【Pickup】特集★山形国際ドキュメンタリー映画祭2013 ヤマガタもぎたてレポート[初日:10/10 THU]

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メイン会場、AZ6Fの販売ブースで整列する映画祭のスタッフ。これがヤマガタ
流の『お・も・て・な・し』。雑誌「neoneo」も販売しています。

カーディガンはいらない 萩野亮

九州に上陸しようとしていた台風の影響か、10月なのにむし暑い東京を昨夜遅くに出発し、早朝に山形に到着する。駅ビルで朝食などなどをすませてロータリーに出ると、正午にならないうちに陽がさんさんと照っている。暑い。婦人が日傘をさしている。夕刻に会った岩崎さんは半そでだった。

初日のきょうは開会式のみ。オープニング上映は、山形市役所の地下倉庫にねむっていたという、昭和36年の広報フィルム。オリジナルの16ミリが、カタカタというあの音とともに50年ぶりに光を宿された。「山形市広報ニュースNo.4」とそっけなく題されたフィルムには、それまで蒸気機関車だった山寺=山形間に電気機関車が走るようになった、そのよろこびがフレームいっぱいに記録されていてまぶしい。当時はいまだテレビが普及していないころ、「動く映像」にはそれじたいにまだまだよろこびがあったのだと、50年前の市役所広報課の水沢さんは式場で語ってくれた。日の丸を振ってむかえる市民たちと列車の力動、そして映画。高度成長のさなかに、「技術」にはおどろきとよろこびがあったそのことを、いまはひとつのアイロニーとして受けとめよう。会場を出ると夜、今年の東京国際映画祭で市川崑総監督の『東京オリンピック』がデジタル復元版で上映されることをメールで知る。

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フォン・イェン監督

レセプションパーティーでは、なつかしい顔にたくさん会えた。『長江にいきる』のフォン・イェン監督もそのひとりだ。わたしが初めてメールマガジン時代の本誌「neoneo」でインタビューしたのがフォンさんだった。取材記事をとてもよろこんでくれて、北京から送ってくださった励ましのメールを、わたしはいまでも大切にしている。フォンさんは、目が合うとすぐにわたしだと気づいてくれた。そのことが今夜はほんとうにうれしい。いつもたくさんの出会いをくれるヤマガタが今年も始まる。


 【おまけ】本日(10/11)のおすすめ上映 佐藤寛朗

のっけから仙山線の電化の映画が登場したように、今回の映画祭では鉄道に関連する作品がいくつかある。アジア千波万波の『怒れる沿線:山谷』や『エクス・プレス』もそうだ。

鉄道マニアである私は、映画祭の公式ガイドブック「SPUTNIK」に映画と鉄道の関係をめぐるコラムを寄せた。(P20『「鉄ちゃん」の秘かな楽しみ』)これほどマニアの心を伝えるコラムはない、とひとり悦に入っていたら、同じ紙面に私の満足など吹っ飛ぶような、“本職”の方の記事が掲載されていた。

本日上映される『フィルムの中のやまがた:清滝章作品集』を撮影した清滝章氏インタビュー(P52「撮影機廻す音ひくく伝わりぬわが生きし日を記録する」)は、かつて山形県内を走っていた「山形交通三山線」の職員として人生を歩んだ清滝さんの、映像による“記録魂”が端的に伝わってくる。今でも記録を続けられているというそのお話の中に、さりげなく撮影された電車の“その後”が言及されていて、売却先の「高松琴平電鉄」という社名や「モハ103型」という車号を具体的にお話されているあたり、“鉄道屋”としての魂や誇りが伝わってくる。なるほど、上映される映画のタイトルも『雪と闘う高畠線』『電車お嫁入り』などどこか擬人的で、鉄路に対する愛情が感じられる。

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『さよなら三山線』映画祭公式カタログより

映画のスチール写真に映っている車両に見覚えがあった。前述の「高松琴平電鉄」は今や『百年の時計』(監督:金子修介)や『猫と電車』(監督:香西志帆)など、映画の舞台として有名になったが、それ以前は、廃線になった全国の鉄道から中古の電車を寄せ集め、「動く電車の博物館」などと言われていたものだ。そういえば、学生時代の1998年、その車両たちが世代交代されると聞き、撮影旅行に出掛けた事を思い出した。

私の手元にも、山形交通三山線で活躍した車両の写真があった。しかも乗車もしている。最大の特徴である正面の2枚窓(湘南型という)や、比較的低い側面の窓を見る限り、まぎれもなく同じ車両であるはずだが、肝心の正面から写した写真がない。かろうじて、車内のようすからその特徴が分かる程度だ。

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高松琴平電鉄を走るもと山形交通三山線の車両 (撮影:佐藤寛朗)

恐らくその時の私は、時期を同じくして無くなると言われていた、私の地元、川崎市のJR南武線をかつて走っていた車両(私の生まれるはるか前の話だが)を追いかけていて、その電車の事ばかりを考えていた。“郷土愛”は清滝氏に引けを取らないかもしれないが、写された写真からは、肝心の“車両愛”が伝わってこない。私の記録魂は、まだまだである。

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もと三山線の電車の車内。奥に2枚の窓がみえる(1998年、撮影:佐藤寛朗) 

【上映情報】
やまがたと映画「フィルムの中のやまがた:清滝章作品集」
10/11(金) 18:30〜 山形美術館2にて
『さよなら三山線』『電車お嫁入り』(1974)ほか、6本を上映


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