【News】6/13-7/3開催 『教室の子供たち』公開から60年 “映画の天才”羽仁進映画祭 @大阪シネ・ヌーヴォ

ドキュメンタリーに新風を巻き起こした『教室の子供たち』公開から60年
“映画の天才”羽仁進映画祭 開催のご案内

『教室の子供たち』(1955)で、授業中の子供達の姿を生き生きとフィルムにおさめ、ドキュメンタリー映画に新風を巻き起こすとともに、世界を驚嘆させた映画監督羽仁進。岩波映画製作所設立に参加し、記録映画で注目された後、1960年に手がけた初の長編劇映画『不良少年』では、いきなりキネマ旬報ベストワン&監督賞を受賞。ドキュメンタリーの手法を多用し、俳優を使わず、不良少年を集め即興的に撮影されたリアル感あふれる力強い映像は、黒澤、木下を抑え、鮮やかな日本映画のニューウエーブを知らしめるものとなった。その後も『ブワナ・トシの歌』(65年)、寺山修司脚本の『初恋・地獄編』(68年)などの劇映画と数々のドキュメンタリーを製作。ドキュメンタリーの方法を駆使して、人間の内面を映し出し、数々の傑作を手がけた「映画の天才」だった。

近年、ウィーン国際映画祭、アメリカのハーバード大学、同エール大学、NY近代美術館等で特集上映が相次ぐなど、今、再評価の気運高まる羽仁進監督。このたびNPOコミュニティシネマ大阪とシネ・ヌーヴォは共催して、ドキュメンタリーに新風を巻き起こした『教室の子供たち』公開から60年を記念し、羽仁進映画祭を開催いたします。人や動物、大自然を愛し、やらせのないドキュメンタリー映画の醍醐味と、ドキュメンタリーとフィクションの融合という現在につながる映画の地平を切り開いた羽仁作品を回顧いたします。

ドキュメンタリーに新風を巻き起こした『教室の子供たち』公開から60年
“映画の天才”羽仁進映画祭

【開催期間】2015年 6月13日(土)〜7月3日(金) 3週間
【開催場所】シネ・ヌーヴォ(大阪・九条) 電話06-6373-1211
      地下鉄中央線・阪神なんば線「九条駅」徒歩3分(大阪市西区九条1-20-24)
【料金】
前売1回券1,200円/前売3回券3,000円/期間中フリーパス券(20枚限定)10,000円

当日一般1,400円/学生1,200円/シニア1,100円/会員1,000円/高校生以下800円
当日3回券3,600円/シニア3回券3,000円/会員3回券2,700円
〈レイト割引〉18:00〜以降の回は1,200円均一

※連日朝より当日分の整理番号つき入場券の販売を開始します。
ご入場は各回10〜15分前より整理番号順となりますので、前売券なども受付にて入場券とお引き換えください。

期間中 トークイベントあり!
6/13(土)12:40 羽仁進監督 ※『教室の子供たち』+『絵を描く子どもたち』の上映後

6/20(土)12:15 原一男監督 ※『不良少年』上映後

主催=NPOコミュニティシネマ大阪、シネ・ヌーヴォ
後援:大阪歴史博物館
助成:芸術文化振興基金
協力:岩波映像、KADOKAWA、サンリオ、松竹、東宝、プラネット映画資料図書館、平和博物館を創る会

公式HP→http://www.cinenouveau.com/sakuhin/hani/hanisusumu.html

「neoneo web」の、こちらのインタビューもご参照ください
【連載】ドキュメンタリストの眼 ⑬ 羽仁進監督インタビュー text 金子遊

羽仁進(はに・すすむ) 
映画監督。1928年生まれ。共同通信の記者を経て、岩波映画製作所の設立に参加。『教室の子供たち』『絵を描く子どもたち』など、教育・記録映画を手がけて注目される。『不良少年』『初恋・地獄篇』など劇映画の製作を経て、69年からはアフリカの野生動物の映像制作に取り組むようになる。著書は多数。映画関連の書籍では、『演技をしない主役たち—記録映画作者の眼から』『カメラとマイク—現代芸術の方法』『人間的映像論』がある。


【プログラム】



【上映作品】(年代順)


生活と水      
(1952年/岩波映画製作所/白黒/19分)
監督・脚本:羽仁進 撮影:栗林実 録音:桜井善一郎

生活水準改善のために、水道普及の必要性を伝えるために厚生省が岩波映画に依頼。羽仁は生活そのものをリアルに描き、単なる教育映画ではない水と人との根源的なかかわりを伝えている。美しい映像とユーモアを折り込み才能の片鱗を見せた羽仁進の監督デビュー作。

教室の子供たち-学習指導への道-     
(1955年/岩波映画製作所/白黒/29分)
監督・脚本:羽仁進 撮影:小村静夫 録音:桜井善一郎

日本に於けるドキュメンタリーの概念を覆し、羽仁進の名を広く知らしめた傑作。小学二年生の教室にカメラを据えて、子供たちの姿をいきいきと活写。どうしてこのような撮影が可能になったのか驚きを持って迎えられ、教育映画祭最高賞など絶賛された。その圧倒的なみずみずしさに驚嘆!



