【列島通信★山形発】保存と発信、その先へ ~YIDFF「311ドキュメンタリーフィルム・アーカイブ」開設 text 畑あゆみ

311ドキュメンタリーフィルムアーカイブ・ウェブサイト

今回は、この秋なんとか開設を迎えることができた「311ドキュメンタリーフィルム・アーカイブ」と、先月末に山形で開催した開設記念シンポジウムについてご報告したいと思う。このアーカイブプロジェクトは、企業メセナ協議会GBファンドなど二カ所からの助成を得、前回の山形国際ドキュメンタリー映画祭2013の震災映画特集「ともにある Cinema with Us」コーディネーターを務めてくださった小川直人さん、ウェブサイト・データベースの製作を担当してくださる地元天童市のウェブデザイナー村山秀明さんをワーキングチームに迎えて今年の春から本格的に始動し、ようやくこの度、形にすることができた。

まずは、このアーカイブの概要について簡単にご説明したい。

山形映画祭によるこの「311ドキュメンタリーフィルム・アーカイブ」は、一般公開用に製作された東日本大震災に関わるあらゆる記録映画を収集・保存するプロジェクトで、アーカイブの拠点は山形市平久保にある山形ドキュメンタリーフィルムライブラリーにある。製作者・権利者の同意を得た作品について、完成版上映用素材をこのライブラリーの収蔵庫に保存する一方で、来館者はライブラリー館内に限り作品の視聴用DVDや製作・宣伝資料を閲覧することができる。また特設ウェブサイト yidff311docs.jp 上では、日英両言語でそれらの作品の詳細を紹介している。プロジェクトの第一段階として、過去2回のYIDFF上映作品および応募作品を中心に、その製作者にアーカイブ参加を呼びかけ、これまでのところ海外作品も合わせ60作品ほどの同意を頂いている。そして既に先月から、海外からリサーチにきている研究者がこのアーカイブを訪れ、論文や批評で取り上げるためいくつかの作品の視聴をし、監督へのインタビューなども行なっていて、利用の動きも活発だ。現在までで総計で200本以上の震災関連作品が国内外で作られており、今後もあらゆる関連作品に対し参加を呼びかけていく予定である。

そもそも、震災の記録映画をアーカイブ化してはどうか、という話はYIDFF2011の特集上映「ともにある Cinema with Us」開催直後から出ていた。言うまでもないことだが、震災によって引き起こされた事象にさまざまな切り口で迫り、貴重な映像や肉声、対話に満ちた記録映画も、他の大規模アーカイブで精力的に収集されている文書、写真、音声、動画などと同様に、国内外の人々や未来の世代へ受け継ぎ、防災や研究につなげていくべき大切な文化資源である。ここ数年は、こうした記録映画も、各国の映画祭や自主上映会等での上映が続いているため、作品情報へのアクセスも比較的しやすいが、その後、たとえば10年後、20年後にこれらの作品を目にする機会が少なくなるのは、やはり避けられないだろう。また、上映素材や記録メディアの技術革新が著しい昨今、数年後に現在の上映・視聴形態が維持されているかどうかは誰にも予測できない。そうした上映状況への対応を含め、作品とその情報を一元化し保存に努めるアーカイブが一定の役割を果たすことができるのではないかと考えている。

そしてこのアーカイブの果たす役割のもう一点は、情報の発信による上映機会の促進だ。映画祭事務局は、YIDFF2011直後から、「ともにある」上映作品についての国内外からの問合せに対応し続けてきたのだが、今回オンライン・データベースを作成し情報を日英の二言語で開示することによって、どんなテーマの映画が、誰によって作られ、どのような上映が可能かといった情報を、海外でもオンライン上で容易に知ることができるようになった。今後このデータベースが、製作者と上映者、見たい人々とを直接つなぐ場、情報が出会う場としてどんどん活用されていくことを期待している。また製作者側にとっては、フリーで国内外に作品の宣伝が行なえるというメリットがあるので、製作者の皆さんは、映画祭によるこのアーカイブプロジェクトを広報媒体の一つとしてぜひ積極的に活用してほしい。

さて、去る11月29日(土)に、このアーカイブの開設を記念し、山形の東北芸術工科大学にて「映画は震災のなにを残し、伝えられるのか」と題したシンポジウムを行なった。これはアーカイブのお披露目・報告会であると同時に、震災と記録映画について広く継続的に考える、YIDFF 2011「ともにある」初回から続くディスカッションシリーズの3回目でもある。

前回のYIDFF2013でアーカイブ構想を公にしてからは、とりわけ、震災に関わる映画を残していく意義と難しさ、その展望について、識者から話を伺い、参加者の皆さんと考えてきた。今回はワーキングチームの小川さんを司会に、社会学者の開沼博さん、阪神大震災を記録しつづける会事務局長で被災者による手記の保存事業に関わっておられる大阪大の高森順子さん、そして映画祭に縁の深い映画学者の阿部マーク・ノーネスさんを迎え、それぞれの研究分野からこのアーカイブが今後取り組んでいくべき課題を提起していただいた。以下、イベントのレポートと感想を手短に記しておきたい。

11/29アーカイブ開設記念シンポジウムより(左より:小川直人さん、高森順子さん、開沼博さん、マーク・ノーネスさん)

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