【Review】コンテンツとしての「ドキュメンタリー入門書」 寺岡裕治編『21世紀を生きのびるためのドキュメンタリー映画カタログ』 text 細見葉介


「ゼロ年代」の初頭に、ドキュメンタリーに興味を持ってイチから知ろうとした時、その敷居は高かった。インターネット上の情報精度が低かったこともあるが、例えば文学少年にとっての「新潮文庫の100冊」のような、分かりやすい作品の選択肢はなかったし、入門書も見当たらなかったと記憶している。ある程度の鑑賞を前提としている読者へ向けた理論・評論書、佐藤真の http://propeciaonlineinfo.net/ Buy Generic Propecia Online 『ドキュメンタリー映画の地平』や小川紳介の http://batemanimation.com/books/medshop/ Buy Viagra Online 『映画を穫る』を読み、山形国際ドキュメンタリー映画祭や土本典昭の特集上映へ出向いて、いきなり激流のど真ん中に飛び込むほかなかった。かつて寺山修司が新劇の教養主義を批判的に評して「芝居を見に行くとなると、気が重い感じだった」と話していたのと似ていて、ドキュメンタリーを観ること自体に重苦しい印象を与えがちであった。

近年では環境は大きく変わり、いつでも入門に必要な情報へ触れられるようになった。理論・評論書だけではなく http://www.uajournals.com/campusvirtuales/modules/mod_med/ cialis online 『ソーシャル・ドキュメンタリー』(萩野亮+編集部編、2012)や http://trylinux.org/product/ Buy Propecia Online 『ドキュメンタリー映画のすすめ』(森田正明著、2013)といった、これまでドキュメンタリーを鑑賞したことがなくても興味を持てるような優れた本が、ここ数年の間に続々と出版されている。映画評論家や映画監督以外による映画評も目にすることが多くなり、雑誌でもたびたび特集が組まれる。まるでドキュメンタリーが形而上面から地平へと降りてきたようである。

そして今年3月、主に2010年から2016年までの作品に絞った入門書としてキネマ旬報社から出版されたのが『21世紀を生きのびるためドキュメンタリー映画カタログ』である。ドキュメンタリーをより生活圏に近づけて、混沌とした時代を生きる糧として再認識させる書であった。映画界にとどまらない執筆者が、独特な語り口そのままに多様な作品を紹介、批評し、知的好奇心を刺激する。編者は http://upsoftware.com.ar/status/ Buy Clomid online 『映画はどこにある インディペンデント映画の新しい波』(2014)で若い監督たちの活躍する姿をまとめ上げた寺岡裕治だ。

他のドキュメンタリー関連書では例を見ない斬新な内容だった。対談者、筆者の組み合わせは絶妙で幅広い。国分功一郎と三浦哲哉が、濱口竜介と酒井耕といとうせいこうが、原一男と宇川直宏が対談する。SEALDsのメンバーたちが選んだ作品を紹介する。著述家の古谷経衡が佐々木航弥監督の 『ヘイトスピーチ』(2015)を「人間の『良識』を問うた、『傑物』ドキュメントの誕生である」と評価したり、「革命家」外山恒一が自らも出演する木野内哲也監督の『立候補』(2013)を「どんなに好意的に観ようとしても汲むべき情状がまったく見当たらないコミくずドキュメンタリー」と酷評したりする。執筆者それぞれの体裁は自由で、ドキュメンタリーを論じているのか分かりづらい文もある。『ヤクザと憲法』『天に栄える村』から、フィクション作品である『サウダーヂ』『新しき民』、さらに『SMAP謝罪会見』までを論じている。カタログとして「マイノリティ」「民主主義」「こども」といったジャンルに分けた秩序ある章構成でありつつも、ドキュメンタリー映画の混沌とした世界を現前に提示する。読み進めるにつれてドキュメンタリーとは何か?と向き合う仕掛けとなっているのだ。鑑賞していない作品についての話であっても、この本自体が独立した読み物として面白い。観る方法や連絡先も明記されていて、作品へのアクセスを容易にしている。

タイトルの「生きのびる」という言葉を浮き上がらせていたのは、東日本大震災と原発事故テーマとした作品群であった。国分と三浦の対談では、311後のドキュメンタリーの傾向が回顧され、三浦は「数が少ないとはいえ重要な作品が作られたのも事実で、それらに共通しているのは『長期取材』をして、生活の具体を追ったことだと思っています」と述べている。時代の分水嶺としてそびえ立つ存在感を持ったその一群には、ゼロ年代に一世を風靡していたセルフ・ドキュメンタリーの作品が見当たらないことにも気づく。国分はテレビドキュメンタリーについて「当時は日本全体が何かを考えようとしていて、その勢いに答えようとする番組がテレビにいくつもあったと思う。でも、これは本当に印象論ですけど、その勢いが衰えていくと同時に、そういう番組も減っていった」という。東日本大震災と原発事故に、すでに歴史的な文脈が与えられつつあることを示した対談だった。

しかしタイトルと対照的に、本文中『相馬看花』(2012)監督の松林要樹によって発せられた「そもそもドキュメンタリーの映像作家が、これから先の21世紀を生き延びているのか?」という問いが、読み終えた時にもっとも強く残った一文であった。松林は100年後をにらみ希望を見い出しているが、最前線の作り手たちの姿からは、製作環境の相変わらずの厳しさも浮かび上がってくる。『戦場ぬ止み』(2015)の三上智恵監督は、なぜテレビ局に勤め続けることを選ばなかったのか?———を知ることになる。作り手も含めた、ドキュメンタリーの現実が詰まっていた。(文中敬称略)

編者は寺岡裕治。幅広い年代の執筆者が評を寄せている。

【書誌情報】

『21世紀を生きのびるためのドキュメンタリー映画カタログ』

編集:寺岡裕治
定価:1600円+税
刊行:2016年3月31日
判型:四六
発行元:キネマ旬報社

ISBN   978-4-87376-440-5

http://www.kinejun.com/book/detail/tabid/89/pdid/978-4-87376-830-4/Default.aspx

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【執筆者プロフィール】

細見 葉介(ほそみ・ようすけ)
1983年生まれ。インディーズ映画製作の傍ら、ドキュメンタリー映画鑑賞に各地を歩き批評を執筆。連載に『写真の印象と新しい世代』(「neoneo」、2004)。共著に『希望』(旬報社、2011)。

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