【News】原発12キロに理想郷を作った男のドキュメンタリー『ナオトひとりっきり 』(中村真夕監督)クラウドファンディング実施中!

 『ナオトひとりっきり Alone in Fukushima』

放射能汚染された町に理想郷を作ってしまった男・松村直登を一年追った奇想天外なドキュメンタリー映画が誕生!
4月の劇場公開に向け、クラウドファンディングを実施!

https://motion-gallery.net

ダチョウ、牛、猫、犬、イノブタ、そして男がひとり‥原発事故で誰もいなくなった町には、緑があふれ、動物たちがのびのびと暮らしている。福島第一原発から12キロのところにある富岡町。無人地帯となった町に一人残り、いきものたちと暮す男・松村直登(55歳)がいる・・・

大手メディアでは伝えることができない、地図から消されようとしている町に生き続けるいのちを一年間見つめたドキュメンタリー映画が完成いたしました。4月18日より新宿K’s Cinemaにて劇場公開され、全国そして海外でも公開予定のこの作品ですが、配給、宣伝費用が不足しております。たくさんの方々に映画を届けるためにも、本作に賛同、ご協力して下さる方を募集しております。ご支援よろしくお願い申し上げます。

イントロダクション

「おら、他にいくあてもねえから、あいつらとここにとどまった」

原発から12キロの町・福島県富岡町に、ひとり残った男がいる、松村直登(55歳)だ。
誰もいなくなった町で、朝晩、いきものたちの世話に明け暮れるのが、今の彼の生活だ。震災直後は電気もなく、2年間、ロウソクの炎で凌いだ。今でも下水道は復旧しておらず、わき水に頼っている。現在、ダチョウ1匹、猫12匹、犬1匹、ポニー1匹と牛36匹と暮らしている。

原発事故で人がいなくなった町に残されたいきものたちは、彼の仲間だった。彼は周りに何と言われようとも、一人でとどまり、お腹を すかせたいきものたちにエサを与えつづけた。最初は放射能の影響が心配だったが、それも気にならなくなった。どうせあと10年、15年先に病気になっても彼はかまわなかった。

肩身の狭い避難生活を送るより、電気も水道もなくても、生まれ育った町にいる方が気楽だった。町の多くの人たちのように、原発に翻弄され続けた人生だった。30年以上、鉄筋工として働き、第一、第二原発の建設にも関わった。原発で潤った町には高速道路やダムが次々と建設され、仕事は絶えなかった。それが ある日、突然、あの爆発ですべてを失われた。仕事はなくなり、一緒に暮らしていた高齢の両親は兄弟によって避難させられた。町の人々は家を追われ、動物たちを置いて逃げていった。

ナオトの中に怒りがわいてきた。「おらも、あいつらも国に捨てられたんだ。だからここに居続けてやるんだ」— ナオトは必死に犬や猫にエサを与え続けた。殺処分を拒否した畜主から牛たちを預かり、飼ったこともない牛の世話を始めた。

いきものたちを生かしていくことが、ナオトを生かしてくれた。町にひとり残ったナオトは海外メディアに注目され、捨てられた動物たちの救世主として祭り上げられた。皮肉にも原発事故によって、ナオトは大きな存在意義を得ることになったのだが‥。

原発事故から3年を過ぎたが、未だに事故の収束は見えていない。町の多くの人たちが帰還を諦めようとしている一方、ナオトの父や年寄りたちは自宅に戻って住みたいと言い始めている。そんな中、放射能汚染された町で、子牛は生まれ、子猫たちも生まれ、ナオトはいきものたちと生き続ける‥。

監督のことば

私が初めて松村直登さんのことを知ったのは、海外メディアのリポートだった。人がいなくなり死の町と化した町には、いきものがあふれ、緑が青々としていて、そこに松村さんは動物たちと自由に暮らしている姿を見て衝撃を受けた。最初は興味本位で訪れた。無人地帯となり、境界線で区切られた町は、「惑星ソラリス」のような不思議な世界で、松村さんはそこのたった一人の住人のように見えた。

しかし松村さんと町のことについて知るうちに、いろいろなことを発見した。海外メディアでは、松村さんは動物たちを救うために無人の町に留まった救世主のように謳われていたが、実際はちょっとちがっていた。松村さんの人生は原発によって翻弄されてきた。原発建設で潤った町で、儲かりもしたが、原発事故ですべてを失った。自宅から出て行けと言われて、行かないと言った。50をすぎて、失うものもなかったから、自宅に留まることにした。町に残された動物たちは彼の仲間だった。動物たちと町に留まることが、原発事故をなかったことにしようとしている政府や東電への静かな抵抗だった。

そして彼はそれにより新たな存在意義を得て、世界から注目されるようになった。注目されることは彼の生き甲斐にもなったが、しかし重荷にもなった。彼には震災を通して出会った女性との間に昨年、子どもが生まれた。しかし未だに一緒に住むことはできない。町に留まり続け、最後まで動物たちと暮すことが彼の使命となってしまい、彼は今後についてどうするか葛藤し続けている‥。

松村さんに出会い、その周辺の人たちを見つめる中で、もう一つ気づいたことは、動物たちだけでなく、人間も捨てられたということだった。震災前は元気だった松村さんの母親は脳梗塞で倒れ、一年後亡くなり、父も体が弱くなっている。震災後、町の多くの年寄りや弱い人たちが慣れない避難生活で弱り、先行きの見えない町の状況を苦にして、次々に亡くなっている。これは他人事ではないと思った。原発を抱えるどこの地域でも起こりうる恐ろしい未来だ。

震災、原発事故により人生を大きく変えられた松村直登という男の数奇な行く末を、今後も見つめていきたいと考えている‥。

【監督プロフィール】 

中村真夕 MAYU NAKAMURA 

 コロンビア大学大学院を卒業後、ニューヨーク大学大学院で映画を学ぶ。2001年に文化庁芸術家在外研修員に映画監督として選出される。2006年、京都を舞台にした劇映画「ハリヨの夏」(主演:高良健吾、於保佐代子、柄本明、風吹ジュン)で監督デビュー。2006年釜山国際映画祭コンペティション部門に招待される。2011年、浜松の日系ブラジル人の若者たちを追ったドキュメンタリー映画『孤独なツバメたち〜デカセギの子どもに生まれて〜』を監督。全国13館で劇場公開され、ブラジル映画祭ドキュメンタリー部門でグランプリを受賞。現在はNHKなどを中心にドキュメンタリーや 旅番組、震災関連番組のディクレクターとして活動する。


 

【作品情報】

『ナオトひとりっきり Alone in Fukushima』
 (2014年/日本/97分/カラー/HD)

撮影・監督・編集 – 中村真夕
音楽・ 寺尾紗穂

 4月18日(土)より、新宿K’s Cinemaにて公開予定

クラウドファンディングのページ(motion-gallery)
※モーションギャラリーよりお入りください。
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