【特集】DDS2012×neoneo ヤマガタ人気投票プロジェクト関連企画「ヤマガタ・わたしのリクエスト」


「去年、山形までは足を運べなかったなあ」と嘆いておられる皆さん。
山形で見逃したあの作品、もう一度見たいあの傑作。
今年もやります、山形国際ドキュメンタリー映画祭の東京巡回上映!

今回はなんとDDS2012とneoneo webのタイアップ企画として、上映作品のうち3本を当サイト上のファン投票にて決定。投票はこちらのページから!!
公式サイト http://www.cinematrix.jp/dds2012/


 ★ 関連企画

山形国際ドキュメンタリー映画祭・わたしのリクエスト

ヤマガタ人気投票プロジェクトに関連して、山形映画祭にゆかりのある映画作家、批評家、業界関係者による「わたしのリクエスト」を公開。たくさんありすぎてどれに投票していいのかわからない! そんな方はぜひこれら「ヤマガタソムリエ」たちおすすめの一品に一票を投じてみてはいかがでしょう。随時更新します。


渡辺真起子 女優

『包囲:デモクラシーとネオリベラリズムの罠』
監督:リシャール・ブルイエット
カナダ/2008/フランス語、英語/160分
◎作品紹介はこちら

2009年にぶらりと伺った山形。すでに最終日で、たくさんの作品を拝見することはできませんでした。『包囲』はその時に観れず、どうしても気になって、後にカナダ大使館での受賞記念試写で拝見しました。
語り手を選び抜いて構成されたインタビュー・ドキュメンタリー作品として、緊張感が高く、とても引きつけられました。そして、ふとした時に湧いてくる、新自由主義への疑問が少し整理されたように思えました。
「自由」って危ない言葉です。

未見だけど観てみたい作品がたくさん。

『頑固な夢 Stubborn Dreams』
監督:ソボリッチ・ベーラ
ハンガリー/1989/ハンガリー語/カラー/93分
作品紹介はこちら

ハンガリーの小さな村ラーバジャルマトで続いている、70年にも及ぶ演劇サークルの活動。観てみたい。

 ―

『特権』
監督:イヴァンヌ・レイナー
アメリカ/1990/英語/103分
作品紹介はこちら

歳を重ねることの面白さを、心身を持って絶賛体感中の今日この頃です。
女性としていきることで、社会や、女性自身の心身の変化、年齢ごとの変化、それもまつわる周辺の変化をどう受け止めて過ごしていくのだろうか、とても興味深いです。

 ―

『シックス・イージー・ピーセス』
監督:ジョン・ジョスト
アメリカ、イタリア、ポルトガル/2000/英語、イタリア語、ポルトガル語/68分
作品紹介はこちら

とにかく、拝見してみたいです。

ちょうど、「山形in東京」開催中の時期は出演作『ギリギリのおんなたち』の公開をユーロスペースでやっとります。


ジャン・ユンカーマン 映画監督

『Z32』
 監督:アヴィ・モグラビ
イスラエル、フランス/2008/ヘブライ語/カラー/35mm(1:1.85)/85分
◎作品紹介はこちら

この作品はヤマガタで上映される多くの優れた映画の中でも傑出している。戦争犯罪と個人責任、アイデンティティと過去に対する誠実な内省が絡み合う、複雑な編み目に取り組む。同時に、映画作品に登場する人物の描写に映画作家が担うべき責任や、その人格を覆すことの二面性についても言及する。見る者を挑発する作品で、再度見られる価値のある映画だ。


村山匡一郎 映画評論家/YIDFF予備選考委員

『その昔7人のシメオンがいた』
監督:ヘルツ・フランク、ウラジミール・エイスネル
旧ソ連/1989/ロシア語/モノクロ/35mm(1.33)/89分
◎作品紹介はこちら

 ドキュメンタリーとは悲劇的な出来事と相性がいいのか。その悲劇的な出来事と向かい合うドキュメンタリー作家の心の内ではいかなる感情の葛藤があるのか。そんなことを思わずにはいられない作品である。監督が3年前に撮ったシベリアに暮らすジャズ・バンド一家の幸せそうな家族。3年後、一家はハイジャックに失敗して自滅の途をたどる。明るく朗らかな両親と7人の息子たちの姿を描いた前半と、空港で爆破された旅客機の残骸やその後の裁判を描いた後半。その著しいまでの落差からは、3年間で一家に起きた変化の謎もさることながら、悲劇的な出来事に対峙するドキュメンタリー映画が本質的に抱え込む「撮ること」の相克が浮き上がってくるようだ。


