【Review】ZAPPAが教えてくれたこと――『ZAPPA』 text 澤山恵次

 ロック界の鬼才と呼ばれ、独特な風貌から繰り出されるギタープレイに特徴があり、現代音楽の作曲家でもあったフランク・ザッパ。彼の作品を最初に聴いたのは、私が大学生の時になる。京都のライブハウス拾得でバンドの演奏をした際に、

【Review】スパークスのさらなる飛躍に期待を込めて――『スパークス・ブラザーズ』 text 澤山恵次

エドガー・ライトによって巧みに構成された、ロック&ポップ・バンド「スパークス」のクロニクル――ロン・メイルとラッセル・メイルの兄弟の50年を追った『スパークス・ブラザーズ』は、今後の彼らの活躍のプロローグに過ぎなかった。

【Review】封印されていた音楽フェスを知って――『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』 text 澤山恵次

本作に収録された、ハーレム・カルチュラル・フェスティヴァルが開催されたのは1969年。当時は固定カメラによる撮影が基本だろうから、見たいミュージシャンの演奏の瞬間を捉えたショットなど最初から期待はせずに観たが、監督である

【Review】デイヴィッド・バーンが向き合う人間ーー『アメリカン・ユートピア』 text 江頭シュンタロウ

 人間だけの舞台に、それを観る観客の人間たち。デイヴィッド・バーン、11人のバンドメンバー、観客。そして、それぞれの間にある空気を満たす音楽。舞台上には、マイクやドラム、配線すらもないのだ。ふと気が付けば、その空間に流れ

【Review】ブラザーフッドの騎士たち――『ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった』 text 日方裕司

   ザ・バンドのドキュメンタリー映画『ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった』が日本で公開される。  60年代にルーツ・ミュージックの融合という全く新しい「アメリカン・ルーツ・ロック」を生み出し、静かな革命を起こしたザ・バ

【Review】のこされた歌、うたわれる今――『タゴール・ソングス』 text 菊井崇史

 レコード盤に針が落とされ、歌が聴こえはじめる。そして、流れる旋律にのった歌声の詞が「もし 君の呼び声に誰も答えなくてもひとりで進め」との意をもつことともに、その曲が「ベンガル分割反対運動時の一九〇五年のタゴール・ソング

【Review】音楽が「差別」と闘うとき――映画『白い暴動』 text 日方裕司

   映画『白い暴動』の冒頭で、ステージに上がる前の緊迫感と血気盛んなオーディエンスの姿に多くのパンクスが心躍るかもしれない。しかしこのタイトルから推測されるような、日本でもお馴染みのパンクバンド、ザ・クラッシュのドキュ

【column】現代日本最高の詩人吉増剛造がNYへ 米国前衛映画界の父・詩人の故ジョナス・メカスを悼む 映画『眩暈(めまい) Vertigo』について text 井上春生

2018年2月、ある仕事で訪れていたドイツから羽田に帰国し、そのまま成田に移動してニューヨークに向かった。詩人の吉増剛造さんを1年かけて撮った前作「幻を見るひと」がニューヨークシティインディペンデント国際映画祭に招待され

【Review】『映像の新境地を求めてー第11回 恵比寿映像祭「トランスポジション 変わる術」から』 text 吉田悠樹彦

Hardcore Ambience企画「Another World」:大野松雄《タージ・マハル旅行団「旅」について》+スペシャルライヴより 提供:東京都写真美術館 撮影:新井孝明 変わる術としての映像文化 映像はバタイユ

【Review/Interview】 幻を見る瞳にうつされるもの〜 井上春生監督にきく映画『幻を見るひと』 text 菊井崇史

「京都に龍を探しにいきませんか」という導きを端緒として、京都におもむいた詩人吉増剛造の営為に迫る映画『幻を見るひと』の旅ははじまった、本作のエグゼクティブプロデューサーである詩人城戸朱理はそう語っている。ここでの「龍」と

【Interview】歌は、歌い続けることで守られる 『あまねき旋律(しらべ)』アヌシュカ・ミーナークシ&イーシュワル・シュリクマール監督インタビュー text 若木康輔

インドのドキュメンタリー映画『あまねき旋律(しらべ)』が、封切られると同時に高い評価を受け、順調にロードショー中だ。 昨年開催された山形国際ドキュメンタリー映画祭で〈アジア千波万波〉部門奨励賞と日本映画監督協会賞を受賞し

