【News】5/9[金]より開催★代表作9作品を上映、名キャメラマンの足跡をたどる――「追悼特集 大津幸四郎からのメッセージ」 横浜シネマリンにて

人間を撮る、存在をじっと見つめる、
そこから語られないものが浮かんでくる

キャメラマン大津幸四郎。その仕事は、日本のドキュメンタリー史の軌跡そのものであると言っても過言ではない――。

横浜シネマリンでは、5月9日(土)-5月29日(金)の 3 週間、追悼特集「大津幸四郎からのメッセージ」と題して、昨年11月に逝去したキャメラマン大津幸四郎の特集上映が開催される。大津幸四郎撮影9作品、出演1作品の計10作品を上映。『三里塚に生きる』の共同監督代島治彦監督を対談役に、多彩なゲストを招いてトークイベントも行なわれる。

日本を代表する映画作家・小川紳介、土本典昭、佐藤真らと組んだ仕事を通して、大津幸四郎が遺したメッセージ、大津幸四郎が目指したもの、大津幸四郎の教えなどが、トークゲストの証言を交えていま浮き彫りにされる。それは同時に、日本のドキュメンタリー史そのものを浮き彫りにすることにもなるだろう。

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|開催概要

追悼特集 大津幸四郎からのメッセージ

会期 2015年5月9日[土]-5月29日[金]
会場 横浜シネマリン  http://cinemarine.co.jp/
    横浜市中区長者町 6-95 TEL045-341-3180/FAX045-341-3187
料金  1,000 円 
 ※『三里塚に生きる』のみ、一般 1,300 円/大専 1,100 円/シニア・高校生以下 1,000 円 
 ※トークイベントは本特集当日チケットお持ちの方のみ入場可


|上映作品

『三里塚に生きる』【監督/撮影】
[2014 年/140 分/共同監督:代島治彦/製作:「三里塚に生きる」製作委員会/配給:スコブル工房/DCP]
小川紳介監督による三里塚シリーズ第一作『日本解放戦線・三里塚の夏』の撮影を担当した大津幸四郎が再び現地の人々にキャメラを向け、『まなざしの旅 土本典昭と大津幸四郎』の代島治彦と共に監督を務めたドキュメンタリー。三里塚のアーカイブ映像と大津が新たに撮影した映像、写真家・北井一夫の写真を交錯させ、国家権力に抵抗した人々の闘争と現在の思いを映し出す。

『はだしのゲンが見たヒロシマ』【撮影】
[2011 年/77 分/監督:石田優子/製作・配給:シグロ=トモコーポレーション/BD ]
マンガ『はだしのゲン』作者の中沢啓治が、被爆体験と『はだしのゲン』を描くまでの半生を語るドキュメンタリー。中沢は 6 歳で被爆し、漫画家になったあと亡くなった母が火葬後、骨が粉々に砕けて残っていないのを見たことがきっかけで、原爆を題材とするマンガを描き始めた。

『まなざしの旅 土本典昭と大津幸四郎』【出演】
[2010 年/89 分/監督:代島治彦/製作・配給:映画美学校/DV-CAM ]
『水俣 患者さんとその世界』など水俣シリーズで知られるドキュメンタリー作家・土本典昭と、土本の作品で撮影を担当したキャメラマン大津幸四郎に迫るドキュメンタリー。大津へのインタビューや生前の土本の証言を組み合わせ、2 人の映画人の業績をたどる。

『大野一雄 ひとりごとのように』【監督/撮影】
[2005 年/100 分/製作・配給:クエスト/DV-CAM ]
舞踏家・大野一雄に惚れ込んだ大津が自ら撮影・構成した初監督のドキュメンタリー。2000 年、歩行不能になった大野一雄は治療を受けていた病院から逃れ、舞踏研究所に帰ると、徹底的な身体の鍛え直しから再生への道をスタートさせる。回復した大野の舞踏が観客を圧倒する。
写真:池上直哉

