【News】5/2-6 神戸映画資料館で「三里塚特集」。『三里塚に生きる』から小川プロ・福田克彦の名作まで

福田克彦『草取り草紙』より

『三里塚に生きる』から小川プロ・福田克彦の名作まで
神戸映画資料館で「三里塚特集」
2015年5月2日(土)〜6日(水・祝)

土本典昭や小川紳介など日本のドキュメンタリー映画を支えた名キャメラマン、大津幸四郎氏が昨年11月に亡くなられ遺作となった『三里塚に生きる』が公開された。ここにその背景を探るべく三里塚映画の主要作をまとめて上映する。一般劇場では上映の機会が少ない貴重な作品の数々。お見逃しなく。

【会場】神戸映画資料館
〒653-0036 神戸市長田区腕塚町5丁目5番1 アスタくにづか1番館北棟2F 201
078-754-8039
JR・地下鉄「新長田」駅下車徒歩5分
http://kobe-eiga.net/schedule/2015/05/

【上映時間】
5/2(

11:00 「三里塚に生きる」
13:40 「日本解放戦線 三里塚の夏」
15:50 「三里塚 第二砦の人々」

5/3(
13:00 「草とり草紙」
14:45 「三里塚 辺田部落」
17:20 トーク:鈴木卓爾・藤井仁子
18:30 「土の行進」

11:00 「日本解放戦線 三里塚の夏」
13:10 「三里塚に生きる」
15:50 「三里塚 辺田部落」

5/5(火・祝 
13:00 「三里塚 第二砦の人々」
15:45 「土の行進」
16:55 「草とり草紙」

13:00 「三里塚 第二砦の人々」
15:45 「三里塚 辺田部落」

【料金】入れ替え制 1本あたり
一般1400円 学生1200円 会員1200円 学生会員1000円
※割引あり 当日に限り2本目は200円割引

【トークイベント】
5月3日(日)17:20〜 
鈴木卓爾(映画監督)× 藤井仁子(映画評論家)
参加無料(要当日の映画チケット半券)

藤井仁子(映画評論家)

苦労して耕した自分の土地から、ある日突然、出て行けと告げられる。無茶な話だと抵抗すれば、金目当てにごねる気かと責められる。そんなカフカ的ともいうべき理不尽な状況に突き落とされれば、どんな昔気質の百姓でも怒りに燃えて立ちあがらずにはいられまい。仕事に旅行に誰もが気軽に飛行機を利用する今日、われわれが享受している便利な生活がどれほどの犠牲と引き換えに得られたものであるか。「3・11」すら経験した今のわれわれなら、その事実に党派やイデオロギーの色眼鏡を通すことなく、虚心に向きあえるはずだろう。去った者がいる。残った者もいる。もはや大津幸四郎のいない2015年、震災から20年を経た神戸の地で、いま一度「三里塚」を見るためのまたとない道づれとして鈴木卓爾監督をお迎えしたい。なぜ鈴木氏なのか。すぐにピンときた年季の入った小川プロのファンにも、釈然としない「三里塚」初心者にも、この催しはもちろん等しく開かれている。


 【上映作品】

三里塚の夏


『日本解放戦線 三里塚の夏』
(1968/108分/モノクロ/16mm)
製作:小川プロダクション
演出:小川紳介
撮影:大津幸四郎、田村正毅 録音:久保田幸雄

1978年に開港した成田国際空港は地元農民の猛烈な反対を無視し国家の政策で建設された。この映画は1968年4月から7月、条件付き売却賛成の農家の土地立入り調査をする空港公団職員、護衛する機動隊と、阻止しようとする農民・学生を、「三里塚映画班」として農民側についた小川プロがとらえた記録で、その後も続く「三里塚」シリーズの第1作。撮影中の大津幸四郎カメラマンが公務執行妨害罪で逮捕された。

no2
『三里塚 第二砦の人々』
(1971/143分/モノクロ/16mm)
製作:小川プロダクション
監督:小川紳介 助監督:福田克彦、湯本希生
撮影:田村正毅 整音:浅沼幸一


