TBS報道局+東京藝術大学芸術情報センター
(上映会シリーズ)
「テレビジョン再検証・中継の思想」
5月から7月まで、8週にわたって行われる、1960年代にTBSが制作したドキュメンタリー番組の連続上映会です。
2013年、本放送開始から60年を迎えるテレビジョン。
映画からテレビ、映像から動画へと移行する、現在の視覚文化を検証するうえで、第2次世界大戦後のマス・メディアの展開を無視することはできません。これまでメディア論、表現論としてテキストで言及されてきた番組を、実際に「見て」、テレビジョンが持つ視覚文化としての意義、表現の質、現在との接点を検証します。
●上映日時:毎週月曜日18時半〜20時頃
●会場:東京藝術大学中央棟第3講義室
予約フォーム
上映会参加には予約が必要です。予約フォームから登録してください。
会場変更等生じた場合、予約フォームに登録したメールアドレスから連絡いたします。その他、関連企画についても案内等おこなう予定です。
●問い合わせ
松井茂(東京藝術大学芸術情報センター、思想としてのテレビ研究会) matsui.shigeru@fm.geidai.ac.jp
(※上映終了)
5月20日
『ドキュメンタリーの時代』(JNN50年記念番組)
ディレクター:秋山浩之
この番組は、テレビドキュメンタリーの自叙伝である。登場人物は、1960〜70年代にTBSでドキュメンタリー番組を制作した経験をもつ、作り手たち14人である。彼らが手掛けた傑作番組を引用しながら、ドキュメンタリーの変遷をたどり、その可能性を再考する。萩元晴彦、村木良彦、宝官正章、谷川俊太郎、山田正弘ほか。
(※上映終了)
5月27日
芸術祭参加作品『あなたは・・・』 (1966年11月20日放送)
ディレクター:萩元晴彦、村木良彦/構成:寺山修司
道行く人にマイクを向け『あなたにとって幸せとは何ですか』などの質問をぶつけて、日本人の人生観、国家観、幸福観を浮き彫りにする。意表を突く場所で、意表を突く質問をするというこの番組を手法は、当時大変なブームを呼んだ。街録番組の原点ともいえる番組。
6月3日
カメラルポルタージュ『中西太 背番号6』 (1964年7月14日放送)
ディレクター:萩元晴彦/構成:寺山修司
怪童とうたわれたプロ野球界の天才児・中西太の半生を描く。作品は、当時、西鉄ライオンズの監督を務めていた中西のある一日の試合に焦点を当て、試合の流れと中西の半生とを重ね合わせてゆく。ユニークな手法で描かれた人生論。
カメラルポルタージュ『サラブレッドわが愛』 (1964年10月13日放送)
ディレクター:萩元晴彦/構成:寺山修司
競馬馬同士の死闘ともいえる戦いを通して、勝負とは何か、人生とは何かを問う。中山大障害レースを3連勝したフジノオーと、敗退したタカライジンの試合を克明に追うことで、寺山的人生論が展開する。寺山がなぜ競馬を愛したか、その理由がわかる作品。
6月10日
カメラルポルタージュ『勝敗』1部、2部 (1965年10月5、12日放送)
ディレクター:萩元晴彦/構成:寺山修司
囲碁の坂田栄寿(名人・本因坊)と林海峯(八段)による名人戦を4台のカメラを使用して撮影し、真剣勝負の瞬間をとらえドキュメンタリー番組とした異色作。
6月17日
現代の主役『小澤征爾 第九を揮る』 (1966年2月10日放送)
ディレクター:萩元晴彦/構成:谷川俊太郎
指揮者の小澤征爾がベートーベンの交響曲「第九」を指揮する姿を通して、ひとりの人物が一番輝く瞬間をカメラでとらえて、番組化したドキュメンタリー。
現代の主役『直木賞作家誕生』 (1967年2月2日放送)
ディレクター:宝官正章/構成:有馬頼義
作家・五木寛之の直木賞受賞の瞬間を克明に記録した作品。直木賞選考の過程、各候補者たちの期待と落胆、そして五木寛之が受賞の瞬間に見せた表情とは……。受賞者と落選者の明暗を見事なコントラストの中に描き出した作品。
6月24日
現代の主役『わたしのトウィギー』 (1967年8月3日放送)
ディレクター:村木良彦氏/構成:山田正弘
ミニスカート全盛のこの時期の東京をコラージュ的手法で描いた異色ドキュメンタリー。ミニスカートの女王トウィギーにそっくりの日本人少女が登場し、彼女が闊歩する東京の街並みの映像とノイズとが、脈絡を持たずに積み重ねられてゆく。少女の発する言葉は、時にセリフめいており、時に肉声のようであり、その虚と実のコントラストの中に当時の時代の気分が表現されている。
現代の主役『クール・トウキョウ』 (1967年9月14日放送)
ディレクター村木良彦/構成:山田正弘
1960年代の無機的で覚めた時代感覚を映像化したフィクション・ルポルタージュ。当時、日本では「クール」という言葉が流行語となっていた。ベトナム反戦、モノ・セックス、裸のパーフォーマンス、フーテン族、右翼、など、街に氾濫する様々な出来事をコラージュ化し、時代の気分を映し出す。
7月1日
マスコミQ『われらの時代』 (1967年10月16日放送)
ディレクター:村木良彦/構成:山田正弘
60年代後半の若者たちの心の内側を記録した作品。20歳代の男女5人がカメラに向かって自己を語り始める。「青春」「政治」「セックス」について彼らが赤裸々に語ったインタビューが、モンタージュ風に積み重ねられてゆく。政治の季節といわれた60年代後半の青年の気負いと緊張感が伝わって来る。
マスコミQ『羽田空港 午後4時』 (1967年11月13日放送)
ディレクター:宝官正章
佐藤栄作首相の訪米を阻止しようと学生たちが集まった「第2次羽田事件」の様子を描いた作品。3,000人の学生が機動隊と激しい衝突を起こし、多数の負傷者、逮捕者を出した。番組後半は、スタジオの生放送で学生代表と政治評論家・藤原弘達氏が激しい議論を交わし、番組は怒号のうちに終わる。
7月8日
日本列島の旅『わたしの火山』 (1968年1月11日放送)
ディレクター:村木良彦/構成:山田正弘
自分にとっての「旅」とは何かを問いかけた異色旅番組。鹿児島・桜島を舞台に、主人公の20歳の女性が、自分の内面に秘めた「情熱」「青春」と風景としての「火山」「噴火」とを重ね合わせてゆく。旅とは、他ならぬ自分自身の発見であることを描いた、主観的紀行番組。
報道の魂『dAの時代』 (2009年6月7日放送)
ディレクター:秋山浩之
かつてTBSに在籍した今野勉さんが『テレビの青春』という本を出版しました。テレビが本格普及を始めた1960年前後の激動の時代を、番組制作現場の空気と思想を織り込みながら丹念に描いた自伝的ドキュメンタリーです。この時期、今野さんは同期の仲間たちと「dA」という奇妙な名前の同人誌を発行し、テレビの可能性について熱い議論を展開していました。先輩ディレクターに噛みつき、テレビの新たな表現を模索していったdAのメンバーたち……。無名だったADたちの、若さと無謀さと……。今野さんが「dAの時代」を振り返りながら、テレビの成長、テレビが果たした役割、テレビをめぐる開拓精神などを描いてゆきます。回想ではなく、今を逆照射するためのテレビ論として、今野さんに語ってもらいました。