【Interview】『ニコトコ島』『石と歌とペタ』 大力拓哉&三浦崇志監督インタビュー  基本的に全部意味は無い 〜唯一無二のオリジナリティで突きつける根源的な問い〜

『ニコトコ島』より

ストーリーがどうというよりは、その場所がどう面白く使えるか

――特に『ニコトコ島』はモノクロの固定カメラで、かなりキッチリした構図が特徴ですが、カメラは2人で決めているんでしょうか

三浦 はい、2人で決めてます。『ニコトコ島』のときのカメラの場所と構図はすごい探して決めましたね。

大力 ロングショットのときは、カメラ回してから遠くまで走って行って、終わったらまた走って戻ってきて止めてます(笑)。

――作品の中で展開される自然の風景が印象的ですが、ロケハンはどのようにしているのでしょうか。

大力 ロケハンは毎回結構時間かけてやってます。ロケハンして、宿に返ってきて、その日撮ったのを観て、ここは良いとか、ここはやめとこうとか話しながら。

三浦 シナリオあるときは、ちょっとした台詞があれば、このカットにこの台詞入れれるなとか考えたり、逆にそれに合うカットを探しに行ったりっていうのはあったんですけど、『石と歌とペタ』でシナリオが完全になくなりました。

大力 『ニコトコ島』くらいまでは一応脚本みたいなものはあったんですけど、こういうもの撮ろうと思って行くと、だいたいもっといいものがすぐそばに見つかったりするんです。でもストーリーがあると、それが撮れないじゃないですか。それでなるべくそういうのを撮れるような形にしようと思ったら、どんどんスト―リーがなくなっていったんです。

『ニコトコ島』より

――『石と歌とペタ』はカラーになり、『ニコトコ島』よりさらに印象的なロケーションの連続です。

三浦 これはめちゃくちゃ探しましたね。でも撮りたい絵があってというわけじゃなくて、旅行がてらというか、最悪、旅行に行っただけになるくらいな気持ちで場所を探しに行って、ホンマに偶然あった風景というか、その固まりというか。

三浦 ロケハンで撮れたらいいんですけど、松田くんも出てるので、いい場所を見つけといて、あとでもう一回行って、そこで何するかを考えます。ストーリーがどうというよりは、その場所がどう面白く使えるかみたいな発想ですね。

――撮影期間はどれくらいかかってるんでしょうか?

大力 長くて1週間の休みを合わせてとって、それが4~5回ですかね。『石と歌とペタ』は、その前の『コロ石』(2010年)がフランスで上映されたときに、フランス行って撮った風景が入ってます。他には瀬戸内海の男鹿島(たんがじま)とか。でも、具体的な場所がどこかいうのは作品に全く関係ないです。

三浦 なんか、それっぽい場所じゃないところを撮る気はします。どこか分かるような場所は撮らないとか。

大力 あんまりこう、人が全然いないポカンとしたところが好きで。

三浦 都会でカメラを回すのが嫌やったっていうのはありますね。でこっち(自然)に行った。ただ、『石と歌とペタ』でラーメン食べるシーンがあるんですけど、あれは結構迷って入れました。普通につながったら面白いけど、テレビのCMの音がもろ入ってるし、これやったらそれまでの世界が潰れてしまうかもしれないから。でも入れてみたら意外と馴染んでるというか、気になれへん気がして。ちょっと新しいことできたかなと。

――『石と歌とペタ』は、『ニコトコ島』では全然動かなかったカメラを手に取って動かすのも驚きました。

大力 『ニコトコ島』のときは構図をバチッと決めてやりたいと思ってやってたんですけど、だんだんそれを崩していきたいなというのが頭にあって、『石と歌とペタ』では手持ちカメラで動かすというのがチャレンジとしてありました。ラーメンのシーンもそういうひとつで、それ以降も崩すのはやっていて、今はわりと何でも撮れるようになってます。

『石と歌とペタ』より

基本的に全部意味は無いといえばないですね

――台詞はアフレコですか?

大力 完全にアフレコです。ロングショット多いんで、口映ってないし、後ろ向いてるし(笑)。

三浦 あらかじめ決めてる台詞もありますけど、単に面白いこと言いたいっていうか。あと、間を持たせるために入れてる感じもあるかな。あまりにも何も喋れへんかったら、観てるほう辛いかなって。

――関西弁の軽口の会話なんですけど、ある種、哲学的ともいえる内容ですよね。ああいうのはどうやって出てくるんですか?

大力 編集したのを見ながら喋ってるのを録音したりとか、それの面白いところつなぎあわせて使ったりとか、そういうことはしてます。紙に書いて考えてるのもありますけどね。もともと昔話とか民話とか好きなんで、それで思いついた話もあると思います。

――「ファンタジー」という台詞もどこかで出てきました。

大力 そう、ファンタジー作ってるんです。何でもありというか、ちょっと別の世界。

三浦 超現実みたいな。

――でも特別な意味はない?

大力 基本的に全部意味は無いといえばないですね。本来、台詞はもっと少なくしたくて、なくてもいいかなくらいの感じです。1本だけ、『今日も順調』(2015年)っていうホンマに台詞無しのやつを撮りました。北海道行って車で毎日ウロウロして、それぞれビデオで好きなもの撮りながら、あとで編集するっていう。

三浦 ひたすら映像だけ2時間で、音楽もなし。撮りたいもんだけ撮って、2時間楽しく見れたら最高やなって、一番やりたかったのをやってみたんです。

『石と歌とペタ』より

▼page3  映画的にやってはアカンこととかあったりすると、そういうのを逆にしたくなる に続く