『阿賀に生きる』は、過去の映画ではなく、東日本大震災や原発爆発を経験したわれわれが生きていく世界に、ひとすじの光を投げかけているのではないだろうか。
新潟水俣病が発生した阿賀野川を舞台にしたドキュメンタリー映画『阿賀に生きる』(佐藤真監督)は、今年、完成から20周年を迎えました。若き素人集団7人が、3年間の共同生活の中からつむぎだした作品は、有意の市民による製作委員会の支えと、多くの人々のカンパによってゴールを迎えたものです。
20年前、早春のダビング作業を経て、5月に新潟市公会堂にて完成披露上映会をいたしました。登場する皆さんを招待したその日は生涯忘れることができません。
その後、新潟県内各所で先行上映会が開かれ、秋には東京・六本木シネ・ヴィヴァンで当時としては異例のドキュメンタリー映画の劇場公開がなされました。また、ニヨン国際ドキュメンタリー映画祭銀賞や山形国際ドキュメンタリー映画祭優秀賞など国内外の映画賞を多数受賞しました。
昨年の東日本大震災と東電福島第一原発の爆発以後、『阿賀に生きる』は新たな視点をもって見られているように感じます。映画に登場する人びとは自然と強く結びついた生き方をしていました。そういう人びとが公害の直撃を受け、コミュニティの破壊を体験したのです。原発崩壊の現状は水俣病が経験してきたことのようにも思えます。これからの私たちは「自然を内包した生き方」を思索し、そこに希望や未来を描くべきではないでしょうか。
『阿賀に生きる』は今もたびたび上映され、今は亡き登場人物がよみがえります。上映環境の変化からDVD上映されることがふえました。
しかし、今回、私たちはあえて、16mmフィルムでのニュープリント作成をみなさまに働きかけたいとおもいます。いまあるフィルムはキズが入り、完成当時のものはありません。
現像所からも原版の引き上げを要請されております。今後を考えますと、16mmニュープリントをあげるならこれが最後のチャンスかもしれません。
なぜ、フィルムにこだわるのかというご意見も十分承知しながら、フィルムの形で今後50年、100年と保存するためにも、『阿賀に生きる』のニュープリントを作成することを、みなさまに呼びかけるものです。また、同時にハイビジョンでのデジタル上映方式への対応を進めたいと思います。
佐藤真監督が急逝して今年で5年。今年中には彼の遺影のまえで、ニュープリントで上映会をしたいと思います。みなさまのご協力をお願い申し上げます。
(新潟・市民映画館シネ・ウインドでは9月上旬のリバイバル公開が計画されております。他は未定ですが、再公開を模索しています)
小林茂(『阿賀に生きる』撮影)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
|呼びかけ人
阿賀に生きる製作委員会代表 大熊孝 / 阿賀に生きるファンクラブ代表 旗野秀人
阿賀に生きるスタッフ一同 / 長倉徳生(カサマフィルム代表)/ 秦 岳志(「阿賀の記憶」編集)/ 矢田部吉彦(「阿賀の記憶」プロデュサー・東京国際映画祭ディレクター)
|カンパについて
以下のいずれかへご送金ください、なお、銀行送金の場合は、相手方に表示されるのは氏名のカタカナ表示のみなので、必要に応じ別途ご住所等の連絡をお願いします。
一口5000円(または任意額)
郵便振替口座 口座番号 00660-4-10904 加入者名 旗野秀人
銀行口座 太陽信用組合安田支店 普通口座 0162124
阿賀に生きる基金 事務局 旗野秀人
|お問い合わせ
旗野秀人 メール flag@cronos.ocn.ne.jp
小林茂 メール koba-pro@yd6.so-net.ne.jp