『映画 日本国憲法』【撮影】
[2005 年/78 分/監督:ジャン・ユンカーマン/製作:配給:シグロ/DV-CAM ]
憲法とは誰のためのものか、戦争の放棄を誓った前文や第9条を、今私たちはどう考えるのか。憲法制定の経緯や平和憲法の意義について、ノーム・チョムスキーほか世界的な知の巨人たちが語る貴重なインタビューで構成され、日本の憲法の在り方を多角的にとらえたドキュメンタリー。

『花子』【撮影】
[2001 年/60 分/監督:佐藤真/主題歌:清志郎/製作・配給:シグロ/35mm] 
夕食の残り物を畳やお盆に並べた“たべものアート”なるユニークな作品を作る知的障害を持つ花子と、彼女を温かく見守る家族を描いたドキュメンタリー。監督は力作『阿賀に生きる』で一躍日本を代表するドキュメンタリー作家の一人となった佐藤真。

『ドルチェ 優しく』【撮影】
[2000 年/63 分/監督:アレクサンドル・ソクーロフ/製作:クエスト=スタジオ・ベーレク/配給:クエスト/DV-CAM ]
『静かなる一頁』『モレク神』など、ロシア映画の最高峰に位置する映画監督のアレクサンドル・ソクーロフが、『死の棘』の作家・島尾敏雄と妻ミホの揺れる関係を見据えたドキュメンタリーとも劇映画ともつかない野心的な一本。島尾ミホ自身が本人を演じている。

『まひるのほし』【撮影】
[1999 年/93 分/監督:佐藤真/製作:「まひるのほし」製作委員会/配給:シグロ/35mm] 
知的障害を抱えながらも個性豊かに活動する 7 人のアーティストたちの世界を捉えたドキュメンタリー。彼らの創作活動とそれを支える暮らしの断片を、至近距離から撮影し続けた佳作。撮影監督として、長年障害者アートの現場に携わってきた絵本作家の田島征三が参加。

『水俣一揆 一生を問う人々』【撮影】
[1973 年/108 分/監督:土本典昭/製作:青林舎/配給:シグロ/16mm]
『水俣 患者さんとその世界』に続く土本典昭監督の水俣第2 作。1973 年 3 月 20 日、熊本地裁によりチッソ側に水俣病の加害責任を認める判決が出たことを受けて行われた、被害者と会社側の直接交渉の模様を、同時録音を駆使し生々しく記録した長編ドキュメンタリー。

『日本解放戦線 三里塚の夏』【撮影】
[1968 年/108 分/監督:小川伸介/製作:小川プロダクション/配給:映画美学校/16mm] 
1968 年初夏。千葉県成田で国際空港を建設するための公団立入り調査に反対する農民と学生の姿を記録したドキュメンタリー。4年にわたる闘いは、農民たちの背負ってきた家や集落、人間関係の歴史を洗い直さずにはおかない。後に計7 作品作られる「三里塚」シリーズ第 1 作。



|トークイベント 

5/10(日)14:40~
「大津幸四郎が遺したメッセージ。反骨のポジション」
ジャン・ユンカーマンさん(映画監督/『映画 日本国憲法』監督)×代島治彦さん(映画監督)

5/16(土)15:00~
「大津幸四郎が惚れた大野一雄。舞踏するカメラ」
平野克己さん(映画作家/『大野一雄、魂の風景』監督)×代島治彦さん

5/23(土)12:15~
「大津幸四郎と障害のある人々。共感のまなざし」
山上徹二郎さん(映画プロデューサー/シグロ代表)×代島治彦さん

5/24(日)12:30~
「大津幸四郎、映画発見の旅。三里塚と水俣」
山根貞男さん(映画評論家)×代島治彦さん
 ※大津幸四郎撮影/土本典昭演出の未公開フィルム(1972 年/20 分/16mm)特別上映あり

