|展覧会について
大阪・松原の新旧屠場で働く人々を約30年にわたって記録したものである。
人が自らの手で牛を殺す。それは作者が初めて見る光景であった。
屠場で牛と向い合う彼ら作業員の姿には威厳があった。それは、いのちを奪うものとして長い差別の中で彼らを支えてきた職人としての誇りではないか。その誇りを保ち続けてきた源は、日々のいのちとの関わりではないだろうか。
いつから私たちはいのちが見えなくなったのだろうか。
本来いのちあるものは己のいのちを保つために、いのちがけで他のいのちを食(は)む。そうして生と死を日常的なこととして付き合ってきた。しかし、いま日本をはじめ、食にあふれた国々では、食する生きものたちを屠るために機械や電気を使い、自らの手で殺さなくなった。便利になり、合理化され、きれいになったことにより、その生と死がいつの間にかベールに包まれたように見えなくなってしまったようだ。モノクロ約50点
|プロフィール
本橋 成一(モトハシ セイイチ)
東京都生まれ。68年「炭鉱〈ヤマ〉」で第5回太陽賞受賞。91年よりチェルノブイリ原発とその被災地ベラルーシに通い、汚染地で暮らす人々を写し撮る。95年「無限抱擁」で日本写真協会年度賞、写真の会賞を受賞。98年「ナージャの村」で第17回土門拳賞受賞。同名のドキュメンタリー映画は文化庁優秀映画作品賞を受賞したのを始め、海外でも高い評価を受ける。2作目「アレクセイと泉」で52回ベルリン国際映画祭ベルリナー新聞賞及び国際シネクラブ賞ほか受賞。02年東京都写真美術館でチェルノブイリ三部作「ナジェージダ〈希望〉」を開催。09年、西アフリカ・セネガルの村を舞台にバオバブの樹とともに暮らす人々を描いた映画「バオバブの記憶」を公開。最新作は写真集「屠場〈とば〉」(平凡社刊)。
主な著書に、「サーカスの時間」(筑摩書房)、「上野駅の幕間」(現代書館)、「ふたりの画家」(晶文社)、「無限抱擁」(リトル・モア)、「ナージャの村」(平凡社)、「ナージャ希望の村」(学習研究社)、「アレクセイと泉」(小学館)、「生命の旋律」(毎日新聞社)、「イラクの小さな橋を渡って」(共著・光文社)、「バオバブの記憶」(平凡社)、「昭和藝能東西」(オフィスエム)などがある。
|開催期間
2012年6月6日〜6月19日
|開催場所
銀座ニコンサロン 〒104-0061 東京都中央区銀座7-10-1 03-5537-1469
|連絡先
〒164-0003中野区東中野4-4-1 ポレポレ坐ビル7F
電話03-3227-1405 FAX03-3227-1406 MAIL:info@polepoletimes.jp
|トークショー
6月6日(水)18:30~20:00 本橋成一×伊勢功治(写真集「屠場」デザイナー)
※写真展会場にて・予約不要