【Review】「ダルデンヌ・スタイル」以前の初期作品 text 吉田悠樹彦∔井河澤智子

neoneo編集室では2023年4月、『ダルデンヌ兄弟 社会をまなざす映画作家』を刊行した。本書ではさまざまなバックグラウンドを持つ執筆者の方々に、これも多種多様な切り口から論考やエッセイの執筆をいただいたものの、全体的

【特別寄稿】心の奥へと続く狭い道 2023年「山形ドキュメンタリー道場」記 text ルオ・イーシャン(羅苡珊)

「山形ドキュメンタリー道場」は山形県の温泉地に、新作に取り組むアジアの映像作家たちが長期滞在し、国際交流を通して思考を深める創作滞在プログラムだ。参加者は日常を離れ、集中した時間と場所で製作中の作品を新たな目で見直す。ワ

【Review】港を舞台にした「浪曲」的記録 『ハマのドン』text 細見葉介

横浜港埋立地へのIR(統合型リゾート)誘致をめぐる動きについて、反対派の急先鋒である港運業の中心的人物・藤木幸夫(1930〜)を軸に描いた『ハマのドン』が公開された。2018年の誘致決定から、横浜市長選挙での反対派の市長

【自作を語る】命を吹き込む「獅子」――『ウムイ 芸能の村』 text ダニエル・ロペス(本作監督)

2020年9月、世界中でパンデミックが本格化していた。この時期、私は沖縄にいて畑で果物や野菜を育てていた。自然の中に身を置くのは、気が紛れていいことだ。そんな時、宜野座にあるがらまんホールのプロデュ―サーである小越友也氏

【Review】孤独だったそれぞれの時間、響き渡る夜明けの声ーー『東京組曲2020』 text 井河澤智子

あの頃、あなたは、どう過ごしていましたか── 新型コロナウィルスの流行により、「普段の生活」が失われたあの頃。 「新しい生活様式」という旗印の下、人々は集うことも語り合うことも、触れ合うことも顔を見せることもない生活を送

【Review】すぐそばにある「わからなさ」ーー『上飯田の話』 text 若林良

 上飯田の話、というタイトルを事前知識なく聞いてまず推測したのは、「“上飯田さん”なる人物の話か」ということだった。たとえば、上飯田太郎さんとか、上飯田花子さんとか。いや、もうちょい今風に、かつジェンダーレスなネーミング

【連載】ドキュメンタリストの眼vol.28 アレクサンドル・ソクーロフ監督インタビュー text 金子遊

7年ぶりにソクーロフの監督作が上映されると聞き、2022年秋の東京国際映画祭に観に行った。劇映画もドキュメンタリーもジャンルに縛られることなく、多作で知られてきた映画作家にしては随分と間があいた印象だった。作品は期待を裏

【Interview】必要なのは〈empathy〉の力です――『トリとロキタ』 ダルデンヌ兄弟×山口由人

新作『トリとロキタ』の公開を控え、6年ぶりに来日したジャン゠ピエール&リュック・ダルデンヌ(ダルデンヌ兄弟)。一般社団法人Sustainable Gameを設立し、現在も個人の活動として入国管理局に収容されているビザが取

【News】「ドキュメンタリー叢書」新刊『ダルデンヌ兄弟 社会をまなざす映画作家』刊行!

neoneo編集室が刊行する「ドキュメンタリー叢書」の第三弾、『ダルデンヌ兄弟 社会をまなざす映画作家』が4月5日より書店発売開始となります。 ※『トリとロキタ』上映館のヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、シネ

【Review】映画を超えたまなざしーー『DAYS』text 伊東朋香

2022年12月に開催した第5回東京ドキュメンタリー映画祭では、常駐のスタッフ以外でもさまざまなボランティア・インターンの方のご尽力をいただいた。観客対応やSNSの更新のほか、上映作品の中から作品を選定し、それぞれ批評を

【Review】対話鑑賞で広がる世界ーー『目の見えない白鳥さん、アートを見にいく』 text 金澤朋香

2022年12月に開催した第5回東京ドキュメンタリー映画祭では、常駐のスタッフ以外でもさまざまなボランティア・インターンの方のご尽力をいただいた。観客対応やSNSの更新のほか、上映作品の中から作品を選定し、それぞれ批評を