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|プロフィール

大津幸四郎(おおつ こうしろう)
1934 年、静岡県生まれ。静岡大学文理学部法経学科を卒業後、1958 年、岩波映画製作所に入社。5 年間撮影助手として勤めるが、PR 映画に限界を感じて退社。以後フリーランスのキャメラマンとして独立。
劇映画から CF まであらゆる撮影をこなした。『圧殺の森 高崎経済大学闘争の記録』、成田国際空港反対闘争『三里塚』の小川紳介、『水俣』の土本典昭、彼らの衣鉢を継いだ佐藤真、TV プロデューサーの牛山純一ら日本ドキュメンタリーの旗頭と共闘。広島、長崎、沖縄、三池から原発まで、戦後社会運動のほとんどすべての現場に赴いたほか、中国、韓国、パレスチナ、東ドイツなどの貴重な時代をカメラに収めた。
2005 年、自ら撮影・構成した『大野一雄 ひとりごとのように』を発表。2014 年には代島治彦と共同監督で、三里塚で農業を続けるかつての闘士たちを四十余年ぶりに訪ねた長編ドキュメンタリー『三里塚に生きる』を発表。2014 年 11 月 28 日、肺がんのため死去。享年 80 歳。

フィルモグラフィー

[監督・撮影]
2007 年 『大野一雄 ひとりごとのように』
2014 年 『三里塚に生きる』 共同監督:代島治彦

[撮影]
1967 年 『圧殺の森 高崎経済大学闘争の記録』 監督:小川紳介
    『現認報告書』 監督:小川紳介
1968 年 『日本解放戦線・三里塚の夏』 監督:小川紳介
1969 年 『パルチザン前史』 監督:小川紳介
    『にっぽん零年』 監督:川辺和夫、藤田敏八、浦山桐郎、斎藤光正
1971 年 『水俣 患者さんとその世界』 監督:土本典昭
1973 年 『水俣一揆 一生を問う人々』 監督:土本典昭
1975 年 『不知火海』 監督:土本典昭
    『鴎よ、きらめく海を見たか めぐり逢い』 監督:吉田憲二
    『医学としての水俣病』 監督:土本典昭
1978 年 『難病「再生不良性貧血症」と闘う 君はいま光のなかに』 監督:吉田憲二
1980 年 『きらめきの季節』 監督:吉田憲二
1983 年 『泪橋』 監督:黒木和雄
1985 年 『おもしろ学校のいち日 名取弘文の公開授業』 監督:西山正啓
1987 年 『ゆんたんざ沖縄』 監督:西山正啓
1989 年 『出張』 監督:沖島勲
    『ドキュメント’89 脱原発元年』 監督:小池征人
1990 年 『老人と海(1990)』 監督:ジャン・ユンカーマン
1991 年 『魂の風景 大野一雄の世界』 監督:平野克巳
    『狭山事件 石川一雄・獄中 27 年』 監督:小池征人
    『映画の都』 監督:飯塚俊夫
1993 年 『アイランズ 島々』 監督:セミョーン・D・アラノヴィッチ、大塚汎
1994 年 『全身小説家』(再現ドラマのみ) 監督:原一男
    『黄昏のアインシュタイン』 監督:蜂須賀健太郎
1999 年 『ドルチェ 優しく』 監督:アレクサンドル・ソクーロフ
    『まひるのほし』 監督:佐藤真
2001 年 『花子』 監督:佐藤真
2002 年 『チョムスキー9.11 Power and Terror』 監督:ジャン・ユンカーマン
2005 年 『三池 終わらない炭鉱の物語』 監督:熊谷博子
    『映画 日本国憲法』 監督:ジャン・ユンカーマン
    『エドワード・サイード OUT OF PLACE』 監督:佐藤真
2007 年 『風を聴く 台湾九分物語』 監督:林雅行
2011 年 『はだしのゲンが見たヒロシマ』 監督:石田優子
2012 年 『ぬちがふぅ(命果報) 玉砕場からの証言』 監督:朴壽南

[出演]
2010 年 『まなざしの旅 土本典昭と大津幸四郎』 監督:代島治彦

 

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