【リレー連載】列島通信★名古屋発/「あいちトリエンナーレ2013」映像プログラムから、「第18回アートフィルム・フェスティバル」へ text 越後谷卓司

 

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今年、愛知県では、8月10日(土)から10月27日(日)まで、2010年に続き2回目となる「あいちトリエンナーレ2013」を開催した。五十嵐太郎芸術監督が提示した、テーマ「揺れる大地-われわれはどこに立っているのか:場所、記憶、そして復活」のもと、現代美術の展示やパフォーミング・アーツの公演とともに、上映会である「映像プログラム」(9月25日(水)-10月17日(木)、於:当センター12階アートスペースA)も開催した。 

「揺れる大地」とは、第一義的には2011年の東日本大震災を指し、それ以降のアートがいかにあるべきか、といった問い掛けを含んでいる。震災との関連では、映像分野は、その直後よりこの問題に取り組んだドキュメンタリーはもちろん、劇映画やアニメーションでも少なからぬ作品を生み出してきた。 

そのため、およそ三週間の会期を、震災関連の作品のみでプログラミングすることも可能ではあったが、五十嵐監督のテーマには“場所”“記憶”“復活”という言葉が含まれていたことから、久保田成子が、夫であるビデオ・アーティストのナム・ジュン・パイクがリハビリを行う様子を捉えた『セクシャル・ヒーリング』(1998年)や、エマ・ドゥ・スワーフ+マーク・ジェイムス・ロエルズの人形アニメーション『オー、ウィリー』(2012年)など、復活を想起させる作品を、意識的に取り上げようとした。 

「映像プログラム」の中で、最も直接的に3.11と向き合った作品は、濱口竜介+酒井耕の『なみのおと』(2011年)であった。この作品は、被災者に対話形式で当時の状況を語ってもらい、それを観ることを通して、観客の“聴く”体験が促される、という構造が画期的だった。 

また、土本典昭の実験的なドキュメンタリー『原発切抜帖』(1982年)の上映も行った。この作品は、制作当時、原発への直接の取材が拒否されてしまったため、原発や原子力関連の新聞記事を構成して作り上げたものだが、一般に向けた報道を丹念に読み込んでゆくことで、今日、語られている原発のリスクや問題点などをほぼ明らかにしており、驚くべきものがあった。トリエンナーレは現代アートの祭典なので、物故者の、しかも旧作が取り上げられるというケースは例外といえるが、今日、改めて観るべき作品として、生き生きした現代性を有していたといえるだろう。

引き続き11月30日(土)より開催される「アートフィルム・フェスティバル」は、実験映画やビデオ・アート、ドキュメンタリー、劇映画など、既存のジャンル区分を越えて、映像表現の先端的な動向を照らし出すことを主旨としているが、18回目となる今回は、トリエンナーレ直後というタイミングを考慮して、濱口+酒井が『なみのおと』に引き続き撮った、『なみのこえ 気仙沼』『なみのこえ 新地町』『うたうひと』(いずれも、2012年)の三本を一挙上映することとした。

また、当センターが“身体”をテーマに毎年一本、自主制作を行っている「愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品」の、シリーズ最新第22弾となる舩橋淳『放射能』(2013年)のプレミエ上映も予定している。舩橋は、東日本大震災とそれに伴う原発事故で、全町民避難を余儀なくされた、福島県双葉町の住民を長期に渡り記録した『フタバから遠く離れて』(2012年)が話題になったが、本作では、目に見えない放射能とその身体への影響という、「オリジナル映像作品」のテーマともオーバーラップする形で、新作を制作していただいた。本フェスティバルでは、『フタバ…』の他、被災地を物語の背景として導入した劇映画『桜並木の満開の下で』(2012年)も上映するので、フィクションとドキュメンタリーの領域に渡って活躍する舩橋の仕事を、トータルに観る良い機会になるだろう。 

その他にも、これまで当センターにはモノクロ版しかなかった、舞踏家・大野一雄の代表作『ラ・アルヘンチーナ頌』初演(1977年)の記録映像を、今年、新たにカラー版で収蔵することになったのを受けて行う、「大野一雄ビデオ・ライブラリー」のセレクション上映や、ナム・ジュン・パイクとヴォルフ・フォステルが、ビデオ・アートを創始してから、今年、50年を迎えることを記念したプログラムなど、多彩な内容になっているので、ぜひ多くの方々にご覧いただきたい。 

※なお、11月30日(土)19:50上映の、ピエール・カスト『ル・コルビュジエ、幸福の建築家』(1957年)は、ピエール・シュナル『今日の建築』(1930年、11分)に変更になりました。ル・コルビュジエ財団提供による、サイレント映画時代末期の、建築をテーマとしたドキュメンタリーで、こちらも貴重な上映となります。この場を借りて、おわび申し上げます。

放射能_1舩橋淳『放射能』(2013年、愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品第22弾)

第18回 アートフィルム・フェスティバル
会 期:2013年11月30日(土)~12月15日(日) ※12/2(月)、9(月)は休館
会 場: 愛知芸術文化センター12階 アートスペースA
料 金: 入場無料

プログラム内容

特集1 『ラ・アルヘンチーナ頌』初演(カラー版)初上映&
    「大野一雄ビデオ・ライブラリー」セレクション
特集2 ビデオ・アート生誕50年:その過去と現在
特集3 濱口竜介+酒井耕、東北を記録する

公式サイト http://www.aac.pref.aichi.jp/bunjyo/jishyu/2013/13aff/

【執筆者プロフィール】

越後谷 卓司(えちごや・たかし) 
1964年東京生まれ。愛知県文化情報センター主任学芸員。「あいちトリエンナーレ2013」終了後も、「第35回ぴあフィルムフェスティバル in 名古屋」をはさみ、11月30日(土)から「第18回アートフィルム・フェスティバル」がスタートというスケジュールで、慌ただしくしています。