【Info】特集上映「記録映画作家・土本典昭」


日本の現代ドキュメンタリーを代表する巨匠・土本典昭監督。土本監督についての三本のドキュメンタリーの上映を中心に、参考上映、トークも交え、土本監督の仕事に多面的にアプローチしていきます。
鎌仲ひとみ監督、松林要樹監督からのメッセージはこちら。 

 

2011年は土本典昭の作品が顧られた年だった。『原発切抜帖』や『海盗り―下北半島・浜関根―』は各所で上映され、3月11日以降の福島の現実と重ねられた。他方、いま突きつけられているのは、原子力のみならず、あらゆる科学技術と社会のシステムを問い直すことであるだろう。

土本典昭は、技術的発展のひとつの帰結としての水俣病に、生涯を賭して対峙しつづけた。さらにさかのぼれば、初期作品の『ある機関助士』や『ドキュメント路上』では、交通安全のPRという本来の製作意図をはなれて、交通システムにおける過酷な労働と、避けられない事故への警鐘を鳴らしてもいた。
水俣における連作で、漁民のすがたに「労働」ではなく「仕事」を、ときによろこばしく見出していった土本典昭にとって、科学技術や社会に対する批判と仕事のよろこびを記録することとは表裏である。いま、その仕事の全体をあらためてかみしめるときだ、それも早急に。

萩野亮(映画批評/「neoneo」編集主幹)

| 上映スケジュール
2012年6月18日(月)ー6月30日(土)(日曜休館/12日間)


6月18日(月)
16:30-「ある機関助士」1963(37分)+「ドキュメント路上」1964(54分)
+トーク:岩佐寿弥(映画作家)
19:00-「映画は生きものの記録である 土本典昭の仕事」2006(94分)

6月19日(火)
17:10-「留学生チュア スイ リン」1965(51分)
+トーク:萩野亮(映画批評)
19:00-「記録映画作家・土本典昭 1996年7月14日」2011(100分)

6月20日(水)
16:00-「パルチザン前史」1969(120分)
+トーク:大津幸四郎(キャメラマン)
19:00-「まなざしの旅 土本典昭と大津幸四郎 2011年改訂版」2011(97分)

6月21日(木)
15:10-「水俣ー患者さんとその世界ー」1971(167分)
+トーク:高木隆太郎(プロデューサー)
19:00-「映画は生きものの記録である 土本典昭の仕事」2006(94分)

6月22日(金)
16:10-「水俣一揆―一生を問う人びと―」1973(108分)
+トーク:小池征人(映画作家)
19:00-「記録映画作家・土本典昭 1996年7月14日」2011(100分)

6月23日(土)
13:40-「映画は生きものの記録である 土本典昭の仕事」2006(94分)
15:50-「記録映画作家・土本典昭 1996年7月14日」2011(100分)
18:00-「まなざしの旅 土本典昭と大津幸四郎 2011年改訂版」2011(97分)※英語字幕版


6月25日(月)

16:30-「偲ぶ・中野重治―葬儀・告別式の記録―1979年9月8日」1979(55分)
18:00-「映画は生きものの記録である 土本典昭の仕事」2006(94分)
+トーク:石坂健治(映画研究者)×加藤孝信(キャメラマン)×藤原敏史(「映画は生きものの記録である 土本典昭の仕事」監督)

6月26日(火)
16:30-「海とお月さまたち」1980(50分)+「わが街わが青春―石川さゆり水俣熱唱―」1978(43分)
+トーク:一之瀬正史(キャメラマン)
19:00-「記録映画作家・土本典昭 1996年7月14日」2011(100分)

6月27日(水)
16:20-「海盗り―下北半島・浜関根―」1984(103分)
+トーク:清水良雄(キャメラマン)
19:00-「まなざしの旅 土本典昭と大津幸四郎 2011年改訂版」2011(97分)

6月28日(木)
17:50-「水俣病―その30年―」1987(43分)
19:00-「映画は生きものの記録である 土本典昭の仕事」2006(94分)

6月29日(金)
15:30-「よみがえれカレーズ」1989(116分)
18:00-「記録映画作家・土本典昭 1996年7月14日」2011(100分)
+トーク:土田環(映画研究者)×山上徹二郎(「記録映画作家・土本典昭 1996年7月14日」監督)

6月30日(土)
14:50-「みなまた日記 甦える魂を訪ねて」2004(100分)
+トーク:土本基子(映画同人シネ・アソシエ)+代島治彦(「まなざしの旅 土本典昭と大津幸四郎 2011年改訂版」監督)
18:00-「まなざしの旅 土本典昭と大津幸四郎 2011年改訂版」2011(97分)


土本典昭
 TSUCHIMOTO Noriaki

1928年生まれ。56年、岩波映画製作所に臨時雇員として入社。翌年、岩波映画製作所を退社。以後フリーとして同社の映画制作に携わる。63年「ある機関助士」で、芸術祭文部大臣賞やベルリン映画祭青年文化賞など国内外の映画賞を受賞。翌年に発表した「ドキュメント路上」は、ヴェネツィア映画祭特別審査員賞を受賞する。65年のテレビ作品「水俣の子は生きている」を経て、70年代より水俣病問題を取材した自主製作映画の連作を開始。原発問題をテーマとした「原発切抜帖」(82)「海盗りー下北半島・浜関根ー」(84)、内戦下のアフガニスタンを取材した「よみがえれカレーズ」(89)など、常に同時代の社会的問題に対峙した映画製作を貫き、ドキュメンタリーの今日的意義を提起する創作活動を展開した。2008年6月24日没。

 | 料金

一般=1回券1000円/3回券2700円
アテネ・フランセ文化センター会員=800円
各回入れ替え制
※アテネ・フランセ文化センター会員入会をご希望の方は登録が必要になります(当日入会可)
登録料:一般1500円/アテネ・フランセ学生1000円(約1年間有効)

| 会場&お問い合せ

アテネ・フランセ文化センター
東京都千代田区神田駿河台2-11 アテネ・フランセ4F
03-3291-4339(13:00-20:00)

| 主催

アテネ・フランセ文化センター

| 共催

映画美学校
シグロ
シネ・アソシエ
スコブル工房

| 協力

ビジュアルトラックス
自由工房
日本記録映画研究所
東京国立近代美術館フィルムセンター