【News】7/27に伝説復活! 黙壺子フィルム・アーカイブ トリビュート


安岡卓治氏と柳下毅一郎氏のトーク×アングラ映画覆面上映……あやしいプログラムで、没後25年の佐藤重臣を追善

黙壺子フィルム・アーカイブ
トリビュート


7月27日(土)18:00~
明大前の小劇場・宇宙館 http://wuchukwan.web.fc2.com/top.htm
入場料金1,700円









【企画者からのメッセージ】

〈黙壺子〉が復活する! あのアングラ映画の殿堂〈黙壺子フィルム・アーカイブ〉が!! 佐藤重臣没後25年を経て、復活するのだ!!! とビックリマークを何個つけても足りないほど、これは血湧き肉躍る事件である。そう、一部アングラ者にとって…。

では、一部アングラ者でない人のために解説しよう。まず、〈黙壺子〉は〈もっこす〉と読む――、と書いたところで、早くも困ってしまった。ちゃんと解説するとなると、「その昔『映画評論』という雑誌がありまして…」などと、歴史のお勉強になっちゃうからだ。ええいっ、その辺は小林信彦に任せちゃえ。

「〈なにか変な映画〉に執着していた重臣は、やがて、自分の資質を生かす時代にめぐり合った。一九六五年に「映画評論」の編集長になり、アンダーグラウンド映画、演劇の仕掛け人になる。〈アングラ〉という日本語を創ったのが誰かは知らないが、普及させたのは重臣で、学生反乱の季節とぶつかり、〈アングラ・サイケ時代〉が現出した。マイナー批評家佐藤重臣は、一躍、教祖的存在になる」
 (「コラムは笑う:エンタテインメント評判記1983~88」小林信彦・ちくま文庫より)

そんなサトージューシンだが、時代は変わり、「映画評論」も75年に休刊。
んが! 〈黙壺子〉が始まるのはここからだ。海外に出かけては、作家本人から直に16ミリフィルムを買い付けては断続的に上映会を開いていた重臣は、70年代後半から〈黙壺子フィルム・アーカイブ〉の名のもと、それを定期的に開催するようになる。まだミニシアターといえば岩波ホールぐらいしかなかった時代、(東京では)パイプ椅子を並べて16ミリ映写機で映画を見せる自主上映会が数多あった。多くの映画ファンはそんなところで、古典的名作(「カリガリ博士」とか)や未公開のヨーロッパ映画(最近話題のファスビンダーとか)を、日本語字幕なしのプリントで見ていたのだ。なかでも〈黙壺子〉は〈アングラ映画〉が特徴で、観客は裏通りにある倉庫みたいな会場で、〈なにか得体のしれないもの〉を見ては、興奮したり後悔したりしていたのだよ。

〈黙壺子〉といえば「フリークス」と「ピンク・フラミンゴ」。今ではサブカル者のマストアイテムかもしれないが、当時はロクな情報もなく「なんか、スゴイらしい」という雲をつかむような評判だけでおっかなびっくり見に行ったら本当にスゴすぎて、脳みそが情報を処理しきれないため何度も見に行くはめになって人生を誤ったひとは数知れず。と、日本語が変になるほどの体験だったわけだ。実際、雲(古)をつかむわけだし。

この二本はまだいい。一応ストーリーがある長編映画だから。短編には、ピカピカチカチカしているだけとか、グチャグチャなだけとか、エロいだけとか、何が映っているか分からないとか、そんな映画が盛り沢山。情報誌にはタイトルや監督名は書いていても、映画専門誌にすら満足な情報が載らない時代。人づてのうわさ話だけを頼りに、ドキドキしながら見に行っていたのだよ、人びとは。その辺は大槻ケンヂ「変な映画を観た!!」(ちくま文庫)あたりを参照のこと。

つまり〈黙壺子〉というのは、例えば小津を観に行くとか「市民ケーン」を観に行くという場所ではなく、怪しげな雰囲気をまるごと体験しに行く場所だったのだ。「悪所」というか「礼拝殿」というか、まあそんなとこ。知らなくても観る。つまらなくても観る。それが大槻ケンヂ言うところの「自分学校」だ。

それが甦る! といっても、いまの時代に本当に甦るわけはない。まあ、あの頃のほんの数%でもいいから、残り香を再生させたい、という悪あがき。そのため、会場は70年代後半に実際に〈黙壺子〉が開催されていた由緒正しい小劇場・宇宙館(明大前)。トークゲストは、実際に〈黙壺子〉で映写機を回していた安岡卓治氏と、実際に観客だった柳下毅一郎氏。〈黙壺子〉を語るに、これほどふさわしい人材はいない。当時の観客は再確認、当時を知らない若人はバーチャル体験。いずれにしろ、裏舞台が明らかになる、かも!?

そうは言っても世知辛い世の中、やっぱり上映作品がわからないとね、というのも、人情として理解できる。というわけで上映作品は、当時実際に上映されていた作品で、現状DVDのレンタルはなく、(たぶん)YouTubeにも上がっていないもの、とだけ言っておく。少なくともここ10年ぐらいは、東京では上映されていない、はず。さらに、超貴重映像のオマケ上映も!

7月27日(土)18:00~、明大前の小劇場・宇宙館にて。1,700円。
Twitterアカウントは@ludned。

text by ラッドネッド