【Review】人類の苦しみと困難の象徴としての「壁」『MERU/メルー』text 佐伯良介

インド北部のヒマラヤ山脈メルー中央峰。標高は約6500メートル。その最上部には450メートルもの花コウ岩の壁がそびえ立つ。その岩壁の通称は、シャークスフィン。1980年代頃からあらゆるクライマーがメルー中央峰に挑むも、シ

【連載】 ポルトガル・食と映画の旅  第2回「アレンテージョの春」text 福間恵子

ヴィディゲイラの「パンとお菓子の祭り」のメイン会場のブースのひとつ。どれもこれもアレンテージョの伝統菓子で、作った本人やその家族が売っている。ポルトガル、食と映画の旅第2回 アレンテージョの春2006年3月、ポルトガル5

【連載】ドキュメンタリストの眼⑮『kapiwとapappo アイヌの姉妹の物語』出演者インタビュー text 金子遊

         姉の絵美さん(左)と妹の富貴子さん(右)本作は、北海道阿寒湖にあるアイヌコタンに生まれた姉妹が、伝統音楽を披露するユニットを組み、ライブを成功させるまでを追ったドキュメンタリー映画である。姉の絵美は、故

【Review】伝説は、バードランドで創られる。~フィクションゆえに迫れた1人のジャズメンの本質~『ブルーに生まれついて』 text 藤澤貞彦

 「ボーン・トゥ・ビー・ブルー」 ウエスト・コースト・ジャズのトランペッター、チェット・ベイカーの代表曲のひとつであり、彼の人生そのものが、タイトルとなったこの作品は、その中でも彼が一番苦しんだ時代、1966年の出来事に

【Review】──私の知らないどこかで──『あたらしい野生の地 リワイルディング』 text藤野 みさき

「この世の中にあるものは何かの役に立つんだ。何の役に立つのか、それは僕にはわからない。でも、例えばこの小石だって、何かの役に立っている。この夜空に輝く星々だってそうなんだ。君もそうさ」──映画『道』より  デジタル文化の

【Review】戦場の真実を撮る/録ることの(不)可能性―トビアス・リンホルム監督『ある戦争』text 安里和哲

© 2015 NORDISK FILM PRODUCTION A/S かつての西部劇を思わせるようなアフガニスタンの荒野をパトロールしている兵士たちが、突然の爆音に見舞われる。兵士のひとりが地雷を踏んだのだ。彼は両足を吹

【新連載】ポルトガル、食と映画の旅  第1回『トラス・オス・モンテス』 text 福間恵子

ミランダ・ド・ドウロの町からスペイン側を見る。川は、映画監督オリヴェイラの愛したドウロ川本流の上流の一部。スペインとの国境になっている。スペインに入ると、ドウロ川はドゥエロ川となり、こちらでもまた美味しいワインの土壌をつ

【Review】辺境からのささやかな贈り物『神聖なる一族24人の娘たち』 text 小林耕二

現代ロシアを代表する新鋭作家であるデニス・オソーキンの原案・脚本を同じくロシア映画界を代表する新進気鋭監督アレクセイ・フェドルチェンコが映画化した『神聖なる一族24人の娘たち』は、マリ人の信仰、習俗、慣習を豊かな自然を背

【Review】「物語る瞬間」-奥間勝也監督『ギフト』&『ラダック それぞれの物語』text 長谷部友子

『ラダック それぞれの物語』 すっと吸う息。 語りはじめようと、吸いこむ息の音が聞こえる。 物語ろうとしはじめた者から、どうして人は目をそらせないのだろう。 ケサル物語。勇胆の王ケサルと彼が治めたという伝説の国家リン王国

【Review】ドキュメンタリー作家・羽田澄子の世界 text 山石幸雄

羽田澄子監督(撮影:金子遊)東京・京橋のフィルムセンター小ホールで2016年8月9日から28日まで「ドキュメンタリー作家 羽田澄子」が行われた。 羽田澄子監督の『薄墨の桜』以降の自由工房の作品はよく上映されるが、今回はデ

