【Review】生きとし生ける生命と地球への贈り物―ヴィム・ヴェンダース&ジュリアーノ・リベイロ・サルガド監督『セバスチャン・サルガド/地球へのラブレター』 text 成宮秋仁

本作は、写真家(フォトグラファー)の人生の記録映画である。では、写真家とはいったい何であろうか。映画の冒頭、スクリーンから語りかけてくる声が、その言葉の意味を私たちに教える。ギリシャ語で、フォトは「光」を、グラフィンは「

【Review】「生きる」こと、「戦う」こと-土井邦敏監督『“記憶”と生きる』text 成宮秋仁

第一部       分かち合いの家 1994年12月、韓国。 ナヌム(分かち合い)の家から、6人の年老いた女性たちが出てきて、坂を下り、バスに乗る。辿り着いた先は、日本大使館前。彼女たちは「水曜デモ(日本軍『慰安婦』問題

【Review】建築の歴史を通じた魂の対話―石山友美『誰も知らない建築のはなし』 text 成宮秋仁

映画の始まりは、安藤忠雄のインタビューからだった。安藤は、独学で建築を学び、二度にわたる世界放浪を経て建築における独自の哲学を築いた人物だ。建築家になるための一般的なルートから完全に逸脱して、建築家として名を成したため、

【Review】無力さについて――坂口香津美監督『抱擁』 text 成宮秋仁

  唐突に始まる映像。団地の小さな部屋の中で、布団の上で、うずくまり、ひたすら苦しみの声を上げる年老いた女性の様子を、たんたんとカメラは捉える。カメラを撮る人物は、その女性の息子。坂口香津美監督である。カメラに