ディレクターより 松倉大夏
ずっと、両親について描きたいと考えてきました。
離婚した両親は現代美術の作家で、僕は物心ついた時から、不思議な生活環境、一風変った人々に囲まれ暮らしていたと思います。
僕は長く劇映画の助監督をやっていたので、フィクションで描こうと企てていましたが、まさか、NHKのテレビドキュメンタリーで撮ることになろうとは!?
プライベートな離婚の問題を、テレビで晒すのは、自身として抵抗はありましたが、両親は好き勝手に芸術をやって来たからなのか、僕が家族を売り物にして作品をつくるのに、意外と協力的でした。
あとは、なんと言っても、妻の存在が大きかった。僕が幼い頃の記憶をたどる行程に付き合ってくれましたし、彼女の言動から気づかされることが多かったです。
なので、主演は妻のヒロちゃんと宣言しています。
ずっと、撮りながら考えていたとこがあります。
セルフドキュメンタリーだからといって、破壊的なものや、重々しいものにはしたくない。
そもそも、僕の家族の話なんて、そんなに深刻な事ではないかもしれませんが、当の本人には、大問題だったのです。
だからこそ、ウッディアレンみたいに笑い飛ばせるといいなと。
どう映っているんでしょうか、ぜひ、ご覧ください。
【今回の放送】
『極私的ドキュメント にっぽんリアル』 #3『僕が子作りできない訳』
ナビゲーター:安藤サクラ
【放送日時】
2013年6月15日(日)23:00〜23:30 NHK BSプレミアム
僕らは30代後半の夫婦。妻からはそろそろ子どもが欲しいとせがまれている。しかし僕には、どうしても引っかかっている子どもの頃の記憶があった。僕の両親は、僕が10歳の時に離婚。母に引き取られた僕の目の前には新しい“父”が現れた。継父と母と僕との関係にまつわるある事件。さらに、実父と母と僕の間に起きたもう一つの事件。その二つの事件の真相を確かめるため両親と継父に会いにいくと、次第に驚きの事実が明らかになる。
【番組公式サイト】
http://www4.nhk.or.jp/P3168/(予告動画あり)
★「極私的ドキュメント にっぽんリアル」とは?
毎回1人の制作者=ディレクターが、自分の家族や友人といった極めて私的な関係を、自分自身も題材にして撮る、いわゆるセルフ・ドキュメンタリーの番組シリーズである。極私的な世界の中に「リアルな日本の今」が見えてくる。
セルフ・ドキュメントといっても、取り上げる題材は毎回さまざま。たとえば、未婚の30代女性ディレクターが撮る「自分と婚活仲間のリアル」、親の介護を抱える中年ディレクターが挑む「介護家族のリアル」…などなど。
ポイントとなるのは、取材者自身と取材相手との信頼関係。日常的に接している友人や肉親だからこその、「通常撮れるはずのない生々しい瞬間」。しかし、一方でカメラを向けることで初めて表に出てくる胸の内や、これまで「知っているようで知らなかった事実」。その内容は、時に事前に想定していたものと大きく異なる。取材する本人も、ある時は驚き、ある時は深く感動し、心を揺さぶられながらテーマを深めていく。
番組では一個人の人間関係を突き詰めた中から、どんな“リアル”が見えてくるのか。「感動」、「驚き」、時に「笑い」とともにお届けする。