絵を描く子どもたち-児童画を理解するために-      
(1956年/岩波映画製作所/パートカラー/38分)
監督・脚本:羽仁進 撮影:小村静夫 録音:桜井善一郎

小学1年生の図画工作の授業で、表現する楽しさに目覚めた子供たちを捉える。子供たちの「絵」の部分のみをカラー映像にするなど、新鮮な手法によって描き出されたこの作品は、教育記録映画でありながら、娯楽映画と劇場併映された羽仁の記念すべき劇場デビュー作となった。 ※キネマ旬報ベストテン短編第1位

双生児学級-ある姉妹を中心に-      
(1956年/岩波映画製作所/パートカラー/41分)
監督・脚本:羽仁進 撮影:小村静夫・今野敬一 録音:桜井善一郎

一卵性の姉妹学級を中心に、東京中野の双生児学級の実態を記録。『教室の子供たち』などに続く姉妹編で、「人間の性格は遺伝によって決まるのか、環境で決まるのか」をテーマに挑戦した野心作。遺伝以外に、その後の生活での「発見」が大であるとし、それは羽仁の映画作りにも共通している。

動物園日記
(1957年/岩波映画製作所/白黒/75分)
監督・脚本:羽仁進 撮影:今野敬一 録音:桜井善一郎
照明:本橋俊男 音楽:和田則彦 監修:林寿郎(上野動物園飼育課長)

1882年に開園した歴史ある上野動物園。近代が生み出したこの人工的な環境を舞台に、飼育係と動物の生活の記録を通して、動物と人間のかかわり合いを見つめた一篇。今から60年近くも前の上野動物園が見られる! その後、アフリカに渡り動物を描くことになる羽仁の原点。

海は生きている
(1958年/岩波映画製作所/カラー/56分)
監督・脚本:羽仁進 撮影:小村静夫、吉田六郎 録音:加藤一郎 
美術:武田謙之助、勅使河原宏 音楽:入野義郎 解説:東野英治郎、黒柳徹子

羽仁進による日本初の長編カラー海底映画。ある少年の目を通して、海の中のさまざまな現象や動物のなりたちを追求し、海の自然や生命の仕組みを説き明かしていく海洋ドキュメンタリー。当時海外だった琉球列島の最南端にあたる八重山群島ハテルマ島にロケ、島々やサンゴ礁が美しい!

法隆寺(「日本発見」シリーズより)    
(1958年/岩波映画製作所/カラー/22分)
監督・脚本:羽仁進 撮影:瀬川順一 録音:金谷常三郎
音楽:矢代秋雄 解説:芥川比呂志

日本最古の木造建築であり仏教文化の宝庫・法隆寺を全面的に撮影し、今や接近できない箇所までドラマティックに映し出した名ドキュメンタリー。釈迦如来像や百済観音、玉虫厨子など至宝の数々のクローズアップ、そして寺の成立の由来なども説明される、今見ても素晴らしい代表作のひとつ。 ※文部省芸術祭賞、キネマ旬報ベストテン短編第3位

不良少年
(1960年/岩波映画製作所/白黒/89分)
監督・脚本:羽仁進 監督補:土本典昭 撮影:金宇満司 録音:安田哲男 音楽:武満徹
出演:山田幸男、吉武広和、山崎耕一郎、黒川靖男、伊藤正幸、瀬川克弘、佐藤章、中野一夫

実際に非行経験のある素人の少年たちを使い、東京の繁華街や鑑別所や少年院での姿を描いた劇映画第1作。ドキュメンタリーの手法を用いた新たな作風は、多くの映画人に衝撃を与え、同年、黒澤明の『用心棒』や木下惠介の『永遠の人』などを抑えてキネマ旬報ベストテン第1位となった。羽仁の名を不動にした代表作。
※キネマ旬報ベストテン第1位、マンハイム国際映画祭金賞、日本映画監督協会新人賞受賞



充たされた生活

(1962年/にんじんくらぶ・松竹/白黒/102分)
監督・脚本・編集:羽仁進 原作:石川達三 脚本:清水邦夫 撮影:長野重一
録音:安田哲男 照明:三浦礼 音楽:武満徹 編集:土本典昭 
出演:有馬稲子、原田甲子郎、アイ・ジョージ、田村高廣、大場ゆかり、
   山本豊三、佐々木すみ江、福田善之、島かおり

