【Review】古書に魅せられて――『ブックセラーズ』 text 吉成秀夫

はじめて試写で『ブックセラーズ』を見終わったとき、あまりの情報量に驚き、感嘆のため息を一つついてしばし呆然としました。 つぎに見たとき、私はこころみに字幕のカットがいくつあるかを数えてみましたが、1300カットを超えたと

【Review】蘇る、記憶の熱情――『きみが死んだあとで』 text 藤田功一

 冒頭、雨の中、若者の遺影を掲げて立つ一人の男がまっすぐにスクリーンのこちら側に視線を送っている。やがてそれが本作の監督・代島治彦であることがわかる。詰襟の学生服で立っているショットがただならぬ気配を漂わせて映画は幕をあ

【対談】黄インイク×井上修×野嶋剛 世代を超えたドキュメンタリストが語り合うーー『緑の牢獄』公開記念特別対談

左から井上修氏、黄インイク監督、野嶋剛氏 2021年3月23日、アンスティチュ・フランセ東京で、西表島の炭鉱をめぐる台湾人移民をテーマとしたドキュメンタリー『緑の牢獄』の完成披露試写会、および特別対談が行われた。参加者は

【Review】死者たちの〈異界〉と〈ポスト・インタビュー時代〉――『緑の牢獄』 text 藤田修平

 西表島と言えば「ジャングルリゾート」(星野リゾート)として、近年、人気を集める沖縄県の離島であるが、映画『緑の牢獄』はそのイメージとは対照的に、太陽の光が十分に届かず、鳥の声が不気味に反響する密林に死者がさまよう〈異界

【Review】「障害」という壁を超え、自閉症の彼らが見る美しい世界――『僕が跳びはねる理由』 text 柴垣萌子

「僕が跳びはねる理由」  NHKの番組で東田直樹さんをはじめて知った時、東田さんの身体全体での感情表現を前に「なんて感情豊かで純粋な人なんだろう」と当時感極まって号泣したことを覚えている。それから数年後、東田さんの著書『

【Book Review】「私の映画言語」とは何か――『まだ見ぬ映画言語に向けて』 text 若林良

「個の姿勢」を尊重すること  本書は、2014年から15年にかけて東京・御茶ノ水のエスパス・ビブリオで行われた、吉田喜重、舩橋淳両監督による「まだ見ぬ映画言語に向けて」と題された対談イベントを書籍化したものである。  4

【Review】植民地支配や戦争責任を問い返す「東アジア反日武装戦線」のドキュメンタリー『狼をさがして』 text 小林蓮実

武装闘争は、どのような思いで実行されたのか。そしてそれを、どのように考えるのか。今回、この武装闘争を実行してきた「東アジア反日武装戦線」のドキュメンタリー作品が完成した。それが、韓国のキム・ミレ監督作品『狼をさがして』だ

【連載】LA・ドキュメンタリー映画紀行 〈3〉パンデミック下での映画製作と教育——南カリフォルニア大学プロダクション部門を中心に text 中根若恵

南カリフォルニア大学映画芸術学科のスタジオ外観 世界中で未曾有の事態をもたらしたパンデミックは、映画業界にも深刻なダメージを与えてきた。毎年2月に行われるのが恒例だったアカデミー賞が延期になったのをはじめとして、長引くパ

【自作を語る】人の強さに触れて――『たゆたえども沈まず』 text 遠藤隆(本作監督)

 東日本大震災から10年の節目となる2021年3月。テレビ各局は様々にこの10年を振り返り、被災地の今を伝える番組を放送するだろう。しかし、私はこの未曽有の大惨事を伝えるのにテレビという媒体には限界があると思っている。

【Review】そして、季節は巡りゆく――『夏時間』text 井河澤智子

 これは、「家」をめぐる物語。  建物としての「家」。そして、「家族」という意味の「家」。  家は、家族を包み込む。  これは、ある夏の、ある家の物語。  第24回釜山国際映画祭でGDK賞他4冠をはじめ、第49回ロッテル

【Review】それぞれの生を尊ぶこと――『きこえなかったあの日』 text 川瀬みちる

「津波の警報が鳴っていた。わたしは全くきこえなかった」  大災害という「想定外」において、聴覚障害者という存在はさらなる「想定外」とされてしまっていた。  映画「きこえなかったあの日」は、自らも聴覚障害を持つ今村彩子監督