【Interview】ひとりの声に耳を澄ませた、その先に見えたもの―『人間爆弾「桜花」 特攻を命じた兵士の遺言』澤田正道監督インタビュー text 若林良

(C)Comme des Cinemasシアター・イメージフォーラムにて、「特攻」を題材にした一本の映画が公開されている。フランスを拠点として、長年数多くの映画のプロデュースに携わってきた澤田正道監督の満を持してのデビュ

【Review】「在日」問題を照射する近代野球という鏡―『海峡を越えた野球少年』 text 大内啓輔

先日までのリオデジャネイロ・オリンピックに関して、連日、日本人選手のメダル獲得が報じられるなか、日本の獲得したメダルの数が過去最高となったということが、否がおうにも耳に飛び込んできたはずだ。これらの過熱化する報道の仕方を

【連載】ドキュメンタリストの眼⑭  ベン・ラッセル監督インタビュー text 金子遊

ベン・ラッセルは1976年生まれのアメリカの映像作家である。ファウンド・フッテージやインスタレーションなどの実験的な映像の作風から、近年は16ミリフィルムで撮影した民族誌的なアプローチのドキュメンタリー作品まで発表してい

【Review】私たちの“セルフ”ドキュメンタリー 岡本まな監督『ディスタンス』text 高橋雄太

およそ800km。私が暮らしている東京と、故郷である札幌近郊との距離である。私の家族は実家に暮らす両親と祖母、実家を出ている兄だ。いきなり筆者自身の話から本稿を始めた理由は二つある。一つは、映画『ディスタンス』と私とは背

【Review】素顔のままで(遠藤ミチロウ監督『お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました』論) text 鈴木並木

記憶違いだったらスミマセン、とまず最初に謝ってから始めますけど、たしか『オートバイ少女』の公開の際だったか、あがた森魚監督が(もちろん)やや自嘲気味に「異業種監督の中でもミュージシャンはロクな作品を撮らないと言われており

【Review】人が山を下りることの、至上の幸福『ヒマラヤ~地上8,000メートルの絆~』 text 荒井南

大手企業や在韓アメリカ大使館、地方警察庁が立ち並ぶ、ソウルの目抜き通り光化門広場からすぐそこに、標高836メートルの北漢山が見える。韓国は国土の70パーセントが山岳地帯と、その割合は日本とさほど変わらないのだが、こうした

【連載】開拓者(フロンティア)たちの肖像〜中野理惠 すきな映画を仕事にして 〜 第32話,第33話 text 中野理惠

2歳のときの筆者(左、1952年11月) 開拓者(フロンティア)たちの肖像中野理惠 すきな映画を仕事にして  <前回 第30,31話はこちら> 第32話 1999年の仕事①「だっせえ」と言われたタイトル  「だっせえ」に

【Interview】 土に生きる夫婦の「日々」を積み重ねて 『ふたりの桃源郷』佐々木聰監督インタビュー

現在ポレポレ東中野で公開中の『ふたりの桃源郷』は、山口県岩国市美和町の山奥で自給自足的な生活を送る老夫婦・田中寅夫さん、フサコさんと、その家族の姿を足掛け25年に渡り追い続けたドキュメンタリーだ。老いてなお山で暮らし続け

【Review】歴史受け止め、アイデンティティ取り戻す営為『シアター・プノンペン』text 小林蓮実

©2014 HANUMAN CO. LTD/パンドラ配給 それぞれの人生から見つめる、歴史や社会の「真実」 映画に限らず、社会派の作品では、主張のみを強調するものも少なくないかもしれない。だが実際、そこに生きるのは1人ひ

【Review】「幾千もの視線が紡ぐ」 オサーマ・モハンメド監督『シリア・モナムール』 text 井河澤智子

© 2014 – LES FILMS D’ICI – PROACTION FILM あなたが望むなら故郷も捨てる— 故郷を捨てたのだろうか。彼、オサーマは異国に留まり、遠い地、故郷シリ