川崎市民ミュージアム・シネマテーク・コレクション
日本のドキュメンタリーの系譜 vol.1
ドキュメンタリー映画は、一般的には「現実」「事実」をそのまま描いたものと思われがちですが、撮影する者と撮影される者/物があり、また撮影した映像を「編集する」という行為が介在する限り、ドキュメンタリー映画は限りなくフィクション映画に近づいていくと言えます。本特集では、当館の収蔵作品から日本のドキュメンタリー映画を取り上げ、戦前から戦後にかけての日本の歴史のダイナミックな動きを映像で知ると共に、ドキュメンタリー映画の方法論の変容をたどります。
※10月以降も「シネマテーク・コレクション」vol.2として引き続き開催
【開催日】2014年9月15日(月)以降の土日祝 ※9月20日(土)を除く
【会場】川崎市民ミュージアム
(JR横須賀線、湘南新宿ライン、南武線、東急東横線・目黒線武蔵小杉駅下車バス)
※アクセスはこちら
【料金】一般 600円 大学・高校生・シニア(65歳以上) 500円
小中学生・市民ミュージアム友の会会員 400円
幼児(未就学児)、障害者手帳・身障者手帳・療育手帳をお持ちの方およびその介助者1名、 被爆者手帳をお持ちの方 無料
スカラチケット(10枚綴り回数券・有効期限なし) 4,800円
2014年09月15日(月) 戦前戦後の動乱(1)
プロキノ作品集(白黒/16mm/44分)
山本宣治告別式(1929年/2分)、山宣渡政労農葬(1929年/12分)、第12回東京メーデー(1931年/7分)、土地(1931年/8分)、スポーツ(1932年/6分)、全線(1932年/9分)
◆1929年2月、プロレタリア文化運動の興隆の中で発足した映画制作団体・プロキノ(日本プロレタリア映画同盟)は、約5年の活動期間に当時の社会問題、労働問題を中心に50本を超えるドキュメンタリー・アニメーション映画を制作・上映した。現存する作品の中から6作品を上映。
13:00-
セレベス 海軍報道班員の記録版
(社團法人日本映画社/1944年/白黒/35mm/スタンダード/177分)
構成・監督・語り:秋元憲 撮影:小倉金彌+吉田勝亮+本間金資+前田実ほか
◆1942年、日本海軍はオランダ領セレベス島(現・インドネシア領スラウェシ島)の要衝メナドに奇襲攻撃を敢行。本作は、大本営海軍報道部の監修により、日本の領地となったセレベス島の地勢、習俗などを内地に紹介することを目的として作製された。
11:30-
信濃風土記より 小林一茶
(東宝文化映画部/1941年/白黒/35mm/スタンダード/27分)
監督:亀井文夫
◆亀井文夫が、俳人・小林一茶の句を読み解きながら厳しい信州の生活風俗を描く。痛烈な社会批判が込められた本作を、当時の文部省は「文化映画」として認定しなかった。
平和祈年都市ひろしま
(内外映画社/1948−49年/白黒/35mm/スタンダード/20分)
監督:秋元憲
ひろしま 産業の再建
(内外映画社/1948−49年/白黒/35mm/スタンダード/10分)
監督:秋元憲
◆被爆からの復興の実情を内外に伝えるため製作された作品。「平和祈年都市ひろしま」は当時の広島の風景に続き、復興計画を模型や絵で紹介。『産業の再建』は東洋工業(現マツダ)や宇品港の様子や、49年5月10日の広島平和祈念都市建設法の衆院可決の場面を収める。
生きていてよかった
(日本ドキュメントフィルム/1956年/白黒/16mm/スタンダード/48分)
監督:亀井文夫
◆1955年8月の第1回原水爆禁止世界大会で、被爆者救援運動の一環として企画された作品。急性白血病やケロイドなどに苦しむ被爆者たちの過酷な生活の実態にカメラを向けている。
世界は恐怖する 死の灰の正体
(日本ドキュメントフィルム=三映社/1957年/白黒/16mm/スタンダード/79分)
監督:亀井文夫
◆原水爆実験が生み出す“死の灰”の恐るべき実体を伝え、全世界の良心に訴える長篇記録映画。各大学、研究所の多くの科学者の協力により完成されたもの。
2014年09月23日(火・祝) 復興の時代
(日本ドキュメントフィルム/1957年/白黒/16mm/スタンダード/54分)
監督:亀井文夫