稲田隆紀 映画評論家/YIDFF予備選考委員

『包囲:デモクラシーとネオリベラリズムの罠』
 監督:リシャール・ブルイエット
カナダ/2008/フランス語、英語/モノクロ/ビデオ(ブルーレイディスク、DVCAM)/160分
◎作品紹介はこちら

山形国際ドキュメンタリー映画祭にはいつも発見がある。ロバート・クレイマーの『ルート1』やフレデリック・ワイズマンの諸作品、エディ・ホニグマンにリティー・パニュ、ワン・ピンの作品群まで数え上げるだけで紙数が尽きる。したがって、1本を選ぶのは難しい。3時間余の全編、ひとりの女性が自らの軌跡を語り尽くす『鳳鳴(フォンミン)―中国の記憶』を挙げたかったが、すでに推薦されているということで、新自由主義という経済優先主義の罪を語り尽くしたインタビュー・ドキュメンタリー『包囲:デモクラシーとネオリベラリズムの罠』を選んでみた。まさか大賞に輝くとは思っていなかったが、ここで語られることは現在の世界を覆っている状況を理解する意味でも有用である。


山口 敦 デザイナー(YIDFF東京事務局周辺)

『スクリーンプレイ:時代』
監督:ヴィンフリート・ユンゲ、バーバラ・ユンゲ
ドイツ/1993/ドイツ語/カラー、モノクロ/35mm(1.33)/284分
◎作品紹介はこちら

シュタージも密告者も出てこない東ドイツ(壁は出てきます)。教室にいた子どもたちも30年たてば皆そろって中年になるという、あたりまえだけど胸にせまる話。──昨日の壁より今日の雨(忘れがたいドシャ降りのシーンがあります)。
わかりやすく丁寧に描かれた場面の積み重ねを見つめているうちに、最後には30年という年月そのものに心を動かされている自分に驚きました。この映画は、撮影される子どもたちと同じ時間を生き、同じように時代の変化に巻き込まれていく普通の働くおじさん&おばさんのような監督たちだからこそ可能だった作品かもしれません。ところで、さっき調べたらドイツ統一後も10数年間この撮影は続けられていてDVD18枚のセットが出ていました(『Die Kinder von Golzow—Alle Filme 1961–2007』)……普通じゃないかも。


阿部マーク・ノーネス ミシガン大学教授

『鉄西区』
監督:王兵(ワン・ビン)
中国/2003/中国語/カラー/ビデオ(DVCAM)/545分
◎作品紹介はこちら

中国ドキュメンタリーのほとんどが長すぎるというのは事実ですが、王兵の『鉄西区』の長尺にはその価値があります。この作品は何か摩訶不思議で夢想的で、それはポスト工業化時代の風景を撮影する王兵の技に因るばかりでない。結局は、映画の心臓部で、ゆっくり規則的に打ち続けるビートがなせることなのです。しかし観客の魂をこのビートにシンクロさせるには、この作品は<一日>で鑑賞されねばなりません。何時間か経ないと生じない夢見心地のハイは、4時間目、5時間目に入ると催眠術のように観客を捕らえます。日がとうに暮れた後、映画の終盤に至っては、あまりに奇妙だった旅路に感嘆を覚えるでしょう。


矢野和之 山形国際ドキュメンタリー映画祭東京事務局

『ワイルド・ワイルド・ビーチ』
 監督:アレクサンドル・ラストルグエフ、ヴィタリー・マンスキー、スサンナ・バランジエヴァ
ロシア、ドイツ/2006/ロシア語/カラー/ビデオ(DVCAM)/125分
作品紹介はこちら 

傑作は別として、何故こんな作品が入っているの?とも言える珍品『ワイルド・ワイルド・ビーチ』を推薦しよう。黒海の海岸にひと夏集う人々の生と性を赤裸々に描く、そのハチャメチャな猥雑さ!プーチンまで出てくるのには笑った。眉を顰める向きもあるでしょうが、、、。昨年の中では『阿仆大(アプダ)』と『殊勲十字章』が出色、上映しますので是非ご覧ください。


藤岡朝子 山形国際ドキュメンタリー映画祭東京事務局ディレクター

『彼女の墓に花をそえるのは私』
 監督、撮影、編集、製作:ハーラ・アルアブドッラー、アンマール・アルベイク
 シリア/2006/アラビア語/モノクロ/ビデオ/110分
◎作品紹介はこちら

