『愛より強く』、『そして、私たちは愛に帰る』、『ソウル・キッチン』ではやくも三大映画祭を制覇した現代ドイツ映画を代表する若き巨匠ファティ・アキン監督の最新作『トラブゾン狂騒曲~小さな村の大きなゴミ騒動~』が8/17より渋谷シアター・イメージフォーラムで上映されている。
『そして、私たちは愛に帰る』のラストシーンにあらわれる、あの美しい村をおぼえているだろうか? トルコ東北部トラブゾン地区・チャンブルヌ村。そこには巨大なゴミ処理場をめぐる住民と市との衝突があった。
『クロッシング・ザ・ブリッジ』以来のドキュメンタリーとなるこの作品において、アキンはみずからのルーツであるトルコの美しい村が無残に汚されている事実に怒り、5年をかけて取材し、この作品にまとめあげた。
貯水タンクが決壊し、汚水が垂れ流されては川へ海へと流されてゆく。「死人が出たのか」と近隣住民が勘違いするほどの強烈な臭気に皆が口もとをおさえ、見ているこちらまで思わず鼻呼吸することをやめるほど。
恣意的な法解釈とずさんな管理によって土地の環境と人びとが大きな犠牲をしいられる――、これは決して対岸で起きていることではない。たとえば日本は、「核廃棄物」という、臭いこそないがいっそう危険な「ゴミ」をかかえたまま、その処理のめどすら立てられていない――。
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本作の公開を記念して、8月18日(日)、「渋谷でAction!ゴミ拾い」イベントが開催された。映画本編上映後、ゴミ拾いのNPO団体「green bird」代表・横尾俊成さんと、持続可能な社会を目指す環境広告会社「サステナ」代表・マエキタミヤコさんによるトークショーがおこなわれ、トーク後は観客と一緒に渋谷のゴミ拾いを体験。都内でゴミ拾いをしているボランティア団体「Reflection Project」の全面協力のもと、劇場周辺のゴミ拾いを実施した。
マエキタ まずは映画の感想を聞かせてください。
横尾 役人と住人のやり取りの中で、役人が「こんな大雨が降ると思わなかった」、一方で住民は「雨が降るの当然でしょ」。このやり取りは原発問題など色んな問題に通じると思いました。
知らぬ間に色々な事が起きていて、呆れた事になっていて放っておいてしまって。問題が起きて初めて自分たちのことなんだと気が付く。僕が活動しているゴミ、ポイ捨て問題もまさにそうです。
マエキタ 基本的に政治の原点だなと思いますよね。
横尾 お役所や行政に任せて、僕たちの便利な生活は成り立っているのですが、その一方で街の中での僕たちの存在がどうなのか、自分たちがこの街で何ができるのかを忘れてしまっている。それが今の日本だと思います。
マエキタ 今日、トラブゾンとシノップはどれぐらい離れているんだろうと調べてみたら、そんなに離れていないんです。シノップは日本が原発を売り込んだ事で有名な村です。とても美しい漁村なんです。そこの市長さんも反対していて当選した反対派。本作も知事や環境省、官僚、地方と中央の政治家、色々な人が出てきます。(住民に)シワ寄せする体質が日本とトルコって近いなと思いました。シワ寄せせずに天寿を全うして、生活を豊かにしてゆく、その基本命題がこの映画には詰まっていると思います。
この映画は、神をすごく尊重するのと父性政治についても描かれていました。トルコでも政治家は男性ばかりで、女や子供は口を出すなというのを少し感じました。もちろん女や子供だけでなく住民の人全体にも言えることですが。日本もトルコも直日本とトルコも抱えている問題は一緒。個人と国家権力が対等だと呼び覚まさなくてはならないと思います。
横尾 僕たちが街でゴミ拾いをしていると単純に楽しいです。特に権力などを意識しているわけではないのですが、自分たちも色々なことができんだな、僕たちでも解決できる問題があると気が付いたり、小さな活動の中にも希望があります。これをどう遠くに見える活動と繋げてゆくのか、そのためにどう想像力を働かせていくのか、それが課題です。
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|ゲストプロフィール
横尾俊成(green bird代表)
9.11をきっかけに、自ら学生団体を立ち上げたり、ユネスコなどのNPO・NPOでインターンやボランティアをしたりするようになる。現在、港区議会議員、NPO法人グリーンバード代表。 http://www.greenbird.jp/
マエキタミヤコ(サステナ 代表)
コピーライター、クリエイティブディレクターとして、97年より、NGOの広告に取り組み、02年にソーシャルクリエイティブエージェンシー「サステナ」を設立。「エココロ」を通して、日々、世の中をエコシフトさせるために奔走中。 http://www.sustena.org/about/
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★【追加情報】緊急開催”他人事ではない”トークショー!
<第一弾>
8月31日(土)13:00の回上映後
ゲスト:井部 正之さん
ジャーナリスト/アジアプレス・インターナショナル所属
1972年、東京都出身。ゴミ問題や環境汚染、産業公害の現状など、経済成長の陰で起こっている健康被害や環境影響を中心に取材している。
<第二弾>
9月6日(金)19:00の回上映後
ゲスト:松江 哲明さん
ドキュメンタリー監督。99年、日本映画学校(現・日本映画大学)卒業制作として監督した『あんにょんキムチ』が、同年山形国際ドキュメンタリー映画祭「アジア千波万波特別賞」など多数受賞。その後、『童貞。をプロデュース』『あんにょん由美香』『ライブテープ』など刺激的な作品をコンスタントに発表。著書に『童貞。をプロファイル』『セルフ・ドキュメンタリー―映画監督・松江哲明ができるまで』など。
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|作品紹介
監督:ファティ・アキン 出演:チャンブルヌ村の人々
撮影:ブンヤミン・セレクバサン、エルヴェ・デュー、音楽:アレクサンダー・ハッケ、編集:アンドリュー・バード
2012年/ドイツ/98分/デジタル/1:1.85/配給:ビターズ・エンド
公式HP www.bitters.co.jp/kyousoukyoku
★渋谷シアター・イメージフォーラムで大ヒット上映中!
|お問い合わせ
配給・宣伝:ビターズ・エンド(石原)
〒150-0036 渋谷区南平台町13-3-3F TEL.03-3462-0345