【Interview】母娘の物語からみえてくる、革命・人生・そして愛ーー『革命の子どもたち』シェーン・オサリバン監督インタビュー

『革命の子どもたち』より© Transmission Films 2011

――母子関係を追っていくと、どうしても情緒的な見方になってしまいがちなのですが、この映画では、アーカイブフッテージ(過去のニュース番組などの資料映像)を適切に使うことによって、その関係が歴史の一部として見えてきます。それが本作の特徴だと思いますが、資料映像をたくさん使うことにした理由を教えてください。

S・O 若松孝二監督の映画なども含めて、資料映像は、全体でも半分ぐらいの量を占めています。インタビューで撮った彼女たちの声をより活かすには、多くの歴史的なフッテージが必要だと、編集しながら気がついて集めはじめました。両者を織り交ぜることで、映画にいいエネルギーが出てきたと思っています。

テレビ局のアーカイブフッテージは、値段が高いのが問題でした。ドイツのニュースなどは、1分間で約50万円もしましたからね。日本のフジテレビが持っている重信房子の映像など、料金が高くて使用を諦めた素材もあります。10年間使用できる、というライセンス料も含めて、資料映像には映画の全予算の半分が費やされました。

――日本でも、NHKをはじめとする過去のアーカイブフッテージのライセンス料金は高く、それが歴史を検証するドキュメンタリー映画が少ない一因にもなっているような気がします。近年はフェアユース(映像の公正な引用)という概念がアメリカから入ってきたりして、少しずつ変わってきているようですが、まだまだという印象があります。

S・O 実はこの映画を撮った後、ロンドンの大学で博士課程に入り研究をしていたのですが、その時のテーマが、まさにアーカイブフッテージの値段でした。こんなにかかる、それ自体がひとつのテーマだったんです。この作品は、たまたまテレビ番組並みの予算をつけられたから実現できたのですが、そうでなければ、このようにアーカイブを多用したドキュメンタリー映画を作るのは無理で、困難を伴います。それはある意味、民主主義的ではないと思います。

そのような事情もあって、オルタナティブの歴史をドキュメンタリー映画という形で作るのは、現状では難しい。それに挑戦するのも、この映画のひとつのテーマだったかもしれません。

――最後になりますが、監督は劇場公開にあたり「1960年代後半に日本で強まった抗議の精神について、またそのエネルギーがどこに消えてしまったのかを、日本の若い世代が考える助けになれば」とメッセージを送っています。その意図を教えてください。

S・O 政治システムがメチャクチャだったり、資本主義が不平等だったりするのは、現在でも基本的には変わっていないと思います。日本では、若者が政治的な動きに関わろうとする動きはこれまでさほど大きくはありませんでしたが、今後、反原発運動などを考える時に、この映画が自分の身に引きつけて考える一助になれば嬉しいですね。当時の社会運動を、ひとつのレッスン(教訓)として、皆さんに届けられたらいいな、と思っています。

『革命の子どもたち』より© Transmission Films 2011

【監督プロフィール】

 シェーン・オサリバン(Shane O’sullivan)
1969年7月12日生まれ。ロンドンを拠点に活躍するアイルランド人のドキュメンタリー映画作家。これまで『RFKマスト・ダイ』(原題)(08)、『革命の子どもたち』(11) 『キリング・オズワルド』(原題)(13)の、政治史に焦点をあてた3作の長編ドキュメンタリーを製作している。また、ポル・ポトとジャン=リュック・ゴダールを扱ったテレビドキュメンタリーの演出や、長編劇映画『セカンド・ジェネレーション』(原題)の監督もしている。2008年には、『Who Killed Bobby? The Unsolved Murder of Robert F. Kennedy』(誰がボビーを殺したか?未解決のロバート・F・ケネディ殺人事件)という本を執筆しており、最近ではローハンプトン大学で映画学の博士号を取得した。大学を卒業したのち2年間日本に住んでいたが、その時、ビースティ・ボーイズのライブで知り合った日本人女性と結婚し、現在は妻と娘と共にロンドンで暮らしている。

【映画情報】

 『革命の子どもたち』

(2011年/イギリス/カラー/HD/88分)

監督・プロデューサー: シェーン・オサリバン
出演:重信房子、重信メイ、ウルリケ・マインホフ、ベティ―ナ・ロール、足立正生、塩見孝也、大谷恭子 他
Special Thanks:若松プロダクション
配給・宣伝:太秦
 
© Transmission Films 2011

公式サイト:http://www.u-picc.com/kakumeinokodomo
公式Facebook:https://www.facebook.com/kakumeinokodomo
公式Twitter:https://twitter.com/kakumeinokodomo

全国公開中(詳細は公式サイトにて)
8月2日(土)〜15日 渋谷・ユーロスペースにて緊急公開(期間限定上映)

【上映時間】
8月2日(土)、3日(日)21:10~
8月4日(月)~15日(金)19:00~

【トークイベント】
8月5日(火)19:00の回 
8月9日(土)19:00の回 ゲスト:足立正生(映画監督)
「アラブの現在、そしてガザ」

8月15日(金)19:00の回 ゲスト:PANTA(ロックアーティスト)、師岡カリーマ・エルサムニー(アナウンサー、作家)
「恋するアラブ人へ」

すべて会場:ユーロスペース

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