海外での評価も高いシリーズ第4作。地元農民に事前説明なく、新空港建設用地を測量しようとした国と公団は、機動隊を引き連れ強制収用を強行。農民側は徹底抗戦し砦を築く。鎖で自らの体を木にくくりつけ、一歩も動かない女性。助けようとスクラムを組む人々。農民、学生たちは公団、機動隊の乱入に対し、投石、竹槍、火炎瓶で応戦。カメラは砦に密着して一ヶ月に及ぶ闘いを記録した。マンハイム国際映画祭にてジョセフ・フォン・スタンバーグ賞を受賞。



『三里塚 辺田部落』
1973/146分/モノクロ/16mm)
製作:小川プロダクション 監督:小川紳介

撮影:田村正毅 録音:久保田幸雄
スタッフ:福田克彦、湯本希生、白石洋子、飯塚俊男、野坂治雄、伏屋博雄、他

シリーズ第6作。1971年に三里塚青年行動隊・三ノ宮文男さんが22歳の若さで自死して以来、小川プロでも激しいスタッフ討議が重ねられてきたが、その文男さんが生まれ育った辺田部落の歴史や人々の日常を見つめた作品。それまでの闘争映画ではないため、活動家からは不満の声が上がった。小川が稲作りに傾斜して行く記念碑的な作品。


『三里塚ノート3『土の行進』 三里塚14年、青年たちはいま』
(1981/50分/カラー/8mm)
製作:三里塚ノートフィルム

製作・構成・撮影・編集:福田克彦
撮影:瓜生敏彦 音楽:高橋悠治と水牛楽団


小川プロの助監督だった福田克彦は小川が山形に移った後、78年に三里塚に移住して地元の人々と共に行動することを選んだ。1966年に農民が「三里塚芝山連合空港反対同盟」を発足させ三里塚闘争を初めてから14年、青年たちが独自の方法で田圃を改良していく姿を追った。三里塚の少年行動隊の一員で幼少期から小川プロの現場に出入りし、黒沢清や四ノ宮浩作品でも知られる瓜生敏彦が撮影を担当。


『草とり草紙』
(1985/82分/カラー/8mmから16mmブローアップ)
製作:波多野ゆき枝 監督:福田克彦
撮影:瓜生敏彦、福田克彦 ナレーション:清水絋治
音楽:小向京子 題字:石毛博道 整音:浅沼幸一
                   写真・絵:波多野ゆき枝

空港二期工事に反対し家族と離れて一人で生活する反対派農民・染谷の婆ちゃんの農作業などを軽便な8mmカメラで淡々と追い、愚痴めいた独り語りを重ねて福田ならではの味わいある作品に仕上げた。小川プロのような集団製作を止めた個人的な自伝映画で、自主上映のために16ミリにブローアップして上映展開を図った。


『三里塚に生きる』
(2014/140分/カラー・モノクロ/ブルーレイ上映)
企画・製作:三里塚に生きる製作委員会
監督・撮影:大津幸四郎 
監督・編集:代島治彦

朗読:吉行和子、井浦新 音楽:大友良英   写真:北井一夫 題字・筆文字:山田麻子 
整音:滝澤 修
  プロデューサー:赤松立太、代島治彦   制作・配給:スコブル工房


昨年逝去された大津幸四郎キャメラマンが、『日本解放戦線 三里塚の夏』(1968)以来45年を経て三里塚の農民にキャメラを向け撮影し、共同監督を努めた作品。現在の三里塚の人々の姿から、空港闘争とは何だったかのか、国家権力に振り回されてきた人々のくらしや考えが静かに浮かび上がる。

【関連記事】
【はじめての小川紳介 特集③】 ドキュメンタリストの眼(6)全長版 大津幸四郎 text 金子遊
【Interview】“人生の時間”を撮るということ——『三里塚に生きる』(大津幸四郎・代島治彦監督)代島治彦監督インタビュー
【はじめての小川紳介 特集②】存在し得ない義人たちの連帯(完全版)―山形での小川紳介― text 阿部・マーク・ノーネス
【Review】抵抗の報酬と「三里塚」という精神の問題  〜映画『三里塚に生きる』に寄せて〜 text マーク・ノーネス(ミシガン大学教授)