台湾独特の文化で

【Review】部屋の内側から描く、五輪へと向かう東京――『東京オリンピック2017 都営霞ヶ丘アパート』 text 細見葉介

 写真集のような映画だった。2013年に東京五輪の開催が決まって以来、変貌を加速してきた巨大都市・東京の最前線の現場で何が起こっていたのかを、生活する住民に寄り添った目線からとらえた、青山真也監督の「東京オリンピック20

【連載】つげ義春「無能の人」考⑨《後篇》 text 正津勉

「別離」 「別離」は、「COMICばく13、14」(1987・6、9)に発表。全48ページ。 これもまた扉絵からみてみよう。ひっそりとした夜景色がそれとのぞまれる。一つ点る街灯のそこだけ、照らされて明るくあり、手前に狭い

【Interview】犬の視点から人間を問う――『犬は歌わない』監督インタビュー text 金子遊&ムーリンプロダクション

 現在、全国で劇場公開中の異色の動物ドキュメンタリー『犬は歌わない』。SNS上では公開直前に告知された警告文「本映画は都会で生きる”野生”の犬の視点で描かれています。一部過度に残酷と感じられる可能性があるシーンがあること

【Interview】クルドの青年たちと、喜怒哀楽を共にして 『東京クルド』日向史有監督

入管法「改正」案は廃案になったが、今年3月にはスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんが施設収容中に死亡、中国人男性の死亡も発覚するなど、入管(出入国在留管理局)の非人道的な行いに注目が集まっている。抗議運動や署名活動

【Review】寄る辺ない気持ちとフィッシュマンズの魔法――『映画:フィッシュマンズ』 text 日方裕司

 今年でメジャーデビュー30周年を迎えたフィッシュマンズ。7月9日に公開を控える『映画:フィッシュマンズ』は、クラウドファンディングによって制作が実現した172分にも及ぶ長編のドキュメンタリー映画である。  「孤高のバン

【連載】ウディ・アレンの逆説 ポスト・トゥルース時代のスキャンダル① text 大内啓輔

ウディ・アレンはどこにいるのか? ウディ・アレンにとって今のところの最新作となっている『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』(2019)は、昨年7月3日に日本での劇場公開を迎えた。ウディ・アレンの代名詞ともなっているニュー

【連載】つげ義春「無能の人」考⑨《前篇》 text 正津勉

第九章 〈無能の人〉後三篇 「やもり」/「海へ」/「別離」 「やもり」 「やもり」は、「comicばく10」(1986・9)に発表。40ページ。〈無能の人〉シリーズ第5作「カメラを売る」と第6作「蒸発」の間に掲載された。

【Review】めのまえのものに思いを馳せながら――『想像』text 吉田恭大

『想像』は、緊急事態宣言下、2021年の5月28日に公開された。2017年から2019年にかけて上演されたリクリエーション版『三月の5日間』の制作の様子を、主に俳優の板橋優里に焦点を当てて追った作品である。  それじゃ「

【Review】おやすみなさい、よい夢を――『ふゆうするさかいめ』text 井河澤智子

今、私は「眠ること」に対しての困難を抱えながら、これを書いている。 自らの内でコントロール不可能な「眠り」=不眠に悩まされながら、毎日を過ごしている。 いったい、眠りとは、なんなのだろうか。 日々の疲れを癒やすもの。ある

【連載】つげ義春「無能の人」考⑧ text 正津勉

第八章 「蒸発」 無用者 「蒸発」(「comicばく11」1986・12)、シリーズ〈無能の人〉第6作である。全36頁。 ここではまず『前著』第四章をみることに。わたしはそこで「蒸発。これこそ、つげの積年の憧憬という、よ

【自作を語る】「感動」の呪縛——『ラプソディ オブ colors』text 佐藤隆之(本作監督)

 「佐藤さんて、アイヌだったんですか?」  とは、前作『kapiwとapappo~アイヌの姉妹の物語~』(2016年)を撮っていた頃、よく聞かされた言葉だ。企画書やトレイラーを見て、知人たち(多くはプロデューサー)がそん

【Review】ふたつのキン・ザ・ザーー『クー!キン・ザ・ザ』 text 井河澤智子

フォースと共にあらんことを。 長寿と繁栄を。(人差し指と中指、薬指と小指をくっつけ、中指と薬指と親指を開き、相手に手のひらを見せつつ) そして 中腰ガニ股、頬をパンパンと叩き、両腕を下ぎみに開いて 「クー!」 筆者が勝手

【連載】つげ義春「無能の人」考⑦ text 正津勉

第七章 「カメラを売る」 ガラクタ屋 「カメラを売る」(「comicばく9」1986・6)、シリーズ〈無能の人〉第5作である。全34頁。 まずもって扉絵からみよう。背にコンクリート壁。前に置かれたドラム缶の上、中古カメラ

【Review】デイヴィッド・バーンが向き合う人間ーー『アメリカン・ユートピア』 text 江頭シュンタロウ

 人間だけの舞台に、それを観る観客の人間たち。デイヴィッド・バーン、11人のバンドメンバー、観客。そして、それぞれの間にある空気を満たす音楽。舞台上には、マイクやドラム、配線すらもないのだ。ふと気が付けば、その空間に流れ

【連載】つげ義春「無能の人」考⑥ text 正津勉

第五章 「探石行」 うらを見せおもてを見せ…… 「探石行」(「comicばく8」1986・3)、シリーズ〈無能の人〉第4作である。全27頁。 はじめに扉絵からみたい。かなり山深くの僻村だろう。鬱蒼と茂る杉木立、畑地の向こ

【Review】古書に魅せられて――『ブックセラーズ』 text 吉成秀夫

はじめて試写で『ブックセラーズ』を見終わったとき、あまりの情報量に驚き、感嘆のため息を一つついてしばし呆然としました。 つぎに見たとき、私はこころみに字幕のカットがいくつあるかを数えてみましたが、1300カットを超えたと

【文学と記録⑦】 大岡昇平と身体 text 中里勇太

 戦争文学の名作として名高い「野火」(一九五二)の著者・大岡昇平。大岡昇平には、自身の太平洋戦争従軍体験に基づく連作小説『俘虜記』(一九五二)がある。その作品群は、一九四五年一月にフィリピンのミンドロ島で米軍の捕虜となる

【Review】蘇る、記憶の熱情――『きみが死んだあとで』 text 藤田功一

 冒頭、雨の中、若者の遺影を掲げて立つ一人の男がまっすぐにスクリーンのこちら側に視線を送っている。やがてそれが本作の監督・代島治彦であることがわかる。詰襟の学生服で立っているショットがただならぬ気配を漂わせて映画は幕をあ

【連載】つげ義春「無能の人」考⑤ text 正津勉

第四章 「鳥師」 鳥屋と、石屋と 「鳥師」(「comicばく7」1985・12)、シリーズ〈無能の人〉第3作である。それでははじめに扉絵からみることにしよう。 そのまえにこれまでの扉絵の図柄をふりかえっておく。第1作「石

【対談】黄インイク×井上修×野嶋剛 世代を超えたドキュメンタリストが語り合うーー『緑の牢獄』公開記念特別対談

左から井上修氏、黄インイク監督、野嶋剛氏 2021年3月23日、アンスティチュ・フランセ東京で、西表島の炭鉱をめぐる台湾人移民をテーマとしたドキュメンタリー『緑の牢獄』の完成披露試写会、および特別対談が行われた。参加者は