【News】2/7(土)-11 (日) 第6回 座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバルの見どころ

今回の特集上映のテーマは「闘い」です。

ドキュメンタリーは本来、“社会”や“権力”、そして“自分自身”への闘いだと考えます。
思えば、戦後ドキュメンタリーの歴史は作家たちの闘いの軌跡であったかもしれません。政治的な闘争の場に身をおき、取材対象者とともに戦った作家もいれば、その“表現”において、あくなき闘いを繰り広げてきた作家もいます。
戦後70年の節目を迎えるなか、高円寺ドキュメンタリーフェスティバルでは、今、あらためて「ドキュメンタリーにできることは何か?」を考えたいと思います。

“闘い”をテーマに選んだ作品は10作品。沖縄やパレスチナ、広島・長崎、安保条約、原発の被害や東日本大震災など、テーマは様々ですが、どの作品にも、作り手の苦闘の跡が見られるものばかりです。 特に牛山純一氏の「ノンフィクション劇場 水と風」は3年越しの上映となり、その表現をめぐって、今も賛否両論が交わされている作品です。ドキュメンタリーでどうしても伝えたいことがあるとき、“やらせ”と言われるような演出を行ってもいいのか? 当時現場にいた森口豁さんと、フィクション×ノンフィクションの越境的作品を作り続ける松江哲明監督に参加してもらい、演出の可否や、「見つめるべきか?手を差しのべるべきか?」など、ドキュメンタリーの現場で起こりうる様々な問題について、議論を行ないます。

また、映画監督や作家、俳優など、ドキュメンタリーを愛する著名人の「セレクター」が作品を選び、共に観てトークをする『ゲストセレクション』では、今年も7名の方々に作品を選んでいただきました。俳優・井浦新さんや映画監督の是枝裕和さん、西川美和さん、作家の柴崎友香さんなどが、自身にとって忘れられないドキュメンタリー作品について、客席を交えトークを行います。

牛山純一『水と風』(資料提供:川崎市市民ミュージアム)

以下、今回のプログラムの見どころを、簡単ですがご紹介します。

■2月7日-10日   特集上映・ゲストセレクション

◆昨年11月に逝去された大津幸四郎さんが、沖縄を撮った『ゆんたんざ沖縄』。図らずも追悼上映となってしまいましたが、なかなか上映機会のない秀作であり、辺野古移設など現在に続く沖縄問題とドキュメンタリーがどう関わってきたのか、プログラム・コーディネーターの山崎裕が、熊谷博子さんとトークを展開します。

『壊された5つのカメラ〜パレスチナ・ビリンの叫び~で登壇されるのは、1970年代からイスラエル、パレスチナに通い続けているフォトジャーナリストの広河隆一さんです。本映画祭の直前にもパレスチナ入りされた広河さんから、当地の最新状況についてもお話しを伺います。

◆井浦新さんセレクション『赤軍―PELP・世界戦争宣言』は、井浦さんが恩師と呼ぶ故・若松孝二監督が、1970年代初頭のベイルートで重信房子氏を取材したドキュメンタリーです。共同監督として現場にいた足立正生監督とともに、当時の話などを伺います。

◆東海テレビ制作の『神宮希林 わたしの神様』は、出演の樹木希林さんも参加し、是枝裕和監督とともにトークを行います。劇映画では是枝組の常連である樹木さんと、フィクション/ノンフィクションを股にかける是枝監督とのドキュメンタリー談義は注目です。また是枝監督が注目するのは、テレビで放送された作品の劇場公開を続ける東海テレビの阿武野勝彦プロデューサー。地方局からドキュメンタリーを発信し続ける原動力について、トークを展開します。

◆滅多に観ることができない、中国のインディペンデント・ドキュメンタリー映画。傑作『私が死んでも』(胡傑監督 日本未公開)を上映します。映画を作ること自体が“闘い”でもある中国の映画界の状況について、中国のインディペンデント映画に詳しい中山大樹さんにお話を伺います。

■ 2月11日 コンペティション部門 上映

当フェスティバルでは、新しい才能の発掘を目指して、第1回目からコンペティション部門を設け、ドキュメンタリーを公募しています。入賞作品は、フェスティバルの期間中に上映し、審査員の討議によって「大賞」1作品を選定します。本年は、50本の応募作から、予備選考で4本の入賞作品が決定し、2月11日(水)に一挙上映されます。

審査員:佐藤信、橋本佳子、松江哲明、ヤン・ヨンヒ、渡辺考、安岡卓治

■ 2月11日 18:00開催 シンポジウム 

 また当フェスティバルでは一昨年より、作り手たちによるシンポジウムを開催しています。今年のテーマは、特集上映にちなんで「ドキュメンタリーは今、何と闘うのか?」です。

