新型コロナウイルスの感染拡大は世界中に大きな被害をもたらし、日本でも4月7日に「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言」が出された。東京・大阪など7都府県の映画館は臨時休業を余儀なくされ、その後も感染者数や感染リスクの増大に伴い、休館の流れはほぼ全国の映画館に及んでいる。
補償なき状況下で休館が長引けば、観客の収入が途絶えた映画館、とりわけ「neoneo」で紹介するようなインディペンデントのドキュメンタリーを上映する「ミニシアター」にとっては文字通りの死活問題で、経営が立ち行かなくなれば、劇場のみならず、制作・配給を含めた日本の映像文化そのものが大きな危機に瀕することになる。この状況を回避すべく、現在「Save The Cinema」キャンペーンやクラウドファンドの「ミニシアター・エイド」など、さまざまな具体的支援策が立ち上がっている。
一方でオンライン上映の動きも活発化。アップリンククラウドの「アップリンク(配給)作品 60本見放題パック」や、5月に公開予定だった想田和弘監督の最新作『精神0』をWeb上でストリーミング上映 (5/2-) する「仮設の映画館」など、さまざまな構想が発表された。とりわけ後者は劇場―配給(製作)の配分を明示した上で、観客が劇場を選択し、それぞれの地域の劇場で映画を観た時と同じ収益構造となっているのが特徴だ。普段意識することの少ない「映画の経済」を可視化し、映画で生活している人々との相互扶助を呼びかける。
ここでは編集室に案内のあった3つの作品の、期間限定オンライン上映情報を掲載する。
劇場公開したものの、休館や来館リスクを考慮し、オンライン上映に踏み切った作品。
昨年の騒動で上映の目処が立たない中、オンライン有料配信を前倒しした作品。
(有料の上記2作品は、売り上げの半分を劇場支援に回すことを明文化している)
そして、こんな時期だからこそ、多くの人が作品に触れる機会を持つべきだとした、
昨年の「東京ドキュメンタリー映画祭」の短編部門・奨励賞受賞作品。
動機はそれぞれ異なるが、思いはみな同じ。依頼の文面を読み、そう考えた。
また劇場に足を運び、映画を観られる日が、1日でも早く来ることを願って。
(neoneo編集室 佐藤寛朗)
好評につき配信期間延長!
公開中の映画『インディペンデントリビング』 インターネット配信!
『インディペンデントリビング』
(2019年/日本/98分/カラー)
監督:田中悠輝/プロデューサー:鎌仲ひとみ
製作・配給:ぶんぶんフィルムズ
※バリアフリー日本語字幕・音声ガイドに対応
物語の舞台は大阪にある自立生活センター。ここは障害当事者が運営をし、日常的に手助けを必要とする人が、一人で暮らせるよう支援をしている。先天的なものだけでなく、病気や事故などにより様々な障害を抱えながら、家族の元や施設ではなく、自立生活を希望する人たち。自由と引き換えに、リスクや責任を負うことになる自立生活は、彼らにとってまさに“命がけ”のチャレンジだ。家族との衝突、介助者とのコミュニケーションなど課題も多く、時に失敗することもある。しかし、自ら決断し、行動することで彼らはささやかに、確実に変化をしていく。
監督:田中 悠輝(たなか・ゆうき)
1991年東京都生まれ。2011年から福岡県北九州市の認定NPO 法人抱樸(ほうぼく)で野宿者支援にかかわる。2015年に東京に戻り、翌年4月自立生活センターSTEPえどがわで重度訪問介護従業養成研修を修了し、ヘルパーとして働く。同年6月鎌仲ひとみ率いる「ぶんぶんフィルムズ」のスタッフとなる。その後、映画『インディペンデントリビング』の撮影開始。2017年から認定 NPO法人自立生活サポートセンター・もやいでコーディネーターとして勤務。2018年から日本初の市民(NPO)バンク「未来バンク」理事。
【期間】〜5 月6 日(水)24 時
【料金】1,800 円
【配信先リンク】https://vimeo.com/ondemand/filmil
※ ご購入から72 時間(3日間)、パソコンやスマホ、タブレット等、複数のデバイスで視聴することが可能です。
※ PayPal、またはクレジットカードでのご購入になります。
あいちトリエンナーレ2019で物議を醸したあの監督の最新作!
