【Review】AVを利用しつつ映画やTVを超える広い世界 ~『劇場版テレクラキャノンボール2013』~ text 佐藤健人

「ヤルかヤラナイかの人生なら、俺はヤル人生を選ぶ」
話題沸騰のセックスバトルドキュメント 熱烈ファンが押す太鼓判!

 

「テレクラキャノンボール」とは

2月に6日間だけ劇場公開された『劇場版テレクラキャノンボール2013』。連日、満員の場内は爆笑の渦だったそうです。自分が観に行った時も、盛り上がりは凄まじく、拍手に笑い、悲鳴やどよめきなどで溢れ返っていました。
好評だった『劇場版テレクラキャノンボール2013』は3月に再上映され、大阪・名古屋・広島などの地方でも上映。そして、6月22日からはポレポレ東中野で上映されます。2月に巻き起こったテレクラキャノンボール旋風はまだまだ続きます。

「テレクラキャノンボール」とは、男たちが数日間かけて、バイクや車でレースをしながら移動し、現地の女の子をゲットしてセックスし、そのスピードとプレイ内容でポイントを競い合うという、トライアスロンの様なアダルトビデオの企画です。
アダルトビデオでありながら、女の子やセックスシーンよりも男たちのエロと笑いに満ちた熾烈なレース展開をメインに描いたこの作品は、97年に第1回が行われ、『テレクラキャノンボール2013』は5回目の大会です。

今回の『テレクラキャノンボール2013』もアダルトビデオとして制作されたのですが、あまりにも面白いということで劇場公開に至った訳です。
ちなみに、AV版はなんと10時間もあり、劇場版はその内の熱戦烈戦超激戦な後半のステージを中心に構成されています。

過去シリーズも全て見ていた僕にとって『テレクラキャノンボール2013』は公開・発売前から期待と不安が両A面でした。
前作『テレクラキャノンボール2009』があまりの傑作だったので、果たしてあれを越える事が出来るのだろうか? という不安です。

前作「テレクラキャノンボール2009」

AV夏の風物詩として97年から3年間続いた「テレクラキャノンボール」が、9年間の沈黙の後、格段にスケールアップして行われたのが前作『テレクラキャノンボール2009』でした。

当然、9年の間にAV界隈を取り巻く状況は変わっており、テレクラが廃れゆく反面、出会い系サイトや出会い喫茶など、出演してくれる女の子を探す手段は多様化。パッケージもVHSからDVDになり、収録時間も大幅に増加。過去3大会全てに参加していた花岡じったは家庭の事情により不参加となり、男優を引退していたいちはらカズは、世間体を考慮してか覆面での参加。

無免許の為、常に誰かに同乗しなければならないビーバップみのるはボンビー神的な存在となってレースを掻き乱してくれました。
カンパニー松尾と感度良好な50代(なぜか感じると、最近の若い歌い手さんの様に手を上げ下げする女)とのセックスや、勝つ為になら手段を選ばないバクシーシ山下の無理矢理すぎる行動に爆笑し、「ネバーギブアップ精神」がモットーだったはずのいちはらカズが最後に諦めて一人で帰るその背中に哀しさを覚え、各々の映像を見せ合いながら盛り上がる審査会には男子高校生の修学旅行の夜を彷彿とさせられる……。一見くだらなく思えるレースに尋常じゃない情熱を注ぐ彼らの姿は、青春そのものでした。
ビデオTheワールド2008年下半期のアダルトビデオベスト10では、藤木TDCを除く全ての選者から支持を受けて、圧倒的大差でベスト1位に輝いています。

だからこそ、あれから5年後『テレクラキャノンボール2013』が出ると聞いた僕は、期待するだけではいられなかったのです。しかし、それは全くの杞憂に終わりました。最初から最後まで興奮の連続で、期待を遥かに凌駕する、誰が見てもシリーズ最高の傑作でした。