【Review】孤独だったそれぞれの時間、響き渡る夜明けの声ーー『東京組曲2020』 text 井河澤智子

あの頃、あなたは、どう過ごしていましたか── 新型コロナウィルスの流行により、「普段の生活」が失われたあの頃。 「新しい生活様式」という旗印の下、人々は集うことも語り合うことも、触れ合うことも顔を見せることもない生活を送

【Review】残虐と隣り合わせのユーモア、あるいは「どうしてこうなったか」について――『ドンバス』 text 井河澤智子

『国葬』(2019)『粛清裁判』(2018)『アウステルリッツ』(2016)と、近年立て続けに作品が公開され、注目を集める映画作家、セルゲイ・ロズニツァ。  第71回カンヌ映画祭《ある視点》部門で監督賞を受賞した『ドンバ

【Review】おやすみなさい、よい夢を――『ふゆうするさかいめ』text 井河澤智子

今、私は「眠ること」に対しての困難を抱えながら、これを書いている。 自らの内でコントロール不可能な「眠り」=不眠に悩まされながら、毎日を過ごしている。 いったい、眠りとは、なんなのだろうか。 日々の疲れを癒やすもの。ある

【Review】ふたつのキン・ザ・ザーー『クー!キン・ザ・ザ』 text 井河澤智子

フォースと共にあらんことを。 長寿と繁栄を。(人差し指と中指、薬指と小指をくっつけ、中指と薬指と親指を開き、相手に手のひらを見せつつ) そして 中腰ガニ股、頬をパンパンと叩き、両腕を下ぎみに開いて 「クー!」 筆者が勝手

【Review】そして、季節は巡りゆく――『夏時間』text 井河澤智子

 これは、「家」をめぐる物語。  建物としての「家」。そして、「家族」という意味の「家」。  家は、家族を包み込む。  これは、ある夏の、ある家の物語。  第24回釜山国際映画祭でGDK賞他4冠をはじめ、第49回ロッテル

【Review】大阪行ったり来たり――リム・カーワイ『カム・アンド・ゴー』 text 井河澤智子

 まさに今後の大阪市の運命が決まるというその夜に、平成最後の大阪の春を描いた映画が東京で上映された。  そして、上映終了後すぐ、その結果が報じられた。大阪市、存続、と。  コロナ禍により、他の映画祭が中止あるいはリモート