大浦信行監督『遠近を抱えた女』限定有料配信!
『遠近を抱えた女』
(2019年/日本/98分/カラー)
製作:ハイクロス シネマトグラフィ 制作:国立工房
出演:あべあゆみ 双鬼 廣末哲万 コラアゲンはいごうまん 有末剛
録音・編集:川上拓也
撮影・プロデューサー:辻智彦
監督:大浦信行
あいちトリエンナーレ2019で物議を醸した美術家・大浦信行。
この映画は、彼自身の受難の人生を、一人の女優の生き様に託し描いた渾身のドキュメンタリーです。フランソワ・オゾンやペドロ・アルモドバルなど、強烈な個性をもったインディペンデント作家を見出してきたブリュッセル独立映画において、熱狂とともにオープニングを飾った衝撃の映画です。一人の女性が現実を逞しく生き抜く姿を追いかけながら、現代社会の裏側に横たわる人々の無意識の情動をあぶり出す映画です。それはまた、現実の苦難からさえ微かな希望を見つけようともがく、私たち自身の物語でもあります。
この映画は、現実と虚構が境界なしに溶け合って映像に昇華する、前代未聞の「幻/実(げん/じつ)ドキュメンタリー」です。
大浦信行(おおうら・のぶゆき)
1949年富山県生まれ。19才の時より画家を志し絵画制作を始め、24才の頃より8ミリで映画制作を始める。1976年よりニューヨークに滞在、1986年帰国後、彫刻制作を始める。2000年ごろより本格的に映画制作を再開、『日本心中』(2001)『9.11-8.15日本心中』(2005)『天皇ごっこ』(2011)『靖国・地霊・天皇』(2014)が公開され、大きな話題を呼ぶ。
あいちトリエンナーレ2019では、出展した映像作品「遠近を抱えてpartⅡ」が世間を震撼させる大問題となり、わずか3日で展示中止となった。(最終日近くになって限定再公開)。『遠近を抱えた女』は長編5作目。
【期間】公開中〜5 月8 日(水)24 時
【料金】1,000 円
【配信先リンク】https://vimeo.com/ondemand/whp
※ 内容の都合上、18歳未満への配信は禁止です
※ ご購入から48 時間(2日間)、パソコンやスマホ、タブレット等、複数のデバイスで視聴することが可能です。
※ PayPal、またはクレジットカードでのご購入になります。
東京ドキュメンタリー映画祭 短編部門奨励賞受賞作品も!
4月28日まで限定無料公開
『家にあるひと』
(2019年/21分/16:9/HD)
監督:福原悠介 制作:ペトラ
古い一軒家に住む老婆が、家のまわりをほうきで掃いたり、昼寝をしたり、逃げ出した猫を追いかけたりする日々の風景。彼女ひとりでの淡々とした日常の時間を、説明的な描写やナレーション、音楽を排して記録した作品。『家』(2017)のショートバージョン。東京ドキュメンタリー映画祭2019短編部門奨励賞。
福原悠介(ふくはら・ゆうすけ)
1983年宮城県仙台市生まれ。映像作家。アートプロジェクトや民話語りなど、地域の文化を映像で記録しているほか、「対話」をテーマとしたワークショップをおこなっている。参加作品に小森はるか監督『空に聞く』など。記録集『セントラル劇場でみた一本の映画』企画・編者。
【期間】公開中〜4月28 日(火)24 時
【料金】無料
【配信先リンク】https://vimeo.com/372291124