【info】東京ドキュメンタリー フォトグラフィー ワークショップ 2012年度受賞作品展示

 

2012年8月に5日間にわたって行われた、
東京ドキュメンタリー フォトグラフィー ワークショップ。

来場者・講師陣・レヴュアーによる投票で
「スカラシップ賞」「Encouragement Grant賞」
をそれぞれ受賞した2名による作品展示を、
銀座リコーフォトギャラリーRING CUBEを会場にして行います。

 

 

スカラシップ賞 丹羽理 写真展 「再生~Saisei~」

日時:10月3日(水)~15日(月)11:00~20:00

Encouragement Grant賞 前田実津 写真展 「My Recollections」

日時:10月17日(水)~29日(月)11:00~20:00

 ※入場料無料。火曜日休館。最終日は17時まで

 

会場:銀座リコーフォトギャラリーRING CUBE

東京都中央区銀座5-7-2三愛ドリームセンター9F

お問い合わせ:03-3289-1521

 

東京ドキュメンタリーフォトグラフィーワークショップ公式サイト

http://tdpw.org/workshop/

 

トークイベント 10月14日(日)17:00~17:45

受賞作家の2人が、オリジナルのスライドショーを交えながら作品や活動について語ります。(会場 RING CUBE 9F ワークショップスペース/予約不要)

 

 

10/3~15____________________________________________________________________

 

スカラシップ賞 丹羽理 写真展 「再生~Saisei~」

日時:10月3日(水)~15日(月)11:00~20:00 最終日は17時まで

 

 

私は今、ある男性の日常を追っている。その男性は、三年前、自宅の部屋で自殺を図った。男性は、途中で切れないように、趣味であるカヌーで使う太いロープを用い、首を吊った。その時、同居していた祖父に発見され、救急車で運ばれたが、男性の心臓は約三十分間停止していたという。心臓が動き出してからも意識は戻らず、医師は「このままかもしれない、もし意識が戻っても、まず、重い後遺症が残る」と言った。二週間後、男性は意識を取り戻した。心配された重い後遺症はなく、多くの人が、奇跡だと言った。

一ヶ月の入院生活を経て退院し、一年間休養をとった後、男性は社会に復帰することを決断した。心配されていたほどの後遺症はなかったが、軽度の記憶障害が残った。男性は今、設計関係の仕事に従事しているが、障害のせいで物覚えが悪く、時おり、頭がぼうっとして考えがまとまらないことが間々あるという。また、男性には、自殺を図った時、そして、その日以前の一ヶ月間の記憶が全くない。

「思い出したいですね。その時、私が何を考えていたか」

男性は、当時の自分がどういう精神状態でいたのか、どういう行動をとっていたのか、自殺を図る直前まで書いていたブログや日記を読み返すことで、最近少しずつ記憶が繋がりはじめたという。判然としてきた自殺の原因は、仕事や、婿養子に入った家庭でのストレス、そして、女性関係だった。

「奇跡的に助かってからの一、二年間は、生きなければ、と、少し前向きに考えられていたが、三年目になって、やっぱり大変だなと、思うようになりました。私の年齢で、障害を抱えて、この社会でまた一から生きていくのは、やはりいろいろと、大変ですね」

 

 


日本では、年間の自殺者数が三万人を超すという。これは、生きづらい社会の象徴とでもいうべき数字だが、それはやはり、実体のないただの記号でしかない。一度は絶望し、死すら望んだ社会の中で再び生きていくという決断、そこには一体どんな思いがあるのだろうか。この男性の姿を通して、三万人という数字の背後に隠れたひとつひとつのドラマを、そして、この社会で生きていくということの意味を、見つめていきたいと思う。

 

 

 

【写真家プロフィール】(にわさとる)

1983年、愛知県生まれ。写真家。

2012 Kuala Lumpur International Photo Award ファイナリスト

2012 Tokyo Documentary Photography workshop スカラーシップ

 

 

 

10/17~29___________________________________________________________________

 

Encouragement Grant賞 前田実津 写真展 「My Recollections」

日時:10月17日(水)~29日(月)11:00~20:00 最終日は17時まで

 

 

94歳になる祖母は、5年ほど前から認知症の症状がではじめました。
徐々に記憶が薄れるとともに、副次的症状で暴力的になった時期もあります。

 

たまに帰省するたびに、幼い頃から多くの時間を共有してきた祖母がいなくなってしまった気がして恐怖のようなものを感じることもあり、また仕事をしながら祖母の家に通い介護をし、余裕のなかった母を見ているだけでした。今回の撮影で、祖母とも母とも多くの時間を過ごしていく中で、撮ることを通じて自分と、自分の周りを見つめなおしている気がします。

 

祖母の記憶はきっとこれからも薄まり続けるのでしょうが、写真は残ります。今まで過ごした時を拾い集めながら、これから共有する時を撮り続けていければと思います。

日中、天気がよかったのでグループホームの近くを散歩する祖母と母。2012年6月

グループホームから一時帰宅し、母と叔母と一緒に祖父の仏壇に手を合わせる祖母。2012年7月

 

母はほぼ毎日グループホームへ祖母に会いに訪れる。一昨年に祖母がホームに入るまでは母が仕事を続けながらほぼ一人で介護をしていたため、心身ともに余裕がなかった。2012年6月

 

グループホームから一時帰宅し、いつも座っていたマッサージ椅子で眠りこける祖母。もう自分の家に帰ってきたという意識はあまり無いように見える。2012年7月

 

【写真家プロフィール】
1984年高知出身。神戸市外国語大学卒業。
2年間マレーシアで会社員として勤務後、現在フリーのドキュメンタリー写真家として東京をベースに活動中。
2011年アンコールフォトワークショップ、そして2012年東京ドキュメンタリーフォトワークショップに参加。
今回のストーリーを含め国内外での長期プロジェクトを進めている。