New【Review】『VIDEOPHOVIA』の徴 text 桝田豊

 若い女が男の求める声に従い自らの下腹をまさぐり自慰をする。相手はどんな男かと思うとパソコンの画面のなか、恐らくは見ず知らずの相手。  姓を朴とも青山ともいう女、愛は大阪鶴橋の古びた民家に母、叔母、二人の妹という女ばかり

New【自作を語る】この世の記録/あの世と企画 『アリ地獄天国』text 土屋トカチ(本作監督)

11年ぶりの新作長編『アリ地獄天国』が、この秋に都内で劇場公開される。これまで名古屋、大阪、横浜で公開されてきたが、コロナ禍による影響もあり大幅に遅れていた。 本作は、理不尽な労働環境に置かれた30代の正社員が個人加盟の

New【Review】ブラザーフッドの騎士たち――『ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった』 text 日方裕司

   ザ・バンドのドキュメンタリー映画『ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった』が日本で公開される。  60年代にルーツ・ミュージックの融合という全く新しい「アメリカン・ルーツ・ロック」を生み出し、静かな革命を起こしたザ・バ

【Interview】 「言葉の映画」を撮る『れいわ一揆』原一男(監督)×島野千尋(プロデューサー)

原一男監督と島野千尋プロデューサー 2019年夏の参議院選挙に立候補した安冨歩氏(東京大学教授)をはじめとする「れいわ新選組」のメンバーを追った原一男の新作ドキュメンタリー『れいわ一揆』が、全国で公開されている。コロナ禍

【Review】ふたつの『異端の鳥』がもとめた普遍 text 菊井崇史

 映画『異端の鳥』が結実するまでの道のりはけわしいものだったと監督ヴァーツラフ・マルホウルはふりかえっている。十七ヴァージョンのシナリオを書き、困難な資金調達等を忍耐づよくのりこえ、撮影には二年を要し、ついに十年以上の歳

【Review】俳優とエキストラの躍動『U-Carmen eKhayelitsha』 text 井澤佑斗

 『U-Carmen eKhayelitsha』は2005年に南アフリカのケープタウンで撮影された映画だ。同年のベルリン国際映画祭では金熊賞を受賞した。プロスペル・メリメの『カルメン』を原作にした映画は、カルロス・サウラ

【Review】悲しみの繋がる部屋――『ヴィタリナ』text 住本尚子

家というのは不思議なもので、帰れない場所になることがある。 ヴィタリナは出稼ぎに行った夫、ジョアキンをアフリカのカーボ・ヴェルデで待っていた。その家は、ジョアキンと二人で手作りしたお家。セメントをジョアキンが塗り、ヴィタ

【Review】大切な人との関係性の築き方――『友達やめた。』text 川瀬みちる

「で、今日来てもらった理由は、“ふたりの常識を考える会”を開こうと思って」 それを聞いて、まあちゃんは声を出して笑った。  『友達やめた。』は生まれつき耳の聞こえない映画監督・今村彩子がアスペルガー症候群の友人・まあちゃ

【Review】映画の始まりについて―佐藤零郎監督『長居青春酔夢歌』text 吉田孝行

   映画はいきなり始まる。白色を投影しただけの真っ白のスクリーンに、怒り、泣き、叫ぶ人達の声が響き渡る。しばらく映像は現れない。しかし、真っ白のスクリーンには、何かが映っているように見えるのであり、怒り、泣き、叫ぶ人達

【自作を語る】島々の音楽を繋ぐ奇跡のアンサンブル!『大海原のソングライン』の制作バッググラウンドストーリー text ティム・コール

このプロジェクトは最初から音楽、映画、コンサートの3つがクロスオーバーすることを念頭に置いて企画しました。音楽を録音しながら映画を撮り、また映画からコンサートへと繋がります。文字の読み書きが始まる前のオーストラリアの先住

【Review】なぜこれほどまでに性は人を傷つけるのだろう〜アディナ・ピンティリエ監督『タッチ・ミー・ノット ~ローラと秘密のカウンセリング~』text 長谷部友子

「なぜこれほどまでに性は人を傷つけるのだろう?」 それは私の長年の疑問であり解けない謎の一つだった。性が孕む何がそれほどまでに人を傷つけるのか、私にはどうしても理解ができず、その疑問を解くための端緒となるような作品だった

