【連載】開拓者(フロンティア)たちの肖像〜 中野理惠 すきな映画を仕事にして 第42話、第43話

晩年の父

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<前回 第41話はこちら>
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第42話 父の思い出


父に呼ばれる

いつものように、成田から郷里に暮らす姉と会社に電話をしたところ、いずれも特に変化がなかったので、安心してリムジンバスに乗り帰宅した。宮重と、当時、近所に住まいのあった友人の柴洋子さんがすぐにやって来た。すると30分もしないうちに電話が鳴り、

「たいへん、お父さんが急に、たいへん」

と姉から父の容態が急変したとの連絡である。

急ぎ東京駅に向かい、確か東海道線清水駅から病院に向かったのだと思う。病院の玄関で迎えてくれた甥の力は私を見ると黙って首を横に振った。14分前、と聞いたと記憶している。苦しまなかったとのことで表情は穏やかだったが、14分間とはいえ、すがった顔は既に固くなっていた。2001年2月19日、80歳だった。

「お父さんがベルリンから呼んだのよ」

例年より一日短かいベルリン滞在を知っていた柴さんが、葬儀の時に言った。

http://adekstudios.com/components/com_webmd/ Viagra Online 長逗留する人々

生まれ育った東京で大学卒業まで暮らした父が、伊豆の山村に馴染むのには時間がかかったことと思う。しかも、しょっちゅう居候が何人も、時には一か月以上も長逗留しているのだ。中には父の教え子の大学生や親戚、東京から来た仏具屋さんなどもいたが、一度など、私が小学生の時だったと思うのだが、町内のどっかの男性の不倫相手だった芸者さんが、奥座敷に暮していたことがある。毎日、夕食が終わる頃になると、数人の大人たちがやってきて、茶の間に座り、話し合いが始まる。それが延々と何時間も何日も続く。子どもたちは茶の間から追い出され、当の芸者さんはウチの家族と毎日、一緒に食事をするのである。その芸者さんがご飯をよそう仕草を真似た姉は、母に叱られていた。ある朝、

「いい加減にしてよ!ウチが崩壊する」

と母の怒りが爆発した。朝食の催促に隠居から出てきた祖父が、その時、父と話していた姿が記憶に残っている。その後、どうなったのかは覚えていないが、芸者さんはいなくなり、茶の間は子どもたちに戻ってきた。

http://buyviagrageneric.com/ cheap viagra online 父の過ごした日々

<お寺の財産は住職私有のものではなく檀家のものである。従って住職の家族が世襲するものではない>との父の考えで、子ども三人を自由にさせてくれた。そのため私たち姉弟は、いずれも僧職とは無縁の人生を選択し、私はお経も知らない大人になった。世襲しないことを当たり前と思っていたが、「お寺は誰が継ぐの?」などの質問を受けるたびに、一般的ではないのだ、と知った。

ところで、後任の住職は父のお通夜を七日間続けた。仕事もあったので、毎日、東京との間を往復し、2月の寒い本堂に座る。どうして七日間も続けたのかはわからないのだが、寒い本堂に長いこと座ったのは初めてで、毎朝、5時頃から1時間近く読経していた父が、何を考えていたのか、父の過ごした日々をいかに知らなかったかを思った。

そういえば、口癖のように父は、

「英語を勉強しなさい。マスターしたら次は中国語だ。中国の時代が来る」

と言い、中学校で英語の授業が始まると、私たちに、英米の出版社発行の子ども向けの本を何冊も読ませた。中国語どころか英語すらまともに使えず、それどころか十代半ばから勉強を疎かにしたので、後悔することしきりである。だが、父の身内には映画館主や役者がいたそうなので、現在の仕事については、もしかすると父は喜んでくれたかもしれない、と勝手に思っている。


ブータン映画「ザ・カップ 夢のアンテナ」

ところで、偶然だが、父の出来事と前後して、仏教に関連した映画を手がけた。ブータンの高僧が監督した『ザ・カップ 夢のアンテナ』である。見たのは前年1999年のトロント国際映画祭だったと思う。同業者であるオンリーハーツさんの奥田社長と意気投合して、一緒に買付けた。日本に戻り暫くすると、東急文化村の中の映画館ル・シネマの編成担当の中村さんが、

「中野さん、あのブータンのお坊さんの映画、どうしました?」

と聞いてきた。

中村さんがどうして知っていたのか、また、オシャレなイメージのル・シネマさんとの意外な組み合わせにも驚いたが、有難く公開をお願いした。ケンツェ・ノルブ監督はブータンの高僧だったが、気軽に宣伝キャンペーンに来日してくれた。

この映画では意外な新聞からインタビューを受けた。

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第43話 韓国映画『イルマーレ』につづく)

中野理恵 近況

ついにトランプが大統領になった。融合は発展に繋がるが、分断は破壊を呼び込む。人類は哲学なき時代をこれまで何度も経験し、反省したのではなかったか。