【News】東京ドキュメンタリー映画祭 in OSAKA・第二弾 シアターセブンにて開催決定!

neoneo編集室が主催する「東京ドキュメンタリー映画祭」が2度目の大阪上陸! この春、大阪シアターセブンにてセレクション上映&新たな観客賞も! 映画祭のチラシはこちらから! テレビ、映画、ネット動画の枠を超えたドキュメ

【自作を語る】「つまらん映画」と言われたい/『あこがれの空の下 〜教科書のない小学校の一年〜』text 増田浩(本作共同監督)

  3年⽣の国語「ちいちゃんのかげおくり」で、晴れた⽇に校庭で実際に「影送り」をやってみた時の⼀コマ。何度か挑戦して、「⾒えた!」と喜んでいる⼦どもたち。 「和光小学校って知ってる? 教科書がない学校なんだって

【Review】台湾のマージナル――『私たちの青春、台湾』 text 荒井敬史

前代未聞の議会占拠 2014年3月に起こった台湾のひまわり学生運動のムーブメントは、学生たちが立法院(国会)占拠に成功したという耳を疑うようなニュースが流れたことで世界の注目を集めた。その背後には、果たしてどのようなネッ

【Book Review】描き直される映像詩人の肖像――『ジョナス・メカス論集 映像詩人の全貌』 text 大内啓輔

2019年1月23日に96歳で逝去したジョナス・メカス。その死から2年を迎えようとしているタイミングで刊行された『ジョナス・メカス論集 映像詩人の全貌』と題された本書は、ドキュメンタリー専門誌「neoneo」編集室が創刊

【Book Review】ジグザグ道の途中で――『そして映画館はつづく あの劇場で見た映画はなぜ忘れられないのだろう』 text 鈴木里実

今年ほど、映画館へのさまざまな想いが交錯した年はありませんでした。緊急事態宣言下で映画館が休館し、それまで当たり前のようにできていたスクリーンで映画を見るという行為ができないことへの飢えや寂しさ、また、再び劇場が開いてか

【自作を語る】調査屋を調査――『調査屋マオさんの恋文』 text 今井いおり(本作監督)

マオさんとの出会い 元々自給自足に興味があった私は、そういった本を読んでいました。 その中の一つに佐藤眞生さん(以下マオさん)の本がありました。大阪府茨木市に住んでいる事が分かり、同じ大阪なので連絡をとりました。マオさん

【Review】大阪行ったり来たり――リム・カーワイ『カム・アンド・ゴー』 text 井河澤智子

 まさに今後の大阪市の運命が決まるというその夜に、平成最後の大阪の春を描いた映画が東京で上映された。  そして、上映終了後すぐ、その結果が報じられた。大阪市、存続、と。  コロナ禍により、他の映画祭が中止あるいはリモート

【Review】素朴な声に導かれて―――小森はるか『空に聞く』 text 五十嵐拓也

 タイトルの文字すら見出せぬまま、映画館のスクリーンには、パソコンを操作し何かの準備を進める女性の手つきが映し出され、ギターの音色が響く。観客は、女性が誤って音を二重に流してしまう様子から、この女性がラジオ放送の準備を進

【Review】セルゲイ・ロズニツァを日本に導入する――『アウステルリッツ』『粛清裁判』『国葬』text 吉田孝行

日本では映画祭やミニシアターなどで世界中の様々な映画が上映されているが、それでもその世界的な評価とは裏腹に、なかなか上映される機会に恵まれない映画作家がいる。数年前までは、ドイツのペーター・ネストラーやフィリピンのラヴ・

【Review】『VIDEOPHOBIA』の徴 text 桝田豊

 若い女が男の求める声に従い自らの下腹をまさぐり自慰をする。相手はどんな男かと思うとパソコンの画面のなか、恐らくは見ず知らずの相手。  姓を朴とも青山ともいう女、愛は大阪鶴橋の古びた民家に母、叔母、二人の妹という女ばかり

【自作を語る】この世の記録/あの世と企画 『アリ地獄天国』text 土屋トカチ(本作監督)

11年ぶりの新作長編『アリ地獄天国』が、この秋に都内で劇場公開される。これまで名古屋、大阪、横浜で公開されてきたが、コロナ禍による影響もあり大幅に遅れていた。 本作は、理不尽な労働環境に置かれた30代の正社員が個人加盟の