【News】第6回シューレ大学国際映画祭「生きたいように生きる」

シューレ大学国際映画祭「生きたいように生きる」は、今年で6年目を迎える。シューレ大学は学生が自ら運営するNPOの大学で(http://shureuniv.org/)、日常的には各種講座やプロジェクトが行われ、「自分から始まる研究」、演劇公演、美術制作など多岐にわたって学び、表現してきた場である。

シューレ大学が2008年から毎夏、国際映画祭を開催するきっかけは、原一男監督との出会いだった。私たちがこの映画祭に「生きたいように生きる」というタイトルをつけたのは、映像をつくり、表現をしていく中で、この生き難い世の中に穴を穿ちたいという切実な思いからだった。そしてそのような思いを表現に結び付けている人々と新たに出会い、繋がり、共にそれぞれが世界を(自分自身を)「生きたいように」変えていくということを5年間映画祭を続ける中で、私たちなりにこの確信を積み重ねてきたと思う。そして、そこに素敵な出会いがたくさんあった。

この映画祭は、ジャンルやスタイル、作り手の国籍、プロかアマチュアなのかは問わず、「生きたいように生きる」という趣旨に合うと感じられる作品を上映する映画祭として始めた。

一般公募部門は、原一男監督に第1回目から特別選考委員として継続的に選考に関わって頂いている。まだ6年目とはいえ、これまでに上映された作品の中には、他の国内外の映画コンクールでの受賞や高評価を得ているものも多い。毎年、最終上映では、公募作品部門で選考された作品を中心に上映し、最後に原監督による講評がある。この回は毎年満員御礼で、私たちもついつい手に汗にぎりながら、まるで自分のことのようにはらはらしながら見ている。作り手にとってはもちろん、観る側にとっても学ぶことが多く、今年はどんなコメントが聞けるのか、本当に楽しみだ。

津野敬子さん

DCTV共同代表・津野敬子さん

今年の目玉の一つは、ニューヨークからDCTV(ダウンタウンコミュニティTV)の共同代表・津野敬子さんをお招きしていることだ。津野さんは、夫ジョン・アルパートさんと共に1972年、ビデオ制作と市民活動を行うDCTVを立ち上げ、既存のメディアが取り上げない題材で優れたドキュメンタリーを数多く手掛けてこられた。自らも映像作家でありながら、1994年に始まったプログラム「Pro TV」など、近年は青少年やマイノリティなど市民向け映像制作研修に力を入れている。今回は、津野さんに3日間お付き合いいただき、複数のトークプログラムを予定しており、DCTVのPro TVから生まれたドキュメンタリー『Bullets in the Hood』、『The Skin I’m In』も上映する。

そんな津野さんと原一男監督(1990年代から交流されているお二人でもある)という、共にドキュメンタリーの分野で精力的に活躍し、また多くの次世代の作り手を育ててきた、お二人のトークプログラム「これから映画を創る/観る人たちへ」は、実に貴重な機会と言えよう。

『命ってなんぼなん 泉南アスベスト禍を闘う』原一男

さらに、ついに今年は原監督待望の新作「命てなんぼなん? 泉南アスベスト禍を闘う」を上映する。これは2007年から6年以上にわたる大阪・泉南アスベスト裁判の経過の記録と、被害者たちの日常に踏み込んで描いているドキュメンタリーで、既にアスベスト裁判などの集会の場では発表されている作品だが、監督は長尺版も準備しているとのこと。今回は、監督いわく「運動の場で上映できる長さ」である67分のバージョンを、ディレクターズカット版に先駆けて上映する。

また、今年は不登校経験の当事者である子ども・若者が手掛けた作品も上映する。この「不登校なう ~居場所を求める私たち~」というフィクションは、まさに不登校を、彼らが自分たちの経験や考え、思いを形に表したものだ。学校の在り方が合わない子、いじめをきっかけとした不登校の子、理由がはっきりしないが学校に行かなくなる子、という3つの不登校を描いている。上映後には、この作品を手掛けた若者と津野敬子さんのトークも予定しており、日本社会において不登校経験というある種のマイノリティ性を持つ若者と、ニューヨークでマージナルな状況に置かれる若者たちと長年共に映像を制作してきた津野さんが、大いに語る。

シューレ大学の学生作品も、2作品上映する。新作の「三角形はつむじ風(仮)」は、ドラマツルギーを最も効果的に表現しようと模索したフィクションの意欲作だ。もう一作は、昨年12月30日に逝去されたベアテ・シロタ・ゴードンさん(当時GHQ民生委員として日本国憲法の草案を書いたことで知られる平和活動家・アートディレクター)の追悼企画で、彼女の生涯を描くドキュメンタリー「ベアテ・ゴードン ~憲法草案を起草したアートディレクター~」を上映する。これは、2011年1月にベアテさんのニューヨークの自宅で収録された8時間に渡るインタビューを元に構成し、彼女の遺言ともいうべき作品となった。平和憲法の行く末が危ぶまれる今、ぜひ多くの方と共有したい。

『夜から来た人たち』薩摩浩子監督

『夜から来た人たち』薩摩浩子監督

公募作品の部門では「おくりもの」(佐藤好子監督)、「わたしたちは忘れない ~福島避難区域の教師たち~」(湯本雅典監督)、「いたいのいたいのとんでいけ」(朴美和監督)、「夜から来た人たち」(薩摩浩子監督)の4作品が選考され、ドキュメンタリー、フィクション、アニメーションまで幅広いラインナップとなった。

参加されるみなさんには、作品そのものを味わうだけでなく、ぜひ、各監督のトークセッションも合わせて聞いて頂ければと思う。今年も作り手と観客、作り手同士など、国も世代も超えた素晴らしい出会いと繋がりの機会となるだろうと私たちは確信している。どうぞ、シューレ大学国際映画祭「生きたいように生きる」においで下さい。 

             シューレ大学国際映画祭実行委員 石本恵美・山本菜々子

 第6回シューレ大学国際映画祭「生きたいように生きる」
【日時】2013年8月23日(金)~25日(日)
【場所】シューレ大学特設映画館(都営大江戸線若松河田駅下車・徒歩4分)
【料金】前売/一回券1000円/フリーパス3000円
    当日/一回券1200円/フリーパス3500円

各回終了後、トークセッションあり(8/25(日)13:00の回を除く)
※8/24(土)19:00~ 津野敬子氏×原一男監督 対談「これから映画を創る/観る人たちへ」
※8/25(日)14:20〜 原一男監督 講演/19:20〜 交流会(参加費別途500円)

シューレ大学国際映画祭HP
URL:http://shureuniv.org/filmfes/
TEL:03-5155-9801(シューレ大学)

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