『石と歌とペタ』より
映画的にやってはアカンこととかあったりすると、そういうのを逆にしたくなる
――２人の独特な映画世界というのは、そうやって作品を撮り続ける中で確立されてきたものでしょうか。
三浦 そうですね。映画学校行ってたはずなんですけど、それはあまり活かせてない（笑）。
――画面としての強度がありつつ同時に軽さもある、そのバランス感覚は唯一無二のものだと思います。
三浦 自分らの映画じゃなくても、何かの映像を見たときに、「これずっと観ていられる」っていう会話とかあるじゃないですか。ああいうのが気になってるのはありますね。「何でこれ見れるんだろう？」って。
――「表現」というのともちょっと違うような気もします。少なくともこれが見せたいっていうのとは。
三浦 ああ、確かに。つねに目指すものがあるわけじゃない気がしますね。
――でも、念入りにロケハンもして、偶然撮れたものを繋げたわけじゃないですよね。１本なら別ですけど、どこにも着地しない宙ぶらりんな構造でたくさん作ってきてるのは、ある種の確信があるんだと思います。
三浦 たえず楽しくないと続けれないというのはありますね。撮ってる時も楽しいし、考えてる時も楽しい。場所探してても楽しいとか。
大力 そうやな。
三浦 それで楽しくないものをどんどん抜いていったんだと思うんです。シナリオが楽しくないとか。
大力 それでも面白く成り立つようなのができたら良いなと。
――いわゆる起承転結のストーリーや因果関係のある物語ではないので、観る人によっては、これは映画じゃないと思う人もいるかもしれません。むしろそういう人にとって「映画」と思ってるものからこぼれてしまうようなもので満ちています。人によってはアート的な映像作品と感じるかもしれない。でもこれらの作品を「映画」とおっしゃっているのは理由がありますか？
大力 なんか、映画にこだわりがあって、映画って言ってるわけじゃないんですけど、これが自分らなりの映画かなあと思って。
三浦 ま、美術館でやってもらえるなら全然やってもらいたいけど（笑）。
大力 そんなに「絶対これは映画や！」っていうのはないんです。
三浦 でも確かに、最初の頃は「映画って何か？」って話はよくしてたかもしれないです。映画的にやってはアカンこととかあったりするじゃないですか。イマジナリーラインを超えたら映画じゃなくなるみたいな。そういうのを逆にしたくなるというのはありますね。専門学校で一番最初に習ったのが、「面白くないシナリオでは絶対面白い映画は撮れない」って。でも、そうかな？って。言われてその通りやるっていうよりは、何か面白くできるんじゃないかって考えるタイプというか。
大力 ああ、もっと他にも方法ないかってな。
三浦 それで面白くなったら、もう一段階上のところに飛び抜けられるような気がするんですよね。
『ニコトコ島』より
観終わったあとに、何かエグられてたらいい
――今回、羽良多平吉さんがデザインをされているチラシやポスターも印象的です。
大力 羽良多さんは、『Road Movie』（2014年）という作品で今まで自分でやってたタイトルのデザインとかスタッフロールのデザインを誰かやってくれる人がいないかなと思って、たまたまインターネットでいろいろ見てたら、羽良多さんのやつがカッコいいやんってなって。
三浦 そしたら、間に知り合いを挟んでつながりがあったんです。
大力 羽良多さん、釣りしに毎月京都に来てはって、僕ら京都なら大阪から行けるから、「映画作ってるんですけど、デザインやってもらえないですか」ってお願いしに行ったら、引き受けてくれたんです。そのとき、「また何かあったら言ってね」っておっしゃってくれたので、今回またお願いしました。
三浦 僕らの映画も気に入ってくれてたので、それが嬉しかったですね。最初はめっちゃ緊張しましたけど（笑）。
大力 スゴイのができて嬉しいですね。こんなの羽良多さんしかできない。
――このチラシに惹かれて観に行く人もいると思います。最後に、２人の作品を初めて観るお客さんにどう観てほしいですか？
大力 笑って観てくれるのが一番嬉しいですね。考えすぎずに、ゆる～く観てくれたら。
三浦 アホな感じやなと思いながら、観終わったあとに、何かエグられてたらいい。
大力 エグルようなものかな？ わからへんけど（笑）。
『石と歌とペタ』より
【映画情報】
『ニコトコ島』
（2008年/日本/47分/モノクロ/4:3/DV）
出演：松田圭輔、大力拓哉、三浦崇志
音楽：松田圭輔、大力拓哉
木のオブジェ：伊藤亜矢美
協力：西尾孔志
監督・脚本：大力拓哉、三浦崇志
※イメージフォーラム・フェスティバル2009大賞受賞
※第62回ロカルノ国際映画祭（スイス）招待上映
※第47回ヒホン国際映画祭（スペイン）招待上映
『石と歌とペタ』
（2012年/日本・フランス/60分/カラー/4:3/DV）
出演：松田圭輔、大力拓哉、三浦崇志、中尾広道
音楽：松田圭輔、松永康平、ラシャード・ベッカー、大力拓哉
サウンドエディット：大力拓哉
タイトルデザイン：橋本新
協力：中尾広道、岡本珠希
プロデューサー：岡本珠希(CaRTe bLaNChe)、Dairiki&Miura
監督・脚本：大力拓哉、三浦崇志
※ローマ国際映画祭2012招待上映
『ニコトコ島』『石と歌とペタ』 10月14日（土）よりシアター・イメージフォーラムにて連日21:10～日替わり上映
公式サイト：http://nikotokopeta.dddmmm.info
予告編：https://youtu.be/4EpOX38CHdY