【Review】中国の農村を感じとるためにーー『小さき麦の花』と近年の中国ドキュメンタリー映画をめぐって text 鈴木将久

 昨年2022年の9月頃、中国で一本の映画が話題になった。『小さき麦の花』(原題『隠入塵煙』)と題された映画であった。甘粛省の貧しい農村を舞台として、村人から忘れられた存在であった二人の男女が結婚し、静かに愛を育んで生活

【Review】マエルストロム(大混乱)との対峙ーー『マエルストロム』 text 伊東朋香

2022年12月に開催した第5回東京ドキュメンタリー映画祭では、常駐のスタッフ以外でもさまざまなボランティア・インターンの方のご尽力をいただいた。観客対応やSNSの更新のほか、上映作品の中から作品を選定し、それぞれ批評を

【Interview】「日々のできごと」として”魚市場の閉場”を撮る 『浦安魚市場のこと』歌川達人監督

千葉県浦安市といえば、東京ディズニーランドのある街として有名だが、半世紀前までは、東京湾に面した漁師町で、山本周五郎の「青べか物語」の舞台(のちに映画化)にもなったことはご存知だろうか。映画『浦安魚市場のこと』は、その象

【Report】中国ニューシネマのあるトレンド text 王穆岩

2022年9月から11月にかけ、シアター・イメージフォーラムでの上映を皮切りに、第36回イメージフォーラム・フェスティバル(IMF)が行われた。「アンダーグラウンドを再想像する」と題され、「“アンダーグラウンド”という言

【Review】胡波の短編映画について text 佟珊

2022年9月から11月にかけ、シアター・イメージフォーラムでの上映を皮切りに、第36回イメージフォーラム・フェスティバル(IMF)が行われた。「アンダーグラウンドを再想像する」と題され、「“アンダーグラウンド”という言

【Interview】既成の枠を越えてジョナス・メカス×吉増剛造に迫る――『眩暈 VERTIGO』 井上春生監督インタビュー

前衛映画界を牽引したジョナス・メカスが亡くなって1年後、2020年1月のニューヨーク。メカスと長年にわたり深く親交をかさねた詩人吉増剛造がマンハッタン、ブルックリンをおとずれ、メカスゆかりの地を巡る旅をとおし、ジョナス・

【TDFF特別Review】閉店の先にも希望はある――『ポラン』text 井上健一

「役割を終わったものは、ぐるぐるぐるぐる回るんですよ。物事は巡らなくちゃいけない。循環しなくちゃいけない」 これは、ドキュメンタリー映画「ポラン」の中で2021年2月に店舗の営業を終了した古本屋「ポラン書房」の店主・石田

【TDFF特別Review】“歴史戦”との闘い最前線――『標的』text 松崎まこと

「反日」そして「歴史戦」。こうした言葉が、いつしか頻繁に、耳に入ってくるようになった……。  そんなご時世に、思い描いていたライフプランが、一瞬にして灰燼に帰した男がいる。本作『標的』の主人公、植村隆だ。  朝日新聞記者

【TDFF特別Review】映像の官能性と物語性について――『私はおぼえている:竹部輝夫さんと中津の記憶』text 寺本郁夫

10人の鳥取の古老たちが幼少時からの思い出を語る224分に及ぶ波田野州平監督の連作『私はおぼえている』の一篇。老人の語る姿を正面からのカメラがひたすらに見据える。そんな映画に、なぜこれほど目を凝らして見入ってしまうのか。

【Interview】パンキシ渓谷は「世界の縮図」――『アダミアニ 祈りの谷』竹岡寛俊監督インタビュー

今年で5回目を迎える東京ドキュメンタリー映画祭が12月10日(土)〜12月23日(金)まで新宿K’s cinemaにて開催される。今年は2週に拡大。 この度、東京ドキュメンタリー映画祭2022の長編コンペティション部門に

【連載】ドキュメンタリストの眼vol.27 ツァイ・ミンリャン(蔡明亮)インタビュー text 金子遊

2022年の東京国際映画祭と東京フィルメックスでは、コロナ禍のなか、久しぶりに海外から審査員や監督たちを迎えることになった。その社会の流れを見越したかのように、両映画祭では異例の「ツァイ・ミンリャン監督デビュー30周年」