◆アメリカ軍立川基地の飛行場拡張をめぐり闘争する砂川の住民を記録したシリーズの第3作。
安保条約
(日本労働組合総評議会映画製作委員会/1959年/白黒/16mm/スタンダード/18分)
監督:松本俊夫
◆1960年の日米安保条約改定を前に、総評が打ち出した宣伝活動の一環として作られた作品。ショッキングな編集で構成された本作は激しい論争を呼んだ。
西陣
(京都記録映画を見る会+「西陣」製作実行委員会/1961年/白黒/16mm/スタンダード/26分)
監督:松本俊夫
◆京都・西陣。街の日常風景を積み重ねながら、閉塞し鬱屈した空間で黙々と機を織る職人の姿に、安保挫折後の空洞感や不在感が重ね合わされている。
絵を描く子どもたち—児童画を理解するために—
(岩波映画製作所/1956年/白黒/35mm/スタンダード/40分)
監督:羽仁進
◆図工教育を通じて子供たちの創造力をどのようにのばすかを描いた作品。小学校の教室に持ち込んだキャメラを子供たちの視線にさらして好奇心が薄れるのを待つという大胆な方法で、かつてないリアリティーが獲得された。
雪舟
(東京シネマ/1957年/カラー/35mm/スタンダード/20分)
演出:吉田正作
◆室町時代に日中両国で活躍した水墨画家・雪舟(1420-1506)の没後450年にあたって、雪舟の画風と作品を紹介する。
日本の舞踊
(岩波映画製作所/1960年/カラー/35mm/スタンダード/23分)
監督:羽仁進
◆黒島に残る原始的な舞踊から神社の巫女舞、大衆に広まった盆踊り、さらに典雅なものに発達した舞楽、絢爛たる歌舞伎、西欧の様式を採り入れた現代舞踊など、日本の舞踊の流れを描く。
2014年09月27日(土) 未知の領域への視線
標高8125米 マナスルに立つ
(毎日映画社+映配/1956年/カラー/35mm/スタンダード/98分)
監督:山本嘉次郎
◆ネパール・ヒマラヤ山脈に属する標高世界8位の山マナスル。数多の困難を乗り越えマナスル登頂に成功するまでの記録。山本嘉次郎は劇映画の脚本家・監督として著名。
14:00-
(毎日映画社+映配/1959年/カラー/35mm/スタンダード/84分)
構成:内田吐夢
◆南米、アルゼンチンとチリの両国にまたがるパタゴニア地方。チリ側の山岳地帯は人跡未踏の地である。その主峰たるアレナレス山登頂を目指す登山隊の記録。監督は『大菩薩峠』『宮本武蔵』などで「巨匠」と呼ばれた内田吐夢。
2014年09月28日(日) カワサキ・ドキュメント
川崎市上水道第四期拡張工事記録 滾々として尽きず
(毎日新聞社+七星映画社+木村プロ/1957年/白黒/35mm/スタンダード/27分)
監督:永富映次郎
◆水源を多摩川に依存している川崎市は、増大する水需要を睨んで、1941年に相模湖の表流水を市内に導水する一大事業を計画した。完成まで15年を要した第4期の導水事業を記録した作品。
川崎の水
(松崎プロダクション/1968年/白黒/35mm/シネマスコープ・サイズ/56分)
監督:関川秀雄
◆1965年、川崎の急激な人口増と東京の異常渇水対策として、新たに津久井湖からの導水事業が計画される。第7期の拡張計画の模様を記録した本作は、川崎市水道局が市民に水道事業の重要性をアピールする目的で企画された。
二十世紀梨を作る
(日活/1940年/白黒/35mm/スタンダード/26分)
監督:山本弘之
◆都市化が進んだ川崎で今もなお作られている二十世紀梨。多摩川沿岸で採れることから「多摩川梨」の名がついたこの梨の栽培の様子を、日活多摩川撮影所文化映画部が製作した。
都市化と文化財
(日映科学映画製作所/1972年/16mm/スタンダード/30分)
◆川崎市は京浜工業地帯の中枢を占める、日本でも屈指の産業都市だが、この地に数多くの有形無形文化財が伝え残されていることはあまり知られていない。市内に残る文化財を記録した作品。
川崎の養蚕と信仰
(川崎市/1990年/カラー/16mm/スタンダード/30分)
◆麻生区黒川の蚕日待(かいこひまち)を中心に記録したドキュメンタリー。蚕日待とは、講中の女性が集まって養蚕の神である「蚕影山(こかげさん)大神」をお祭りする行事。