【News】震災の後…今年もやります! 6/24(金)〜26(日)開催 ★第19回ゆふいん文化・記録映画祭

震災の後だからこそ

映画館のない小さな盆地の街に、各地から多くの映画ファンが集う梅雨時の恒例行事『ゆふいん文化・記録映画祭』が、今年も6月24日(金)~26日(日)にかけて開催されます。

 4月14日以降に熊本県・大分県で発生した連続地震により、開催地の大分県由布市は建物やインフラの損壊など、様々な被害に見舞われました。まちのシンボルである由布岳の姿も以前とは変わり、入山規制も続いています。

それから約2ヶ月。大分県中部での地震発生は収まりつつあるものの、会場の湯布院公民館周辺には今もブルーシートで屋根を覆った建物が目に付く状態。営業を再開できていない旅館や店舗もあり、自宅に少なからぬ被害を受けたスタッフもいます。

しかし、そんな時だからこそ「本当に大切なものは何か、そしてなにを育て、生み出していくかを考え直す時」(清水聡二実行委員長)ということで、例年通りの開催が決定し、映画祭スタッフは実行委員長と事務局長を中心に、準備を急いで進めてきました。

上映作品も、皆さんを迎える準備も整い、梅雨の真っ盛りに「まっすぐな驚き」に出会える3日間の映画祭りがスタートします!!

原点回帰と新たな息吹を感じるラインナップ

今回の文化・記録映画祭は、今年10月に没後10年を迎える松川八洲雄監督による3作品をはじめとした力のある文化・記録映画と、近年発表された長編ドキュメンタリーの秀作、そしてフレッシュな松川賞作品が混在し、20回の節目を目前とした映画祭の原点回帰とも解釈可能なラインナップが並んでいる。

その中でも、今回の映画祭リーフレットを見た人たちが「この作品、観てみたい!!」とこぞって口にするのが、25日土曜日に上映される『石を積む』(監督:田部純正)だ。

その「観たい」という言葉を聴く度、筆者は心の中で「なかなか鋭いな…」とニヤッとしてしまう。この映画を観ると、今まであまり違いが気にならなかった、ただの石の重なりにしか見えなかった石垣が、まるで魔法の構造物のように感じられてきて、更にはその土地へと旅したくなるからだ。強力な磁力を持った、正に「まっすぐな驚き」に出会えるど真ん中ストライクな一作として、観賞を強く推薦したい。

同日に上映される今年の「松川賞」作品は、佐々木麻衣子監督による『紅』(べに)。20代の監督が大学の卒業制作として、山形で獲れる紅花、そしてそこから作られる紅の色を表現するために35mmで撮影した、正統派の文化・記録映画だ。ただカッコいいからフィルムで撮るのではなく、明確な目的があってそれを選択したというのだから、その姿勢も含めて見逃せない作品に仕上がっている。

そして26日、日曜日の朝。千葉県の横芝光町虫生地区の祭りを追い、1953年と2013年に撮られたふたつの『鬼来迎』を連続上映し、とちぎあきらさんセレクトによる貴重な映像の上映・トークプログラム『記録映画の保存と活用を考える』へと進む流れは、この文化・記録映画祭だけでしか味わえない特別な時間となるだろう。過去と現在を考え、更には未来も見つめ、映画を観て「ああ、面白かった」だけでは済ませられない、至高の知的刺激を得られるひとときとなるはずだ。

このneoneo webや各種メディアで既に多くの記事が出ている『ヤクザと憲法』『抱擁』『表現に力ありや』『徘徊 ママリン87歳の夏』の詳細は割愛するが、トリの『ヤクザと憲法』上映後、過去に映画原作者として湯布院映画祭に参加している作中のキーパーソン、元・山口組顧問弁護士の山之内幸夫氏が凱旋登壇することは特筆しておきたい。

「映画」と「祭り」で「映画祭」になる

ゆふいん文化・記録映画祭の楽しみは、もちろん映画だけではない。夜の祭りがあってこそ、ようやく「映画祭」が完成する。特に25日(夜)は『花の盛りの懇親会』の名で、地元の青年たちによる屋台と神楽を軸に、地域の人、通りすがりの旅行者、そしてもちろん映画祭観客・ゲストが入り混じっての祭りが開かれる。

 祭りのおまけとして、筆者(大塚)を探し出して「neoneoの記事を読みました」と声をかけて下さった方には、祭り会場で、ゆふいんの水の美味しさを感じられる「ゆふいんサイダー」、もしくは上映会場でコーヒーをごちそういたします。ぜひ、観て聴いて、感じて考えて語って、そして味わって、一緒に映画祭を楽しみましょう!!

 

【執筆者プロフィール】

大塚 大輔(おおつか・だいすけ)

1980年生まれ、大分県大分市在住。ゆふいん文化・記録映画祭へのスタッフ参加は今回が4回目。他に福岡インディペンデント映画祭でも韓国語通訳・字幕翻訳、企画立案、作品審査などを担当。召集がかかれば、裏方からトークMCまで、雑多な形で映画祭や自主上映会の手伝いをしている。昼間は別府市役所で、外国語専門スタッフや日本語講師としても働いている。

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