【連載】開拓者(フロンティア)たちの肖像〜 中野理惠 すきな映画を仕事にして 第51話 第52話

世界遺産に登録された韮山反射炉 © photolibrary 

開拓者(フロンティア)たちの肖像〜

中野理惠 すきな映画を仕事にして 

第52話 地元・韮山反射炉の世界遺産登録

<前回 第51話 はこちら>

世界遺産登録

韮山の反射炉が2015年に、<明治日本の産業革命遺産 鉄鋼・製鋼、造船、石炭産業>の一つとして世界遺産に登録されたのである。韮山の反射炉は、江戸時代、伊豆代官だった江川太郎左衛門坦庵公が建立し、日本で唯一残っている稼働した反射炉であった。初めて行ったのは小学校の遠足だったと思うのだが、高校生になってからは、時々、山沿いの小道を歩いて行った。当時、観光客はほとんどいなくて、坦庵公は<パン祖>(1842年に日本で始めパンを焼いたことからこのように言われている。焼いたパンは乾パンのように少し硬かったようだ)でもあったのだが、その解説がひっそりと建つ周囲で、お茶農家がのんびりと茶畑の面倒をみていた。

ビッグニュースなのに・・

韮山町は、<平成の大合併>により2005年、伊豆長岡町と同じ伊豆の国市を構成する三町の一つになっていた。世界遺産登録、とはビッグニュースである。しかも、最寄り駅は韮山駅ではなく伊豆長岡駅なのである。訪れる人が増え新たな町になってゆくのだろう、と思ったが、登録後に帰省すると目に入ってきたのは、それ以前とあまり変わらない駅頭ではないか。

ほとんど宣伝をしていないような・・

B全ほどのポスターが三島駅や伊豆長岡駅にはそれぞれ一枚貼られていたのだが、さほど、目立たず、しかも駅頭には<反射炉はこちら>などの誰にでも目に付くような案内板や地図が見当たらない。田んぼの中を走る三両編成の電車から反射炉が見えるのに、伊豆箱根鉄道線車内でのアナウンスが車掌により異なり、反射炉が全くアナウンスされないこともあった。この3月にお彼岸で帰省した際も、駅頭で困っている人がいたので、ついお節介魂が出て、道案内をしてしまった。

欲がない

ああ、やっぱり伊豆だ。一言でいうと<欲がない>。がっかりもするが、いいなあ、との感想の方が大きい。

とにかく面白い映画と出会った

さて、郷里の宣伝はこの程度にして、映画の話題に戻る。2003年11月の東京フィルメックスで、とにかく、面白い、としか言いようのない映画と出会った。見た後、同業者数人と、有楽町で語り合った記憶が残っている。だが、これまでのパンドラ作品とは全く異なる作風なので、一瞬、躊躇した。

(つづく。次回は8/15に掲載します)

中野理惠 近況
つい先日、所用で帰郷したところ、ホームを始め駅には世界遺産について目立つように大きなポスター
が各所に貼られていました

来年公開予定の作品で角川大映スタジオへ。入口に立つ大魔神と共に。

大魔神の前で