私たちはいま、美の中枢にいる――
英国が誇る「名画の宝庫」ナショナル・ギャラリー。所蔵作品は2,300点余りと決して多くはない。建物や設備もパリのルーヴルやニューヨークのメトロポリタンに比べれば、明らかに小規模だが、ナショナル・ギャラリーが紹介される時には、必ずと言っていいほど「英国の至宝」「世界最高峰」「驚異のコレクション」などの栄えある枕詞が惜しみなく散りばめられる。
本作品は、ワイズマンが30年もの間、いつか撮影したいと切望し続けたこの場所、ナショナル・ギャラリー全館に初めて3カ月間潜入し、ダヴィンチ、ミケランジェロ、レンブラント、ホルバイン、ターナー、ゴッホ、モネなど、巨匠たちが描いた数多くの西洋美術の傑作や、英国ロイヤルバレエ団のダンサーと絵画の幻想的なコラボレーション、個性豊かな専門家たちによるギャラリートーク、名画に魂を吹き込む修復師たちの職人芸、そして変化する時代をロンドン市民と共に歩む美術館としての在り方など、すべてをありのままにカメラに収めた。
190年もの長い間、人々に愛され進化をつづける美術館の秘密と、ユーモア溢れた人々とアートの痛快な関わりを見つめた、発見と驚きに満ちた美術館の舞台裏ドキュメンタリー作品である。
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|フレデリック・ワイズマン コメント
――8月29日 ヴェネチア国際映画祭 受賞式記者会見より
ヴェネチア国際映画祭で栄誉金獅子賞を受賞出来たこと、また、ドキュメンタリー映画が劇映画と同じ舞台で同列に評価された事を誇らしく思います。
ドキュメンタリー映画が劇映画、小説、まはた、演劇と比べ面白さや劇的さで劣る訳はないと思っています。私は常にドラマ性のある劇的な構造となっている映画を作ろうとしてきました。私は被写体を常にフィクションだと思って観察しています。私にとっての被写体は文芸小説と言っても良いでしょう。劇映画以上にフィクショナルなのです。そのような視点で私は100時間以上に及ぶラッシュ素材から1本のドキュメンタリーを構成します。
私は自分が好きなポエム、小説、または演劇を紐解くような解釈方法で映像編集をします。短絡的な教訓や説教的な物事の説明は好みません。私は、映画に多くの情報を詰め込みますが、物事を説明したり、映画を通じて世界を変えたいというようなメッセージ性を混める事に一切興味がありません。私にとっての映画作りとは、自分自身の経験と、その経験から得られる曖昧さや複雑さを反映した映画を作る事なのです。
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|2014年カンヌ国際映画祭[ワールド・プレミア]での評
映画の視点が、同時に美術館を訪れて芸術を前にした観客の視点となる。それはもっとも正直な見方だ。この美術館が情熱的なのと同じくらいに、なんと情熱的な作品だろう。
――ル・モンド紙(フランス)
非常に生き生きとして情熱的。偉大なドキュメンタリー作家ワイズマンの最も美しく成功した作品。
――レザンロック誌(フランス)
ワイズマン監督は、音楽的なリズムで美術館を訪れる人と絵画とを交互に編成している。それはまるで絵画の中に描かれた何世紀も前の人物の奇妙な人生と現代の我々が対話しているかのようだ。しかし同時に、この情熱的な美術館の偉大な戦略を見る機会をも与えてくれている。この学芸員たちの何とエネルギッシュなことか。そしてまた経営陣から修復職人まで、見るものすべてが面白い。これは芸術を好きにさせるためのワイズマン流の方法なのだ。今年のカンヌ国際映画祭はこの映画以外にマイク・リー監督の「Mr. Turner(原題)」もあった。カンヌは商業主義だけの映画を紹介するのではなく、やはり芸術のための映画祭なのだ。
――テレラマ誌(フランス)
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|監督プロフィール
フレデリック・ワイズマン Frederic Wiseman
1930年1月1日、アメリカ合衆国ボストン生まれ。イェール大学大学院卒業後、弁護士として活動し、その後軍隊に入る。除隊後、弁護士業の傍ら大学で教鞭をとるようになる。1963年にウォーレン・ミラーの原作を映画化したシャーリー・クラーク監督作品『クール・ワールド』をプロデュースし、映画製作の道に足を踏み入れる。1967年、ドキュメンタリー映画『チチカット・フォーリーズ』を初めて監督する。本作は精神疾患の犯罪者たちのための矯正院の実体を克明に映しだし、その過激さからマサチューセッツ州で公開禁止処分となるも大きな話題を呼ぶ。1971年、現在も活動の拠点とする自身のプロダクション「ジポラフィルム」を設立。劇映画『セラフィタの日記』『最後の手紙』をはさみ、精力的にドキュメンタリー作品を作り続けている。2014年、その功績がたたえられ、第71回ヴェネチア映画祭で栄誉金獅子賞が受賞された。
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|公開情報
ナショナル・ギャラリー 英国の至宝
2014/米・仏/英語/181分/原題:National Gallery
監督・録音・編集:フレデリック・ワイズマン
出演:ナショナル・ギャラリーのスタッフ他/エドワード・ワトソン&リアン・ベンジャミン(英国ロイヤルバレエ団)
配給・宣伝:セテラ・インターナショナル 宣伝:テレザ・サニー映画宣伝事務所
公式サイト http://www.cetera.co.jp/treasure/index.html
★2015年1月よりBunkamuraル・シネマほか全国順次公開!