【Interview】『Ryuichi Sakamoto: CODA』スティーブン・ノムラ・シブル監督に聞く text イトウモ

ー作品を楽しく拝見しました。今回、坂本龍一さんの話してらっしゃることをかなり中心に撮るように作られている印象を受けました。坂本さんに親しい方や、近い方以上に本人へのインタビューにこだわった理由があれば、教えてください。確

【Review】新しいうたよ眼ざめよ 映画『SHIDAMYOJIN』(遠藤ミチロウ、小沢和史監督)text 鈴木並木

20代の頃。どの本に載っていた言葉だとか、正確な文言だとかは記憶していないのだけど、大江健三郎の小説に出てきた、「どんなに偉くなったからといって、誰か自分の身代わりになって死んでくれるひとがいるだなんて思い上がってはいけ

【Review】アンヴィル的瞬間―アンティ・ハーセ監督『ローディ! 地獄からの脱出』Text 後藤護

『ローディ! 地獄からの脱出』より フロントマンのMr.ローディ(本名トミ)。KISSのメイクにゴジラを融合したような風貌。北欧の清冽な空気をもたらすような透明感ある「トーキョー・ノーザンライツ・フェスティヴァル2017

【Review】素顔のままで(遠藤ミチロウ監督『お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました』論) text 鈴木並木

記憶違いだったらスミマセン、とまず最初に謝ってから始めますけど、たしか『オートバイ少女』の公開の際だったか、あがた森魚監督が(もちろん)やや自嘲気味に「異業種監督の中でもミュージシャンはロクな作品を撮らないと言われており

【Review】「無音」と「叫び」の境を生きる 原村政樹監督『無音の叫び声』 text 菊井崇史

木村迪夫氏 田植えの間の休息 ©『無音の叫び声』製作委員会 「戦後、痛切なことばかり多かった時間を経て、思想というもの、それを生かしめる生命力を、もはや虚像ではなく自分のものにする以外、生きる方法がなくなったとき、生活の

【Report/Review】映画における空間の拡張性について~七里圭監督作品『ドキュメント・音から作る映画』 text 小川学

映画が時間の連続であるならば、七里圭監督作品が上映される空間は、映画を制作する上で一つの構成要素であり、また、その場で鑑賞している者も映画作品に含まれてしまう一つの要素となっている。映画に関連する全てが内包された空間その

【連載】ワカキコースケのDIG!聴くメンタリー 第11回『おとうさんの童謡 ~サトウハチローとメルヘンの世界~』

 サトウハチローは、20世紀の超ヒット・メーカー 廃盤アナログレコードの「その他」ジャンルからドキュメンタリーを掘り起こす、「DIG!聴くメンタリー」。今回も、よろしくお付き合いください。さて、どなたにも、こんな存在がお

【Interview】映画だからこそ、「物語」を伝えられる―『皆殺しのバラッド』シャウル・シュワルツ監督インタビュー text若林良

シアター・イメージフォーラムほかで現在公開中の『皆殺しのバラッド』は、メキシコの「麻薬戦争」を扱ったドキュメンタリー作品だ。2006年12月、メキシコ政府が麻薬産業の撲滅のため、密売人たちに宣戦布告をおこなったところから

【連載】ワカキコースケのDIG!聴くメンタリー 第5回『決定盤!! 長編現地録音 阿波おどり』

「聴くメンタリー」には珍しく! ジャケ買いしました 廃盤アナログレコードの「その他」ジャンルからドキュメンタリーを掘り起こす、「DIG!聴くメンタリー」の時間がやってまいりました。DJはワカキコースケ。それなりにマジメに

【新連載】ワカキコースケのDIG! 聴くメンタリー 第1回「ダーリンと和枝」(「平凡」1962年12月号第2付録)

|ちょっと長い前説―レコードがアナログだったころの記憶子どもの頃、家に変なLPがあった。音楽じゃないレコードだ。 たしか、≪激動の日中国交ドキュメント≫のようなタイトルで、ジャケットは、いかめしい顔の老人ふたりが握手して

【Review】矛盾の中心でエロを叫ぶ 『プリンス/サイン・オブ・ザ・タイムズ』text 越後谷研

●魔法  プリンスはデカい! というのは、大きな間違いだ! 知ってるひとは多いかもしれないけど、プリンスの身長は160センチに満たない。一説には157センチ。爆笑問題の田中が154センチだそうだから…。え? 小っちゃ…。