岸惠子・久我美子・有馬稲子の3人を中心に設立されたにんじんくらぶ製作。原作者・石川達三から有馬稲子が映画化権を獲得、当時、新進気鋭の羽仁に監督を委ね、報道写真家・長野重一をカメラに起用するなど斬新な演出で臨んだ野心作。心に虚しさを抱える新劇女優が60年安保闘争の渦中で自らの生き方を追求して行くさまを全篇オールロケで描いた傑作。

彼女と彼
(1963年/岩波映画製作所/白黒/113分)
監督・脚本:羽仁進 脚本:清水邦夫 撮影:長野重一 録音:安田哲男
照明:田口政広 美術:今保太郎 音楽:武満徹 編集:土本典昭
出演:左幸子、岡田英次、山下菊二、長谷川明男、五十嵐まりこ、
   木村俊恵、平松淑美、堀越節子、市田ひろみ、穂積隆信

東京郊外の団地に住む平凡な主婦が、隣に見下ろすバタヤ部落の人々と触れあううちに、人間にとって自由とは何かを問いかける。日常生活の中の心理的な波乱を、純度の高い映像に結実。「状況」の作家・羽仁進の問題意識が見事に結実した傑作であり、発足直後のATGで配給された。※キネマ旬報ベストテン第7位、ベルリン映画祭特別賞受賞

手をつなぐ子ら
(1964年/昭和映画・大映/白黒/100分)
監督・潤色:羽仁進 原作:田村一二 脚本:伊丹万作 潤色:内藤保彦 
撮影:長野重一 録音:安田哲男 照明:本橋俊男 音楽:武満徹 
出演:佐藤英夫、北城由紀子、森原幸雄、植田元求、香西純夫、谷口善信、
   寺本好広、田村孝、安里親義、山崎耕一郎

伊丹万作脚本、稲垣浩監督の名作『手をつなぐ子等』(’48)を再映画化した羽仁唯一のリメイク作。成績は悪いがクラスの人気者・寛太を中心に、子どもたちの世界を描いた珠玉篇。『教室の子供たち』で子どもたちを生き生きと描いた羽仁が、素人少年たちを起用し劇映画として演出。 ※モスクワ国際映画祭審査員特別賞

ブワナ・トシの歌
(1965年/東京映画・昭和映画/カラー/115分)
監督・脚本:羽仁進 原作:片寄俊彦 脚本:清水邦夫 撮影:金宇満司
録音:安田哲男、石河利之 音楽:武満徹 編集:土本典昭
出演:渥美清、下元勉、ハミシ・サレヘ、ハイディ・ギダボスタ

羽仁とアフリカの最初の出会いとなった作品で、長期ロケーションを敢行。渥美清演ずる主人公がアフリカ奥地にたった一人でプレハブ住宅を造りに行く姿を描き、渥美の生涯の代表作ともなった傑作。演技のまったくの素人である原住民と渥美の自然体な演技、掛け合いが絶妙! 

アンデスの花嫁
(1966年/東京映画・羽仁プロ/カラー/103分)
監督・脚本:羽仁進 撮影:長野重一 録音:久保田幸雄 音楽:林光 編集:芝崎英子 
出演:左幸子、アンセルモ福田、比嘉タケシ、高橋幸治、ドン・マテオ、サンタマリア、
   金城光太郎

アフリカで撮影した『ブワナ・トシの歌』に続き、南米アンデスでオールロケを敢行したドキュメンタリータッチのドラマ。写真見合いでペルーへと嫁いだタミ子は、財宝探しに没頭する夫を尻目に地道に農業に励む。雄大な自然を背景に、左幸子が土にまみれて働く女性を熱演。 ※キネマ旬報ベストテン第6位。

初恋・地獄篇
(1968年/羽仁プロ・ATG/パートカラー/108分)
監督・脚本・編集:羽仁進 脚本:寺山修司 撮影:奥村祐治 
録音:久保田幸雄 照明:鎌田勉 
出演:高橋章夫、石井くに子、満井幸治、福田和子、宮戸美佐子、
   湯浅実、額村貴美子、木村一郎

養護施設で育った孤独な少年シュンとヌードモデルの少女ナナミの初恋を綴る青春映画。自分の中に“地獄”を持ち、それをどう相手に伝えていいか分からない、そんな荒野に生きる10代の不安定な愛と性、現実と深層心理を巧みに織り交ぜ、詩的かつ大胆に描いた傑作。寺山修司が共同脚本を務め、素人俳優を使っての即興演出や実験的な手法が光る鮮やかな快作。60年代末の騒乱の時代、ATGの1000万円映画の口火を切った作品で、大ヒットした! ※キネマ旬報ベストテン第6位