 ヤマガタで上映された2007年から5年後の今、シリアは政府軍と反体制軍の交戦が続く内戦状態となっている。アサド政権の弾圧で故郷を追われ、異国で30年間過ごしてきた監督と夫の画家は、今どんな気持ちでニュースを見ているだろうか。私はこの映画を大画面で見ていない。「なんじゃこりゃ?」の声も聞いた。でも状況説明を一切試みない大胆さ、瞬間瞬間に瞬く感情の記述、女性たちの暖かさと愛のようなもの、時間のはかなさ、が印象に残っています。


ロン・ハヴィリオ 映画監督

『エルサレム断章』
監督:ロン・ハヴィリオ
 イスラエル/1997/ヘブライ語、英語/カラー、モノクロ/16mm/358分
◎作品紹介はこちら

 私の作った『エルサレム断章』には、随所に日本映画の影響が隠れている。父親の波乱の生涯を主題にした最後の章を編集するとき、第二次世界大戦のことを語り始めると大変なことになるから、どうにか避ける方法はないだろうかと頭を悩ませた。1940年代の話から、戦後期にジャンプするとき、私は家の花や子どもの姿などを、ポンポンポンとスナップのように挟んでみた。無意識にやってみた方法が、小津安二郎の映画で使われる時空間の跳躍になんと似ていたことか! 我ながら感心し、このシークエンスは今でもとても気に入っています。小津監督の国、日本での再上映を期待しています。


森 達也 映画監督・作家

『ハッピー・バースデー、Mr.モグラビ』
 監督:アヴィ・モグラビ 
イスラエル、フランス/1999/ヘブライ語、アラビア語、英語/カラー/16mm/77分
◎作品紹介はこちら 

『Z32』
 監督:アヴィ・モグラビ
イスラエル、フランス/2008/ヘブライ語/カラー/35mm(1:1.85)/85分
◎作品解説はこちら

アヴィ・モグラビ作品『ハッピー・バースデイMr. モグラビ』『Z32』を推薦します。
ドキュメンタリーは客観的な事実のみで構成されるという浅薄な自分の思い込みを、まずは粉々に打ち砕いてくれた作品だから。


 伏屋博雄 neoneo編集長/映画プロデューサー

『真昼の不思議な物体』
監督:アピチャッポン・ウィーラセタクン
脚本:タイの村人たち
タイ/2000/タイ語/モノクロ/35mm (1:1.85) /83分 
◎作品紹介はこちら

タイトルの、奇妙な、それでいて人を引き込む響きに誘われた。2001年のヤマガタで上映されたから、もう10年以上も前のことだ。「不思議な物体」なるものに、タイの村人の話は膨らみ、時には縮む。ロードムービーでありながら、民話の誕生に立ち会うような臨場感。ドキュメンタリーはときとして、対象が良ければ、カメラの手前にいるクルーがダメでも、そこそこいい作品になる傾向がある。本作品はそんなクルーの聖域を取っ払った作品だ。筋はすっかり忘れてしまったが、見終わったときの、「ざらっ」とした感触は今でも残っている。


萩野 亮 neoneo編集主幹/映画批評

『石の讃美歌』
監督:ミシェル・クレイフィ
ベルギー/1990/アラビア語/カラー/35mm(1.66)/105分
◎作品紹介はこちら

わたしがはじめて山形を訪ねたのは2005年。まだ大学生だった。まる三日滞在してたしか16本の長短編を見たなかで、4時間あまりという破格の上映時間をもつ一本に打ちのめされた。ミシェル・クレイフィとエイアル・シヴァンの共同監督による『ルート181』(03)だった。帰京してからわたしは、機会があるたびに両者のフィルムをさかのぼるように見始めた。『石の讃美歌』は、クレイフィの3本目となる長編。アラン・レネの『ヒロシマ・モナムール』(59)を現在のイスラエルとパレスチナとに移し替え、ドラマとドキュメンタリーをなまめかしく交錯させる。ミシェル・クレイフィの作品は、困難な状況にいつも豊饒な物語を対置させることで思考をうながしてゆく。『ルート181』は機会あってその後再見することができたが、めったに上映機会のないこの作品にふたたびめぐり会いたい。


大澤一生 neoneo編集委員/映画プロデューサー

『アレンテージョ、めぐりあい』
監督:ピエール=マリー・グレ
(ポルトガル、フランス/2006/ポルトガル語/カラー、モノクロ/ビデオ(DVCAM)/105分
◎作品紹介はこちら