【連載】ドキュメンタリストの眼 vol.25 大森康宏(映像人類学者)インタビュー text 金子遊

 大森康宏さんは日本を代表する映像人類学者である。若かりし頃にフランスへ留学し、ジャン・ルーシュから直接、映像制作の方法を習ったことは有名である。その後、フランスのロマである「マヌーシュ」に関するドキュメンタリー映画を完

【Review】『ハニーランド 永遠の谷』サスティナブルとそうでないもの 異なる信念が交差する text 宮﨑千尋

『ハニーランド 永遠の谷』はバルカン半島の奥深く山岳地帯の孤立したエリアでの3年、そして400時間以上にも及ぶ撮影映像から抽出された、一人の女性の信念の物語である。と同時に、世界規模の環境問題へ警鐘を鳴らす作品でもある。

【Review】ある作家の6日間が映し出す「凍てつき」の時代ーー『ドヴラートフ レニングラードの作家たち』 text 吉田晴妃

セルゲイ・ドヴラートフは「20世紀で最も輝かしい」ロシア人作家の一人と言われているようで、彼の人生については、邦訳された小説『わが家の人びと』(成文社)巻末にある訳者の沼野充義氏による解説に詳しい。「まず必要なのは、すで

【連載】ドキュメンタリストの眼 vol.24 ダルデンヌ兄弟インタビュー text 金子遊

   世界的な映画の巨匠として知られるジャン=ピエール・ダルデンヌと、リュック・ダルデンヌの兄弟だが、もとはドキュメンタリー畑の出身であることはあまり知られていない。1970年代半ばからベルギーのブリュッセルを

【column】『傍観者あるいは偶然のテロリスト』―ドキュメンタリーの垣根を越えてー text 後藤和夫

私がこの作品を作ろうと思ったのは、しばらく前に一つの劇映画のプロットを思いついたことから始まる。 タイトルは『偶然のテロリスト』。若き日本人ジャーナリストがイスラエルで自爆テロを行う。その男の友人であった老ジャーナリスト

【連載】LA・ドキュメンタリー映画紀行 〈1〉北米のドキュメンタリー映画研究事情――研究者コミュニティの歴史と現在 text 中根若恵

映画の都・ロサンゼルスと聞くと、誰もが真っ先にハリウッドの華々しいイメージを連想するかもしれない。一年を通して温暖でカラっとした心地のよい気候のもとに発展したハリウッドの映画文化は、グローバルな伝播を通じてロサンゼルス、

【Review】詩人が誘われる記憶の街――ビー・ガン『凱里ブルース』text 村松泰聖

9年の刑期を終えて出所を果たした、とある詩人の男。ところが、彼の妻はすでにこの世を去っており、家を奪われた弟の態度は冷たく素っ気ない。孤独となった詩人は、亡き母の追憶に浸りながら、故郷に小さな診療所を開くことになる。貴州

【Review】 『セノーテ』― 潜り、蘇る古代マヤの両義性 text 長本かな海

はじめてスキューバーダイビングをした時、はじめてモノをモノとしてみたような気がした。海中の生物の知識がない私にとって海の底は混沌への入り口だった。ゴツゴツした岩に張り付いたいびつな物体や、なめらかでヌルヌルしたもの、触っ

【News】『ゲッベルスと私』のシリーズ第二弾が2020年夏に完成!サニーフィルムが日本配給権を取得!

 2018年に大ヒットを記録した『ゲッベルスと私』。シリーズ待望の第二弾『Ein jüdisches Leben』(英題 A JEWISH LIFE)が2020年夏に完成することが決定し、製作会社のブラックボックス フィ

【Review】ジョゼフ・ロージー『恋』の独創的な構成について text 井澤佑斗

 窓ガラスに水滴が映っている。途端に、不協和音から始まるピアノの独奏が開始される。その窓ガラスにオーバーラップして『恋』のタイトル――原題『The Go-Between』――が映し出される。 その不吉なテーマ曲ひとつだけ

【Report】IFFR&Berlinale2020 <ベルリン国際映画祭編> text歌川達人

世界の多様性に出会える社会派ベルリン国際映画祭 今年で第70回を迎えるベルリン国際映画祭。今年からArtistic Directorが交代し、ロカルノ国際映画祭でArtistic Directorを務めていたCarlo