【Interview】必要なのは自分の信じることを続ける勇気ですよ――『不機嫌なママにメルシィ』インタビュー 監督・脚本・主演ギヨーム・ガリエンヌ

――今回はフィクションという手法をとったわけですが、一方で自身を語るとき、いまやもっともポピュラーになったともいえるセルフ・ドキュメンタリーという手法もあります。こっちの手法をとる選択肢は考えなかったのでしょうか?

GG まったく考えませんでした。優れたセルフ・ドキュメンタリーは確かに存在します。でも、残念ながら自己陶酔と自己満足で終わってしまってしまうケースも多い。それに僕は自分のことを単に知ってほしいから自分のことを映画にしたいと思ったわけではない。僕の半生ではあるけれども、ひとりの役者の誕生物語を描きたかった。それにはフィクションという手法がベストでした。もうひとつドキュメンタリーに関して言うと、911以降、人は証言者になりたがる傾向があるような気がする。それはどこか覗き見的で。自分は“見た”ということを誇示するだけ、ひとつの情報を伝達するに止まっている作品をよく目にする。それが一概に悪いとは言えませんが、現実をただ受け入れるだけで止まっていてはいけない。フィクションのすばらしいところは人間がさまざまな思いをめぐらす余白のようなものが作れるところ。やはり優れた映画というのは、ある事実が提示されたらそこにきちんと思考をめぐらす余白があって、そこから見た人が自分自身の経験したことと重ねたり、何かアクションを起こしたりする。自分の作品はそういう人のイマジネーションを刺激するものにしたい。受け止めた人がいろいろな角度から解釈することを可能にする。詩のようなさまざまなことが考える映画を私は作りたい。

――自分自身のことがこれだけ反響を得たわけですが、なにか自分自身をさらけ出した気恥ずかしさのようなものはありませんか?

GG いや、舞台の方がよっぽど自分をさらけ出している。舞台の方がもっと赤裸々ですよ(笑い)。たった観客がひとりであっても、生身の人間と向き合うことはものすごく自分をさらけだすこと。それに比べたら映画は実際に人の前に立つわけではないですからね。アーティストにとって人にどう自分が見られるかはたいしたことではない。1番勇気が必要なのは人の言動に左右されることなく自分の信じることを継続していくこと。そして、1番最悪なのは自分自身がやったことを自分が好きになれず、自分を信じられないことだと思います。

――自分自身を語ることを通じて、何か見えたことはありますか?

GG 自分自身を探究することは自分自身を知ること。この経験は今の僕自身を確実に支えてくれている。あと加えるなら、劇中で描かれているように若いときから、自己の精神分析に時間もお金もそうとう費やしてきたからね。その出費がいまようやく回収できたかな(笑い)。冗談だけど。

 

『不機嫌なママにメルシィ!』
(2013年/フランス、ベルギー/87分/仏語、英語)

監督・脚本・主演:ギヨーム・ガリエンヌ
出演:アンドレ・マルコン、フランソワーズ・ファビアン、ダイアン・クルーガー、レダ・カテブ他
原題:Les garçons et Guillaume, à table!/字幕:古田由紀子
配給:セテラ・インターナショナル

www.cetera.co.jp/merci

 9/27(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開


【作品情報】(作品プレスより)

本年度セザール賞5部門制覇!
監督が自伝的戯曲を映画化、女装で“ママとボクの一人二役”に挑戦!?
フランスで大ヒット、300万人が笑って泣いた感動の実話

フランスが誇る国立劇団コメディ・フランセーズの演技派俳優ギヨーム・ガリエンヌが、監督デビューを果たした自伝的作品で、主人公の“ボク”だけでなく、女装して“ママ”まで演じてしまった! “ママに女の子のように育てられる”という彼の実体験から生まれた大ヒット舞台の映画化が、ギヨームの監督・脚本・主演で実現したのだ。

