【Info】演劇ユニット鵺的第6回公演『幻戯【改訂版】』2/20~26

 

時代に取り残されたような遊郭で
女を知らない男はふたりの娼婦と出会う
その日から彼らのなかで
何かが歪み
何かが軋み
見えなかった
見たくなかったはずのものが
おぞましくもうつくしいその姿をあらわしはじめた

 

 

第二十三回下北沢演劇祭参加作品 鵺的第六回公演

『幻戯【改訂版】』

2月20日~26日 下北沢「劇」小劇場

 

 

作・演出   高木登
出演   秋澤弥里
      今里真
      奥野亮子(劇団前方公演墳)
      佐々木なふみ(東京ネジ)
      杉木隆幸
      平山寛人(鵺的)
      松葉祥子
      渡辺まの(MU)
舞台監督 田中翼
ドラマターグ 中田顕史郎
照明 千田実(CHIDA OFFICE)
音響 平井隆史(末広寿司)
舞台美術 大津英輔+鴉屋
演出助手 井原謙太郎
衣装 吉永亜矢(午後から雨になるでしょう)
宣伝美術詩 森ろば(風琴工房)
舞台写真撮影 石澤知絵子
ビデオ撮影 安藤和明(C&Cファクトリー)
制作 鵺的制作部・J-Stage Navi
制作協力 contrai


タイムテーブル

2013年2月20日(水)~26日(火) 下北沢「劇」小劇場

2/20(水)19:30
2/21(木)14:30/19:30
2/22(金)19:30
2/23(土)14:30/19:30
2/24(日)14:30/19:30(←追加公演)
2/25(月)14:30/19:30
2/26(火)19:00

ポストパフォーマンストーク・ゲスト
20日(水)19:30 大森貴弘(アニメーション監督)
21日(木)14:30 瀬戸山美咲(劇作家・演出家・ミナモザ主宰)
21日(木)19:30 中田顕史郎(俳優/ドラマターグ)
22日(金)19:30 佐藤由美(アニメーションプロデューサー) 横山朱子(プロデューサー)
23日(土)14:30 木村文洋(映画監督)
23日(土)19:30 金巻兼一(脚本家・ミュージシャン)  わたなべひろし(アニメーション演出)
24日(日)14:30 鶴田法男(映画監督)
24日(日)19:30 山本清史(映画監督)
25日(月)14:30 小中千昭(特殊脚本家・作家)
25日(月)19:30 高橋良輔(アニメーション演出家)
26日(火)19:00 中村健治(アニメーション監督)

前売3,000円/当日3,200円/学生(要学生証提示)2,500円/グループ割引(三名様以上おひとりにつき)2,800円/初日割2,500円(全席指定・税込)

学生券およびグループ割引券はJ-Stage Naviのみで発売

・受付開始は開演1時間前、開場は開演30分前
・未就学児童のご入場はご遠慮ください
・お問い合わせ J-Stage Navi 03-5957-5500 (平日11:00〜18:00)

・鵺的公式サイトhttp://nueteki.org

稽古風景 ©鵺的

 

「ドキュメンタリー」の概念をおもいっきり拡大解釈してくれている、
制作協力・加瀬修一(contrail)による前説

恐怖とともに生きる

黒沢清(注1)が「恐怖とは、〈それ〉を知ってしまったことで、もう以前の〈それ〉を知らなかった頃には戻れないことだ」というような話をどこかでしていた。確かに「知らなければ良かった」というひと、モノ、こととの出会いは恐ろしい。2年前の3月以来、わたしたちはどれだけの〈それ〉と出会い、恐怖して来たか。そして、あとどれだけの〈それ〉と出会ってしまうのだろうかという不安を抱えて生きていることか。『幻戯【改訂版】』は、まさに〈それ〉を知ってしまった人間の「もう戻れない」という恐怖を孕んだ作品である。

