今年(2015年)の3月6日から15日まで、第10回大阪アジアン映画祭が開催された。その第1回は「韓国エンタテインメント映画祭2005 in 大阪」として開催され、翌年から対象地域を広げて「大阪アジアン映画祭」の名称が使われるようになった。4回目にあたる「大阪アジアン映画祭2009」から、暉峻創三氏がプログラミング・ディレクターに就任し、2011年の第6回からコンペティション部門が設けられ、今日に至っている。
私は第1回からポスター、チラシ、公式カタログの編集・校正をお手伝いしてきたが、今年の公式カタログ奥付を見ると、初回からこの映画祭にかかわっているのは富岡邦彦氏(CO2事務局長)と私ぐらいで、まさに隔世の感がある。
変化
映画祭の名称が変わり、新部門が設けられるなどの構造的変更があり、スタッフの入れ替わりがあり、というような変化は、世の習いともいえるが、今年も大きな変化がふたつあった。
ひとつは、第1回から本映画祭の事務局長を務めてきた景山理氏が、前回でその職を辞したことだ。文字どおり彼が中心になって牽引してきた映画祭だっただけに、今年はどうなるのかと心配された。全体的には大きなトラブルもなく終了でき、それは現スタッフの頑張りによるところが大きいと思う。
ただ、映画祭運営の細かな部分で、行き届かない点は散見された。例えば、ゲストなどへの対応。渡されるべきものが渡されていない。ゲスト同士の交流を促す仕掛けが不十分、などの声を聞いた。景山氏がいればそういうことはなかった、とは断言できないが、映画祭全体に目を配り、細かな点にまで指示を出すという存在はやはり必要で、その点で次回への課題を残したといえよう。
もうひとつの変化は、2009年から大阪アジアン映画祭の一部門として開催されてきた「おおさかシネマフェスティバル」が、本映画祭から切り離されたことである。
開催日も内容も本映画祭とは異なり、かねてから異質な存在ではあって、その意味ではスッキリしたともいえるのだが、長く付き合ってきた私には、一抹の寂しさがある。今年はまったくの民間ベースで3月1日に本映画祭とは別会場で開催され、盛況であった。1976年からの歴史をもつ由緒ある映画祭であり、次回の開催も期待したい。
私の仕事
ポスター、チラシ、公式カタログ等の編集・校正の仕事内容については、昨年も書かせていただいたので繰り返さないが、常に最大の問題となるのは、映画祭で上映する諸作品の決定に手間取ることである。その決定が遅れると、私の仕事だけでなく、あらゆる部署にシワ寄せというかたちで悪影響を及ぼす。
そのことについての要望は毎年述べてきているが、今年も改善されたとは言えない。どの映画祭でも、裏方が大変なのは当たり前だが、本映画祭では、それが度を超している。上映作品の決定を早く! 残念ながら、この命題は今年も繰り返さざるを得ない。
作品上映後のQ&A(監督や出演者と観客との質疑応答)の司会を何本か担当するのも、近年は私の仕事となりつつある。事務局から「お願い」され、できるだけ協力したいと思っている私が、しぶしぶそれを受諾するという構図だ。
《しぶしぶ》と書いたのは、人前に出るのが苦手なためで、司会ぶりのたどたどしさも相変わらずだ。それでも引き受けるのは、担当した作品をより深く知ることができ、監督や出演者の映画への真摯な姿勢を目の当たりにすることができるからでもある。
今年は『Starting Over』の西原孝至監督、同主演の秋月三佳さん、『運命というもの』のプロデューサー、ダン・ヴィリエガスさんのQ&Aを担当した。特に西原孝至監督は、一昨年の『青の光線』に引き続きだったので、再会が嬉しかった。まさに映画を通じての交流だといえよう。
内容
『白河夜船』(監督:若木信吾)をオープニングに、クロージングは韓国映画『国際市場で逢いましょう』(監督:ユン・ジェギュン)。そしてコンペティション部門、特別招待作品部門、インディ・フォーラム部門、CO2(シネアスト・オーガニゼーション大阪)助成作品、特集企画として「ニューアクション! サウスイースト」「Special Focus on Hong Kong 2015」「台湾:電影ルネッサンス2015」「メモリアル3.11」など盛りだくさんに、全48作品が上映された。
また、プレイベントとして「アジア映画ブックフェア」「大阪アジアン映画祭ポスター展」があり、オープニング当日には映画祭ゲストが道頓堀に登場する「アジアン スター フェスティバル 2015」というイベントも開催された。さらに、今年から《アジア映画界に多大な貢献をし、かつ、今後の活躍が大いに期待される映画人を1名選出し、授与する》として「オーサカ Asia スター★アワード」が設けられ、その第1回受賞者に台湾の俳優チャン・シャオチュアン氏が選出された。このほかにも、シンポジウム、トークセッション、ウエルカム・パーティなど、イベント事も目白押しであった。