その斬新すぎる挑戦を真っ先に称えたのは、昨年のカンヌ国際映画祭。監督週間アートシネマ賞・SACD賞が贈られた。そして本国フランスで公開されるや、風変わりだが笑って泣ける作風が、「アルモドバル以上!」「初期のウディ・アレンだ!」とメディアに絶賛され、観客動員数300万人を突破するスーパーヒットを記録した。

さらに本年度セザール賞が、この大ブームのクライマックスを飾った。『アデル、ブルーは熱い色』などの強豪を抑えて最多10部門にノミネートされていた本作が、作品賞・主演男優賞を含む主要5部門を制覇したのだ。

今まさに大喝采を浴びているギヨーム・ガリエンヌとは、いったい何者なのか? 数々の舞台で実力を認められ、人気TV番組のホスト役で広く知られるようになる。また、日本の能の舞台でパリ・オペラ座のエトワール、ニコラ・ル・リッシュを起用して上演するなど、国際的にも活躍。映画では、ソフィア・コッポラ監督の『マリー・アントワネット』、『サガン -悲しみよ こんにちは-』などに出演。最近では、『イヴ・サンローラン』でサンローランの公私共に長年のパートナーだったピエール・ベルジェを味わい深く演じ、高く評価された。

ジャンルを超えた色とりどりのエンターテイメントに携わり、じっくりと熟成させてきた才能が、今華々しく開いたギヨーム・ガリエンヌ。フランス映画界の新たな旗手が生み出した笑いと涙がつまった感動作が、ついに日本にも素敵な“びっくり”を届けてくれる──!

 

 監督・脚本・主演(ママ&ボク)

ギヨーム・ガリエンヌ Guillaume Gallienne
1972年2月8日、パリ近郊のヌイィ=シュル=セーヌ生まれ。実業家の父とロシア系グルジア人で貴族の血を引く母のもと、四人兄弟の三男として生まれ育つ。裕福な環境にあったが、子どものころからほかの兄弟と違って身体が弱かったため、母親はギヨームだけ区別して過保護に育て、そのためもあって彼は空想のなかで女の子を真似るようになっていった。そしてその最大のモデルにしてお手本となったのが母親だった。

初等教育を終えてのち、英国での寄宿学校生活を経験。19歳のとき、最大の彼の理解者だった従姉妹のアリシア(映画の冒頭、彼女の写真とメッセージが写し出される)が若くして突然、亡くなったのをきっかけに、自分の将来を演劇の世界に定め、フロランの演劇学校へ。さらにコンセルヴァトワールに入り、ドミニク・バラディエやダニエル・メスギッシュらの指導を受ける。’98年に卒業し、’05年よりコメディ・フランセーズの正規団員として数々の舞台に立つ。マリヴォーの「La Mère Confidente」やジョルジュ・フェドーの「ル・ダンドン(間抜けな男)」などの当たり役をもつ。

舞台活動に並行して、’90年代より「フォルクスワーゲン・ゴルフ」などのテレビ・コマーシャルにも登場するようになり、映画にもサリー・ポッターの『タンゴ・レッスン』(’97年)、クロード・ルルーシュの「Une pour toutes」(’99年)、『花咲ける騎士道』(’03年)、ソフィア・コッポラの『マリー・アントワネット』(’06年)、『オーケストラ!』(’09年)などで好演を見せる。

’08年、自身の子どものころに材を採った『不機嫌なママにメルシィ!』を舞台劇に仕立てて自作自演し、大評判に。’10年、すぐれた演劇人に贈られるモリエール賞を獲得。さらに’13年には自ら映画化して大ヒットを飛ばし、セザール賞10部門にノミネートののち、下馬評の高かった諸作を押さえて最優秀作品賞、最優秀脚色賞、第1回作品賞、最優秀男優賞、そして最優秀編集賞の5部門を獲得し、世界にその名と才能を知らしめた。

【聞き手プロフィール】

水上賢治 (みずかみ・けんじ)

映画ライター。ぴあ映画生活やフリーペーパー「FILT」などで主にインタビュー記事を執筆中。