【Review】『ポリス/サヴァイヴィング・ザ・ポリス 』 text 杉本穂高

police_mainb本作は80年代を代表するイギリス出身のロックバンド、ポリスの結成から栄光を掴み、解散に至り、そして再結成するまでの過程を丹念に追ったドキュメンタリーだ。ポリスのギタリスト、アンディ・サマーズの自著伝「ポリス前調書(原題:One Train Later)」をベースにしており、アンディは本作の製作総指揮にも名を連ねている。

彼の自伝を下敷きにしていることから、本作は基本的にアンディ・サマーズの視点から見たポリスの歴史を描いている。いやむしろアンディ・サマーズの自伝そのものというべきかもしれない。もちろんスティングやドラマーのスチュワート・コープランドは「登場人物」として登場するが、あくまで本作の「主役」はアンディである。ポリス結成以前のアンディの生い立ちや音楽キャリアの変遷、妻との関係、日本へのおしのびの旅行でゴールデン街ではしゃぐ姿など貴重な映像が多数収められている。

映画は、ポリス結成からスターダムにのし上がるにつれて、メンバー内に高まる軋轢、特にフロントマンであるスティングの大きな存在がバンド内の人間関係を難しくしていたこと、プライベートを犠牲にして名声を勝ち得たアンディが抱えることになる苦悩を中心にポリスのというバンドの内面に迫る内容となっている。アンディの私生活、バンドの破滅という過去が、現在の再結成の希望と交差して、バランスの良い作品に仕上がっている。

SUB1パンクブームに乗ってパンクバンドとしてデビューしたポリスだが、実際のところメンバーはそれほど深くにパンクバンドに傾倒していたというわけではない。実際それは戦略的なものであったことが映画を見るとよくわかる。パンクバンドを名乗るには年を取りすぎていた当時のポリスのメンバーだったが、結成以前から様々なバンドを渡り歩いていたアンディを始め豊富なキャリアに裏打ちされた彼らの演奏は非常に洗練されていて、「大人のパンク」と言えるようなものであった。映画は、そんなポリスの創作の秘密とメンバーの軋轢に迫っている。

名曲「ロクサーヌ」が生まれた秘話、ピストルズなどがテレビで煙たがられ、アメリカツアーで破滅する中、新たなパンクバンド像を確立したこと、レゲエへの傾倒、なぜか俳優のジョン・ベルーシとマジック・マッシュルームをやっていたことなどが赤裸々に語られる。成功に対する名声や栄光という部分はことさらには協調されず、むしろ世間が知るところの輝かしい伝説のバンドの裏側の苦悩と葛藤が本作のメインテーマとなっている。

特にバンドのフロントマンである「カリスマ」スティングの立ち位置だ。ソロ活動後のスティングは明らかにポリス時代とは違う音楽を指向しているし、ポリス時代も楽曲のほとんどはスティングの作曲によるもの。メディアはスティングの独立をあおり立て、実際にスティングの心がポリスから離れていくのをアンディは如実に感じている。

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しかし本作は、スティングが実際にどう思っていたのか、また再結成時にどのような思いを抱いていたのかは、スティング自身の口からは語られない。あくまでアンディがどう感じていたかに過ぎない。だが最も間近でスティングのような傑物の才能に触れていた者の言葉は重い。インタビューでアンディは、スティングに関してフロントマンとして最高だ、と述べている。才能があってハンサムだ、という理由で。彼によってポリスは支えられているという自覚は相当にあって、当時からも彼なりに気を使うことも多かったのだろう。

そうしたポリスのバンド内部の対立とともに、本作の大きな主題となっているのがアンディの私生活だ。作品中では彼のもう1つのライフワークである写真も多数紹介している。バンド内の人間関係の複雑化を癒してくれるものは写真という、別ジャンルの創作だったというのは興味深い。

本来アンディを支える存在であったはずの妻と子供とはバンドの多忙が理由で離婚することになる。しかし、活動停止の翌年に復縁できたことは皮肉というか、世界的なバンドの多忙さや精神的重圧はやはり相当なものなのだろう。

また本作にはお忍びで日本のゴールデン街に遊びにきているアンディの貴重な映像も収録されている。バーでファンとカラオケを楽しむアンディのお茶目な姿を見れるのはファンにとって嬉しいだろう。

ここでしか見れない貴重な映像もあり、ポリスの歴史を俯瞰し、今後の活躍も予感させる。ポリスファンなら間違いなく必見の一本だ。
SUB4写真は全て © 2012 OTL Distribution LLC

【上映情報】
『ポリス/サヴァイヴィング・ザ・ポリス』
2012年/アメリカ/原題:Can’t Stand Losing You/Surviving The Police/カラー&モノクロ/83分

監督:アンディ・グリーヴ&ローレン・レイジン
製作総指揮:アンディ・サマーズ
原作:『アンディ・サマーズ自伝 ポリス全調書』(P-Vine Books/スペースシャワー ネットワーク 刊)
出演:ポリス(スティング、アンディ・サマーズ、スチュワート・コープランド)他  
提供:キングレコード
配給:ショウゲート/ビーズインターナショナル
宣伝:ビーズインターナショナル

11月23日(土)より、TOHOシネマズ渋谷ほか全国順次公開
 
公式サイト:http://www.survivingthepolice.com

【執筆者プロフィール】
杉本穂高(すぎもと・ほたか)
ブロガー。映画、テレビ、オンデマンドなど、映像というオールドメディアのビジネスがインターネットの発展とともにどう変わっていくかを日々追いかけています。映画レビュー、映像ビジネスモデル、著作権に関する記事多数。言論サイトBLOGOSにも参加中。 ブログURL:http://hotakasugi-jp.com