この漂ってくる恐怖はどこからくるのか― 高木登は「Jホラーの先駆者」と呼ばれる鶴田法男(注2)と運命的な出会いをはたし、映画『予言』(注3)やTV『ほんとにあった怖い話』(注4)などに脚本で参加している。ちなみに高木に、最初にアニメ脚本の仕事を紹介したのが、数々のJホラーに影響を与えた「小中理論」(注5)で知られ、鶴田とも仕事をしている脚本家・小中千昭(注6)である。つまり高木の作品には「ホラーの血が色濃く流れている」(注7)のである。日常の隙間から滲んでくる不条理や狂気、説明やわかりやすさを配する演出を好むところに、この血が繋がっているといえるのではないだろうか。『幻戯【改訂版】』は、これまでで一番その気配が濃厚なのかも知れない。今回の公演では、アフタートークにご両名がゲストとして登壇するので、その辺りのお話もたっぷりとお聞きできると思う。

「見えなかった 見たくなかったはずのものが おぞましくもうつくしいその姿をあらわしはじめた」このキャッチコピーにある〈その姿〉とは何か?最初に「2年前の3月以来、わたしたちはどれだけの〈それ〉と出会い、恐怖して来たか」と書いた。だが『幻戯【改訂版】』はこのこととは直接関係ない。もっと限られた空間の個人的な物語である。しかし、そこに登場する彼らも彼女らも、いま現在を生きているわたしたちの姿に他ならない。台本を演じる役者とそれを観る観客も、いま同じ時代に生きている。客席(現実)から、舞台(フィクション)を観て、また日常(現実)を顧みる。その巡る思考も演劇の「ドキュメンタリー的作用」ではないか、といったらこじつけが過ぎると怒られるだろうか。

舞台と映画、両方の表現で活躍したライナー・ヴェルナー・ファスビンダーはこういった、「わたしは個人的な困惑から映画を作る、それ以外の理由はない」と。高木も同じように、その時々の困惑に素直に物語を生み出し続けているのだ。それがアニメでも、映画でも、舞台でも。

本番まであと1週間を切った。高木の書いた劇薬を咀嚼して立ち上がらせ、最終的に舞台のうえを支配するのは、選ばれた8人の役者の身体だ。連日の通し稽古で、その猛獣たちの牙は益々研ぎ澄まされている。観客はもう劇場から無傷では帰れない。〈それ〉を知ってしまったら、あとは恐怖と共に「現実」をどう生きるかだ。

(本文中敬称略)

(注1)黒沢清 映画監督・脚本家。主な作品に『CURE』(97年)、『回路』(00年)、『トウキョウソナタ』(08年)など。
(注2) 鶴田法男 映画監督・脚本家。主な作品に、OV『ほんとにあった怖い話』シリーズ(のちにTVシリーズ化)、映画『リングО バースデイ』(00年)、『おろち』(08年)、『PVO~呪われたフィルム~』など。
(注3)『予言』(04年)  鶴田法男監督・脚本作品。高木は共同脚本として参加。原作はつのだじろうの漫画『恐怖新聞』。出演:三上博史、酒井法子、堀北真希ら。Jホラーシアターの1本として制作された。
(注4) 『ほんとにあった怖い話』TVシリーズ 1991年~92年に掛けて全3作が発売されたOVが好評だったため、99年よりフジテレビでドラマ化。第1シリーズ、第2シリーズ、その他スペシャルも多数放映された人気作。詳しくは、鶴田監督のwebサイトをご参照ください。http://www.eizoh.jp/tsuruta/index3.html
(注5)「小中理論」恐怖の方程式。詳しくは、氏の著書「ホラー映画の魅力ファンダメンタル・ホラー宣言」(03年 岩波書店)を是非ご一読ください。
(注6) 小中千昭 脚本家・小説家。『邪願霊』『ほんとにあった怖い話』など、のちに「小中理論」と呼ばれる表現方法は、多くの映画作家に影響を与えた。シリーズ構成を担当していたアニメ『TEXHNOLYZE』(03年)に、当時まだ無名の高木を参加させた。
(注7) 「ホラーの血が色濃く流れている」高木自身がツイッターで、鶴田、小中ご両人から受けた影響をそう語っている。