【Review】美は何処にありや ーー松本貴子監督 『氷の花火 山口小夜子』 text 越後谷研

わたしは、山口小夜子を知らない。 わたしが知る山口小夜子は、一枚のレコード・ジャケット(スティーリー・ダン「Aja〈彩〉」)と数本の出演映画、著名人として世の中に流布されたパブリック・イメージだけである。わたしには、彼女

【Review】むきだしの混沌――アレクセイ・ゲルマン監督作品『神々のたそがれ』 text 越後谷研

  その名はゲルマン。アレクセイ・ゲルマン。我々の前に、60年目にしてようやく現れた曙光。あの怪物的小説を映画化できる、唯一にして最高最良の映画監督。ナチスの戦法に想を得て、アレクサンドル・デュマを換骨奪胎し、