【連載】ワカキコースケのDIG!聴くメンタリー 第7回『梵鐘』


 音読して味わってください、これが梵鐘の音だ


 さあ、ここまで引っ張って、ようやく内容に触れます。収録された梵鐘の音を、長くなってしまうが、お寺ごとに書き取ってみよう。




A面1 弘前 長勝寺梵鐘 (鎌倉)
    
カグゥトォーン

      全体に明るい。

A面2 羽黒山 三山神社〈健治の大鐘〉 (鎌倉)
    
ドゥズゥーン

      沈んだ響き。修験の山らしく、山伏の法螺も前後に聞こえる。

A面3 平泉 中尊寺梵鐘 (南北朝)
    ゴドゥルーン

      梵鐘の音は大体「ゴーン」と単純に言語化されるが、そのイメージに
      すごく近い。梵鐘らしいな、という音。

A面4 茨城潮来 長勝寺梵鐘 (鎌倉)
    
カングォーン

      打音はやや弱くて、音色が変りながら響くのが特長的、と聴こえた。

A面5 東京 浅草寺時の鐘 (江戸)
    パウワーン

      他と比べて、割と音色の走りが軽い。

A面6 神奈川海老名 薬師院〈旧相模国分尼寺鐘〉 (鎌倉)
    
トゥオオーンン

      後の響きが快い。

A面7 神奈川伊勢原 宝城坊(日向薬師)梵鐘 (南北朝)
    
ヴゥオーン

      らしい響きと思いつつ、どこか捉えどころない感じがあり、かえって
      印象的。

A面8 横浜金沢 称名寺梵鐘 (鎌倉)
    
カンポゥオーン

      打音の「カ」が耳に入った瞬間、違う音になる。その味わい。

 

B面1 鎌倉 円覚寺梵鐘 (鎌倉)
    
ボゥオゥオーン

      なんというか、ベーシックですね、という低音の落ち着きと貫禄。
      梵鐘は大きいほど音が低くなるそうだ。円覚寺のは口径
142.4cm。
      鎌倉時代を代表する巨鐘。なるほど。

B面2 鎌倉 建長寺梵鐘 (鎌倉)
    
ンゴオォォーン

      とても、耳にきもちよい。口径125.5cm。円覚寺と双璧を成す
      関東梵鐘の名作とのこと。鎌倉時代は梵鐘の歴史の最初のピーク。
      
本盤でも、ここが前半のハイライトかな。

B面3 鎌倉 長谷寺梵鐘 (鎌倉)
    
カゥルゥーン

      円覚寺、建長寺と比べて小さいのか、音が高い。
      その高音が硬くて軽やか。

B面4 静岡興津 清見寺梵鐘 (鎌倉)
    
トゥオウーン

      これも称名寺のように打音が瞬間に変わるところがいい。
      しかも、まろやかに。

B面5 愛知美浜 大御堂寺(野間大坊)梵鐘 (鎌倉)
    
ポォトゥワ~ン

      響きのゆれがとてもユニーク。

B面6 福井織田 剣神社〈神鐘〉 (奈良)
    
カゥォウォーン

      坪井先生はこの鐘について、奈良時代の作としては鋳あがりが
      拙劣で「田舎造り」と辛口なのだが、音は面白いよ。
      短いなかに、6つ位の音が一斉に聴こえる。

B面7 福井 永平寺〈嘉暦の梵鐘〉 (鎌倉)
    
パゥオウオオーン

      これも妙あり。明るく沈んでいく。スケール大きい。

B面8 大津 園城寺(三井寺)梵鐘 (室町)
    
ボゥドゥーン

      沈む系。品のよい気分。




C面1 京都高雄 神護寺梵鐘 (平安)
    
トゥムーン

      LPの2枚目から、いよいよ京都、奈良へ。
      これはなぜか音が小さい。周りの蜩も録れていて、夏の
      いい雰囲気なのだが、蜩のシワシワシワ……という鳴き声に
      呑まれちゃってる。録音の問題かな。

C面2 京都岩倉 大雲寺梵鐘 (平安)
    
パァウーン

      音の高い梵鐘をひとくちに「カーン」と表現する時の、その
      「カーン」のイメージにとても近い。

C面3 京都花園 妙心寺梵鐘 (平安)
    
カァァウーン

      これもそう。ほとんど「カーン」。でも違う。

C面4 京都東山 方広寺梵鐘 (室町)
    
ポォウロルーン

      銘文の「国家安康」が「家康」の名を裂いてる、悪意が
      ある!
と徳川サイドがイチャモンつけたことで知られる鐘。
      音に関係ないやね。
      鳴りが重なるというより、2つに大きく分かれながら
      響くような、ユニークな音。

C面5 京都東山 知恩院梵鐘 (江戸)
    
ボゥズズーン

      名鐘をよく研究した上で、よく出来ている。
      江戸モダン。そういう感じ。

C面6 京都宇治 平等院梵鐘 (平安)
    
ガゥオオゥーン

      装飾の華麗さにおいては歴代ベスト級、らしい。
      音のほうは、音の高い梵鐘を「ゴーン」とひとまとめにする時の、
      それに非常に近い。シンプルで深みがある。

C面7 京都笠置 笠置寺〈解脱鐘〉 (鎌倉)
    
ポゥウワーン

      なんてことないようだが、きもちいい。
      録音では小鳥のさえずりも入っていて、それがまた。

C面8 奈良斑鳩 法隆寺西院の鐘 (奈良)
    
ンガォウーン

      坪井先生曰く「鋳造の技術極めて拙劣」。
      音は実に堂々とふつうの梵鐘、の印象。これといった特長ない。
      それゆえ、実はこれが本盤の中では一番かな……という気がしてる。
      そこを句に読んだのが正岡子規。分かってるじゃーん。

 

D面1 奈良 東大寺大仏鐘〈奈良太郎〉 (奈良)
    
カゥズオウーン

      シンプルで、なおかつスケールがあり、深みの湛え具合ももほどよい。
      修学旅行のマスト、ベタな存在の東大寺がよその音色と比べても堂々と
      良いってのは、なんか嬉しい。ザ・ビートルズみたい。

D面2 奈良 新薬師寺梵鐘 (奈良)
    
ゴトゥゥオゥーン

      小振りだけど、澄んでいる。

D面3 奈良五条 栄山寺梵鐘 (平安)
    
パゥアウーン

      打音がとても華やか。

D面4 吉野山 金峯山寺〈旧世尊寺鐘(吉野三郎)〉 (平安)
    
ポェウェーン

      地味ながらやさしい響き。好み。

D面5 加古川 尾上神社〈尾上の鐘〉 (朝鮮新羅朝)
    
ンカゥアーン

      「日本の伝統 音に残された日本人の美意識」と帯で
      謳いつつ、朝鮮から輸入され、お手本となった鐘をちゃんと
      紹介しているのは、本盤の好ましい見識。高くて「カーン」の
      1音にかなり近い。
      (歴史ドラマなどでしか聴いたことはないけど)大陸の鐘の音だなあ、
      と思う。

D面6 高松 屋島寺梵鐘 (鎌倉)
    
ンカトゥウーン

      シンプルな良さを続けて聴いた後もあり、ニュアンスが
      すごくあるので感心する。
      やっぱり総合的には鎌倉時代の梵鐘が最もレベル
高い。

D面7 大宰府 観世音寺梵鐘 (奈良)
    
ポゥゥォーン

      聴こえるのは1音に近い。品が良い。

D面8 福岡早良 西光寺梵鐘 (平安)
    
タゥワァォ~ン

      明るくて若々しい。残響の波が豊か。

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