【寄稿】9/20(土)-26(金) 福島映像祭2014~福島の3年を見つめる text 高木祥衣 (OurPlanet-TV)


名古屋、大阪、福岡、沖縄のテレビ局が初参加

テレビ部門では、昨年も参加した福島放送のほか、名古屋テレビ、毎日放送(大阪)、RKB毎日放送(福岡)、琉球放送が初参加となる。「自主避難」や「保養」、「中間貯蔵施設」など、普段なかなか目にすることの少ないテーマの番組ばかりだ。それぞれの地域でのみ放送された番組がほとんどで、いずれも深夜枠。今回、東京での上映は大変貴重な機会となる。

『100人の母たち』©RKB毎日放送 

「自主避難」「保養」の現実を切り取る

避難対象区域外から自主的に避難したふたつの家族を追った『“自主避難”~原発事故から3年・家族の苦悩~』(毎日放送)。放射線の線量計があちこちに設置された「異常な状況」が「日常」になりつつある福島の現状と、声を上げ始めた家族の苦悩、賠償や補償の面で大きな差がつけられている「自主避難」の現実を浮き彫りにする。

名古屋テレビ製作の『汚された村から~福島 チェルノブイリ~』は、福島県飯舘村とチェルノブイリ事故の汚染地域が取材地。ふるさとの日常が奪われた、それぞれの地域の人々にカメラが寄り添い、原発事故がもたらす心の傷に焦点をあてた。

写真家の亀山ののこさんを始め、原発事故に人生を変えられながらも、わが子の将来を思い、懸命に生き方を模索する母たちの姿を映し出す『100人の母たち』(RKB毎日放送)。

住み慣れた地を離れた母たち、迷いながらも福島に、関東に住み続ける母たち―。「子どもたちを守りたい」という共通する思いが、ひしひしと伝わる力作だ。

琉球放送製作の『ようこそ球美の里へ~原発事故から3年 福島と沖縄~』は沖縄県久米島の「沖縄・球美の里」が舞台。フォトジャーナリスト・広河隆一さんが立ち上げたこの「保養」の取り組みを通して、福島の子どもたちが置かれている厳しい現状と、それに向き合い支え続ける人々の思いが描かれている。

「僕と親父の農業」©KFB

地元・福島からは「農業」と「中間貯蔵施設

地元・福島のテレビ局からは「農業」と「中間貯蔵施設」という2つのテーマの番組が寄せられた。震災後、父の跡を継ぎ果樹農家になることを決断した大野農園の大野栄峰さんの挑戦を通して、福島の3年目の農業を描く『僕と親父の農業』(福島放送)。中間貯蔵施設を巡る楢葉町のケースを中心に、自治体や国の進め方、揺れ動く住民たちの思いを映した『迷走する中間貯蔵施設』(福島放送)。いずれも地元テレビ局ならではの視点と距離感で、福島を丁寧に見つめている。


福島在住の市民による映像3作品もイベント上映

映画、テレビ作品のほか、市民部門は3作品をイベント「わたしが伝える福島」にて上映。いずれも福島在住の一般の方々による映像作品だ。

身近な地域の「マイクロホットスポット化現象の問題」に着目し、放射線測定の様子をビデオに記録した『4年目のホットスポット~通学路編~』(制作:フクシマン・マサ)。震災の記憶、経験について、話をすることができなかった友人たちにカメラを向け現在の思いを聞いていく『見えぬ壁』(制作:相馬高校放送局)。佐渡島での保養の取り組みを追った『むすんで ひらく へっついの家 保養がつなぐ大家族』(制作:関久雄)。福島の多面的な日常を切り取った、かけがえなのない市民による記録だ。イベントではそれぞれの作品の制作者にご登壇いただき、ビデオに込めた思いをお話いただく。


放射能とメディアを考えるシンポジウムなど、連日イベントも開催

期間中はSpace&Café ポレポレ坐で5つのイベントを企画。市民部門の上映のほか、特別上映&トーク「ふくしまで、生きる」、テレビ局関係者を招いたトークセッション「風化する原発事故~テレビの限界と挑戦~」、放射能とメディアを考えるシンポジウム「なぜ被ばくは語れないのか~放射能とメディア~」、そして最終日には上映&トーク「子どもたちの3年」を開催する。

また、昨年の福島映像祭で大きな反響を呼び、その後自主上映の動きが全国に広がっている「東電テレビ会議 49時間の記録」を最終日9月26日に上映。今回は、原発事故当時、中央制御室で事故対応にあたっていた福島第一原発2号機元運転員・井戸川隆太さんをゲストに特別トーク付の上映となる。未見の方はこの機会にぜひご覧いただきたい。

安倍総理大臣が「アンダーコントロール」という言葉を使い「フクシマ」が「安全」であることを強調してから、ちょうど1年。相変わらずの汚染水漏れや凍結作戦の失敗、「最後は金目でしょ」発言や瓦礫撤去による新たな汚染など、到底「アンダーコントロール」とは思えない出来事ばかりが続く。

この3年、日々変わりゆく風景の中で福島の人々は何を感じ、現実とどう向き合ってきたのか―。今回集まった様々なテーマの作品を通して、福島のいくつもの姿や物語に触れ、それらを繋ぎ合わせ、多くの人が福島に思いを馳せる機会となることを願っている。


【上映情報】

『福島映像祭2014』

【日程】2014年9月20日(土)~26日(金)
【会場】ポレポレ東中野 および スペース&カフェ ポレポレ坐
(JR中央線・都営大江戸線東中野駅下車徒歩1分)
【料金】当日:一般 1500円/シニア 1300円/
       大・専 1000円/高・中・小 700円/三回券 3600円
      前売:フリーパス 10000円(数量限定・ポレポレ東中野窓口限定販売)/
                      三回券 3600円 (Pコード:465-757)
【公式サイト】http://fukushimavoice.net/fes  (上映作品詳細あり)

       
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【執筆者プロフィール】

高木祥衣(たかぎ・さちえ)
1981年生まれ。非営利の独立メディアOurPlanet-TVスタッフ。慶應大学卒業後、教育系出版社などを経て、2007年より現職。企画広報、ファンドレイジング、「福島映像祭」、ドキュメンタリー制作講座「DIYビデオのアトリエ」等担当。また、独立系の映画紹介番組を担当し、多数のインタビューを行う。
2012年よりNPO法人独立映画鍋理事。

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