カンボジアの悲しみの人形たちにカンヌが涙した、
第66回カンヌ国際映画祭最大の話題作、2014年公開決定!
私は何年もの間、ある写真を探していた。その写真は、カンボジアがクメール・ルージュに占領されていた1975年から1979年の間に撮られたものである。写真そのものではもちろん大虐殺の証拠にはなり得ないのだが、その写真に私たちは考えさせられ、瞑想し、歴史を刻むことができるだろう。
私は文書や過去の新聞、カンボジアの田舎の村々をむなしく探し回った。そして今ならわかる。その写真は見つかるべきではないことを・・・。だから私は、自分自身で作る事にした。
私が今日あなたにお見せできるのは、写真でもなく、1枚の写真の捜索でもない、“追求の写真”である。映画がそれを可能にしてくれたのだ。
リティー・パニュ
―
監督のリティー・パニュは、幼少期にポルポト率いるクメール・ルージュによって行われた大規模な抑圧・迫害の影響で、家族や友人を失った。当時の残酷な記録は支配者達によってほとんど破壊されており、この「失われた写真」を探し続ける中、作者は写真が持つ本当の意味に気づく。そしてその写真を「探す」のではなく「創る」ことに転換する。記憶の中の“恐怖の支配”が、素朴なクレイアニメーションによって再現され、 主人公である「私」が観客に直接語りかけるように一人称で展開していく、人形劇のようなドキュメンタリー映画となっている。
カンヌ映画祭の会場では、多くの映画会社関係者が「悲劇の体験」という生を受けた、悲しみの人形達に感情移入し、涙した。大絶賛を受けた本作の受賞の知らせは世界中のメディアによって取り上げられ、日本国内からは既に公開についての問い合わせが多数寄せられている。
作家としても活躍するリティー・パニュは、デビュー作『サイト2:国境周辺にて 』(1989)を皮切りに、本作までにカンヌ映画祭では合計5回の受賞・正式出品を経験しており、カンヌや世界中で今最も注目されている監督の一人。
日本では山形国際ドキュメンタリー映画祭での受賞や、大江健三郎の芥川賞受賞作を、カンボジアを舞台に映画化した『飼育』(2011)などでも話題となった。アステア配給により2014年から全国順次公開予定。
―
|作品情報
『TheMissingPicture』(英題)
監督・撮影・編集:リティー・パニュ(Rithy Panh)
2014年/カンボジア・フランス/95分
公式サイト:http://astaire.jp/(作品公式サイト準備中)
監督受賞・出品歴(国内)
『さすらうものたちの地』(山形国際ドキュメンタリー映画祭01、ロバート&フランシス・フラハティ賞)
『S21 クメール・ルージュの虐殺者たち』(山形国際ドキュメンタリー映画祭03、優秀賞)
『焼けた劇場の芸術家たち』(東京フィルメックス05、コンペティション部門出品)
『戦争の後の美しい夕べ』他5作品特集上映(難民映画祭07)
『飼育』(東京国際映画祭11、アジアの風部門出品)
―
|関連記事[カテゴリ/映画]
【News】デンマーク・サムソ島での100%再生可能エネルギーシフト実現に密着!『パワー・トゥ・ザ・ピープル』全国上映開始!
【News】若き巨匠ファティ・アキン監督最新作『トラブゾン狂騒曲 ~小さな村の大きなゴミ騒動~』8月公開決定!
【Review】選挙ドキュメンタリーという現象~『選挙2』『映画「立候補」』『ムネオイズム~愛と狂騒の13日間~』に寄せて~ text 夏目深雪
【Review】がんを楽しむ〜『いのちを楽しむ 容子とがんの2年間』text 青木ポンチ
【Review】飯舘村を考える―『飯舘村 放射能と帰村』と『わすれない ふくしま』text 岩崎孝正