数多くのドキュメンタリーを制作してきた田原総一朗さんをプレゼンターに、『ゆきゆきて、神軍』の原一男監督、TBS「報道特集」の記者・金平茂紀さん、大反響を呼んだ映画『標的の村』監督の三上智恵さん(元琉球朝日放送アナウンサー)、ご自身の状況を『ディア・ピョンヤン』などで映画化したヤン・ヨンヒさん、『もういちど作りたい〜テレビドキュメンタリスト・木村栄文』など、NHK特集番組のディレクターである渡辺考さんが登壇します。現在のマスメディアやドキュメンタリー番組の、権力に対する及び腰な姿勢についても、自己反省を含め、取り上げたいと思っています。

今回、初の試みとしてドキュメンタリーの若き作り手たち、またドキュメンタリーを志す学生たちにも参加してもらい、“いま本当にドキュメンタリーは闘えているのだろうか…”という問題についても、危機意識をもって活発な討論を行いたいと考えています。


【プログラム概要】

第6回 座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバル

【日程】2015年2月7日(土)〜2月11日(水)
【会場】座・高円寺2(JR高円寺駅北口より徒歩5分)
    〒166-0002 杉並区高円寺北2ー1ー2 地下2F  
【料金】当日1500円 (2/11は入れ替え自由) 

【主催・問い合わせ】
「座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバル実行委員会」

(株)ドキュメンタリージャパン内 tel 03-5570-3551
http://zkdf.net
         

【スケジュール】
※作品の詳細は公式サイトをご覧下さい

◎2月7日(土)
11:00 特集・追悼大津幸四郎 『ゆんたんざ沖縄』
    トーク:山崎裕(カメラマン)×熊谷博子(映画監督)

14:00   諏訪敦彦セレクション 『夜と霧』『ゲルニカ』『黒髪』
    トーク:諏訪敦彦(映画監督)

16:15    特集・パレスチナ 『壊された5つのカメラ〜パレスチナ・ビリンの叫び〜』
    トーク:広河隆一(ジャーナリスト)

19:00 西川美和セレクション『クローズ・アップ』
    トーク:西川美和(映画監督) 

◎2月8日(日)
11:00  特集・牛山純一『水と風』『反骨の砦』※上映のみ無料
     トーク:森口豁(ジャーナリスト)×松江哲明(映画監督)

13:30     特集・詩人と震災『語りえぬ福島の声を届けるために〜詩人及川俊哉 現代祝詞をよむ〜』
     トーク&詩の朗読会:和合亮一(詩人)×及川俊哉(詩人)

16:00    井浦新セレクション『赤軍 —PFLP 世界戦争宣言』
     トーク:井浦新(俳優)×足立正生(監督)

18:45  是枝裕和セレクション『神宮希林 わたしの神様』
     トーク:是枝裕和(映画監督)×阿武野勝彦(プロデューサー)×樹木希林(俳優) 

◎2月9日(月)
11:00 特集・ヒロシマ『HELLFIRE 劫火 〜ヒロシマからの旅』
     トーク:ジャン・ユンカーマン(監督)

13:30    特集・胡傑(フー・ジェ) 『私が死んでも』※日本未公開
     トーク:中山大樹(中国インディペンデント映画祭主催)

16:00   吉岡忍セレクション『赤紙配達人〜ある兵事係の証言〜』※上映のみ無料
    トーク:吉岡忍(ノンフィクション作家)×金沢敏子(ディレクター)

19:00   森達也セレクション『アイ・ウェイウェイは謝らない』
    トーク:森達也(作家・映画監督) 

◎2月10日(火)
11:00 特集・松本俊夫『銀輪』『安保条約』『白い長い線の記録』
    トーク:筒井武史(映画監督)※松本俊夫インタビュー動画を上映       

13:30    特集・土本典昭『少年は何を殺したか?』『市民戦争』
    トーク:山根貞男(評論家)×代島治彦(『三里塚に生きる』監督)

16:30    特集・メディアと原発『変身―Metamorphosis』
    トーク:堀潤(監督)

19:00 柴崎友香セレクション『ニッポンの、みせものやさん』
    トーク:柴崎友香(作家)×奥谷洋一郎(監督)

◎2月11日(水・祝)
10:00 コンペティション部門入賞作品 上映 ※入れ替え自由
    10:00 『沖縄/大和』
    12:10『ヘイトスピーチ』 
    14:00『風和里〜平成の駄菓子屋物語〜』
    15:40 『イラク・チグリスに浮かぶ平和』  
18:00 シンポジウム『ドキュメンタリーは今、何と闘うのか?』
 田原総一朗(プレゼンター・ジャーナリスト)×原一男(監督)×金平茂紀(記者)
 ×三上智恵(監督)×ヤン・ヨンヒ(監督)×渡辺考(NHKディレクター) 
20:00 表彰式&入賞者トーク&閉会式