恋の大冒険
(1970年/オールスタッフプロ・テアトルプロ・東宝/カラー/95分)

監督・脚本:羽仁進 脚本:山田宏一、渡辺武信 撮影:奥村祐治 録音:久保田幸雄
照明:辻勇介 美術:和田誠、灘本唯人、山下勇三、白井宏信 音楽:いずみたく
出演:今陽子、佐良直美、由紀さおり、大矢茂、前田武彦、土居まさる、左卜全、藤村有弘

恋を求めて憧れの東京にやってきた少女に巻き起こる騒動を描いたミュージカル・コメディ。当時人気絶頂だったピンキーとキラーズを主演に、和田誠のイラストを実写と合成するなど刺激的な快作にして怪作。ゲスト出演も豪華で、70年代の香りが満載の羽仁唯一のエンターテインメント作品。傑作!

妖精の詩
(1971年/日・仏合作/カラー/99分<プリント状態悪し>)

監督・編集:羽仁進 撮影:マリオ・マシーニ 音楽:ジャン・ギィユー、荒木一郎
出演:羽仁未央、ラファエル・カスート、ブリジット・フォッセー、アルフレッド・マルファッティ

羽仁進の娘・羽仁未央を主演に、ある海外の島を舞台に子どもの世界の永遠を脚本なしで描いた実験的詩的ファンタジー。『禁じられた遊び』の名子役ブリジット・フォッセーが出演し、荒木一郎のテーマ曲も話題となった。  
※プリントがひどく、赤く退色していますが、記念上映として1回のみ上映させていただきますことをご了承ください。

午前中の時間割り
(1972年/羽仁プロ・ATG/カラー/101分)
監督・脚本・編集:羽仁進 脚本:中尾寛治、荒木一郎、浜田豊 撮影:佐藤敏彦
美術:石岡瑛子 音楽監修:荒木一郎 編集:南英子
出演:国木田アコ、シャウ・スーメイ、秦野卓爾、沖至、和田周、矢部正男、蜂尾和彦、野沢房良

夏休み、8ミリカメラを携えて旅に出た二人の女子高生。しかし、一人が事故死して…。『初恋・地獄篇』で若者の“性”を捉えた羽仁が、ここでは“生”を見つめる。生まれて初めてカメラを手にした主演の少女たちによる8ミリ映像が全編に使われるなど、大胆な演出に取り組んだ野心作。素人、子ども、即興、ドキュメンタリー…羽仁映画が到達したひとつの頂点。



アフリカ物語
(1980年/サンリオ・フィルム/カラー/114分)
監督:羽仁進 脚本:辻信太郎 原案:寺山修司 
共同監督・撮影:サイモン・トレバー、マイケル・フォックス、松前次三
録音:久保田幸雄 音楽:栗山章 
出演:ジェームズ・スチュアート、フィリップ・セイヤー、キャティ、エレノア・バローネ、ハクタ・シンバ

アフリカの大自然の中に生きる老人と少女、不時着した小型機の青年パイロットと出会い…。動物映画の専門家S・トレバーが参加し、サバンナを縦横無尽に駆け巡る野生動物の生き生きとした姿を撮影。『午前中の時間割り』以降、野生動物を撮り続けた羽仁映画の最後の劇映画となった。※山路ふみ子映画賞

予言
(1982年/子供たちに世界に被曝の記録を送る会映画製作委員会/カラー/41分)
監督・脚本:羽仁進 撮影:奥村祐治 照明:五十畑憲一 音楽:武満徹 編集:沼崎梅子

アメリカ国立公文書館に眠っていた核被害を記録したカラー映画フィルム10フィートを1単位に、市民からのカンパにより日本に戻そうという市民運動によって集められたフィルムから、羽仁監督が演出した「10フィート運動映画3部作」第二弾。資料映像とともに取材・ロケ映像を加え製作。 ※アメリカン・フィルムフェスティバル1983年度レッドリボン賞

歴史=核狂乱の時代
(1983年/被爆の記録を送る会/カラー/116分)

監督・脚本:羽仁進 撮影:奥村祐治、高間賢治 音楽:毛利蔵人
編集:沼崎梅子 ナレータ:鈴木端穂

「10フィート運動映画3部作」最終章。戦争の歴史の中に核兵器問題を位置づけ、米・ソ・中・南太平洋にロケし、被爆者の現実、核状況を浮き彫りにした反核・反戦の長編映画の大作。戦争に反対し、核兵器の廃絶を願う羽仁の現在に至る最後の映画作品。

羽仁進監督(2014年)撮影:金子遊 

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