初めて山形国際ドキュメンタリー映画祭に参加した時に観て感激した、思い出の作品。登場するポルトガルの詩人、映画作家、土地特有の歌について、何も予備知識もなく観たのだが、そこに詩があり、歌があり、そして生きている人々と土地が在る、それだけで「映画」が立ち昇っていたことに驚いた。なかなか観る機会がない作品なので、是非再見したい。


金子 遊 neoneo編集委員/映像作家・批評家

『カルメン・ミランダ:バナナが商売』
監督:ヘレナ・ソルバーグ 
ブラジル、アメリカ/1994/英語、ポルトガル語/カラー/35mm(1.66)/92分
◎作品紹介はこちら 

 一度フィルムで見たいと思っている1本。1930年代、シャンシャーダというブラジル版ミュージカルが流行し、その歌姫として人気を博したカルメン・ミランダ。しかし、アメリカの中南米に対する善隣外交の一環として、ミランダはハリウッドに輸出される。そして、頭にバナナやフルーツを乗せたラテン女性のエキゾチズムの典型として、文化的に収奪され、消費される。彼女がブラジルに戻ったのは死後のことだった…。シネマ・ノーヴォを継承するソルバーグ監督の怒りのこもったブラジル/アメリカ論。


佐藤寛朗 neoneo編集委員/テレビ番組制作会社勤務

『鳳鳴(フォンミン) ― 中国の記憶』
監督:王兵(ワン・ビン)
中国/2007/中国語/カラー/ビデオ(DVCAM)/183分
◎作品紹介はこちら

ここ数回はすっかり“特集上映派”で、あまり中央公民館(今回の投票作品の多くが上映されたメイン会場)に立ち寄らなくなってしまった私だが、それでも時々「ぶったまげる」映画に出会えることがあるのも、ヤマガタの魅力のひとつだ。比較的お行儀の良い?会場だが、興奮の記憶は鮮烈で、長く忘れることがない。それだけ既成の映画文法や、ドキュメンタリーの概念さえくつがえすような、作り手も、観る我々にとっても“自由”を取込んだ作品だった、ということであろう。そのような観点で『真昼の不思議な物体』や『ルート1』が印象深いが、あえて今、もう一度観るとしたら王兵の『鳳鳴』。いってみれば画の変化は少ないあの作品に、私はなぜ3時間、釘付けになったのか?あの作品に宿る強度はいったい何なのか? じっくりと考えてみたい。


 中村のり子 neoneo編集委員/「場外シネマ」主宰

『革命の歌』
監督:ヨウコ・アールトネン
フィンランド/2006/フィンランド語/カラー、モノクロ/35mm(1:1.85)/80分
◎作品紹介はこちら

60年代、政治の季節に青春を過ごしたオジサン・オバサンが時を経て、かつて愛唱した革命家を現在の職場で歌ってみせる。すっかり風貌も変わってしまった一人ひとりに、歌は時空をまたいで記憶を呼び起こさせる。お話からだけでは聴こえて来ないような、取り繕うことのできない何かが顔を見せる、不思議にチャーミングな作品。2007年のヤマガタでちょっとした流行になり、飲み会で脈絡なく口ずさむ人が続出、番外企画のカラオケイベントが盛り上がった楽しい思い出も。またスクリーンで見てみんなで歌いたい。


若木康輔 neoneo編集委員/ライター

『百代の過客』
監督:原將人
日本/1995/カラー/16mm/219分
作品紹介はこちら

 エントリーリストは見たことのない作品ばかり。外野の環境から編集に加わった人間は、こういうところで申し訳ない。やむを得ず、当時ほんの少しだけ雑務を手伝った『百代の過客』を。でも、自分がもしヤマガタ通であったとしても選ぶかな、と思えるところがおそろしい。『奥の細道』の行程通りに車を走らせ、別居している息子との夏の旅を、芭蕉と曾良に重ね合わせる。オリジナルは9時間半以上のビデオ撮り。当時は、これを映画だと言い切る原さんを内心少しアタマがおかしいと思っていた。時期的なタイミングでよくセルフドキュメンタリーの先駆と評価されたが、今見るとその要素だけで収められない気がする。父子の手探りの道中はゆっくり始まるが、次第に映像がうねり、捨身のあそびの精神に風景のほうが反応し始める。本当に芭蕉の理想のように現実と芸術の一致する場面がいくつも。つまりは風狂か。ヤマガタ版でもそのエッセンスは不変だろう。