【リレー連載】列島通信★大分発/SNSと映画館 text 田井肇

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間もなく2013年が終わろうとしている大晦日にこの原稿を書いている。前回(5月)この通信に、「日本の興行界は、アニメーションで成り立っていると言って過言ではない」と書いたが、2013年は、まさにその通りの結果となった1年だった。  

僕の劇場は前年比14%増という驚くべき結果を残したが、大ヒットがあったというわけではなく、中ヒットがいくつもあったことがこの結果につながったのだと思う。とはいえ悲観論者の僕には、これで上向いて来たとは全く思えない。むしろ1年を振り返ってみると、いくつもあった「入らなかった映画」のほうが強く印象に残っている。

「なぜこの映画がこんな(悪い)成績に?」と感じた映画をあげれば枚挙に暇ない。日本映画の若手のインディーズ映画は、ツイッターなどではさんざん盛り上がるものの、ツイートしている人以外、映画を見ている人はいないのではないかと思うくらいに入らなかった。ツイッターというのがなかなかクセモノで、簡単にネット上でつぶやいてしまうことで何かを伝えたような気分になり、実際に顔を見て相手に伝える本来のクチコミが逆になくなってしまっているようだ。

気の合う人、もともとそれに関心を持っている人の間だけでしか話題が巡らないネット上のヴァーチャルな盛り上がりは、決して興行には反映されないことを、いやというほど思い知った。フェイスブックもまた、「参加する」というイメージのイベント、思想・運動の拡散には有効だが、映画には向いていない。「いいね」の数に惑わされ、「これはイケる」と勘違いすることも多々あった。  


「ポップコーンの匂いではなく、人の匂いのする映画館」。それが僕のやってゆくべき映画館だと思ってきたが、これからもそれは変わらない。いや、もっとそのことを鮮明にしてゆこうと思う。「他人の人生の随伴者になって、別の人生を生きる」、そんな映画の悦びを心底味わえるのは、それ以外何もない映画館の暗闇の中に他ならないことを。

※しかし、そのことを発信しているこの場がネット空間であることが、皮肉と言えば皮肉な話だが。

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【執筆者プロフィール】
田井 肇 たい はじめ
1956年生まれ。1989年より大分市にて映画館「シネマ5」を経営。単館系映画を上映する地方ミニシアターの中でも古参に属する、座席数74席の映画館である。日本の映画環境を考える中、デジタル化問題について積極的に発言や提言を行なっている。