【連載】ワカキコースケのDIG!聴くメンタリー 第34回 『栄光の11番 村山実』

村山実は阪神の大エースだった。プロ野球史上に残る長島とのライバル対決など、気迫のピッチャー人生を記録した、引退記念レコード 背番号11番は永久欠番 みなさん、いかがお過ごしでしょうか。廃盤アナログレコードの「その他」ジャ

【批評ワークショップReview】映像を観ること、聴くこと、考えること―― 『#まなざしのかたち』 text モイ服部

2021年12月に開催した第4回東京ドキュメンタリー映画祭では、連動企画として「批評ワークショップ」を行った。基礎講義ののち、長編コンペティション作品、中・短編コンペティション作品、人類学・民族映像部門コンペティション作

【批評ワークショップReview】アレッポの香り、メイド・イン・ターキー 『故郷とせっけん』 text 井河澤智子

2021年12月に開催した第4回東京ドキュメンタリー映画祭では、連動企画として「批評ワークショップ」を行った。基礎講義ののち、長編コンペティション作品、中・短編コンペティション作品、人類学・民族映像部門コンペティション作

【Review】『ベニスに死す』を向こうに見つめて――『世界で一番美しい少年』 text 吉田晴妃

稀代の美少年 2012年ごろのことだったと思う。絵を描く友人が、ものすごい美少年の画像をネットで見つけたのだと見せてくれた。ビョルン・アンドレセンといって、『ベニスに死す』という古い映画で主人公のおじさんにただただ追い回

【文学と記録⑨】太宰治と「隠沼」〜後編:『春の枯葉』〜 text 中里勇太

 おそらく意図したことではないだろうが、「宿命とでもいうべきもの」の一端が、深浦の町で言及されているように思う。次の一文は、深浦の町で太宰がみた光景であり、作中でもっとも詩的な一文であると筆者は考える。 「漁師の家の庭に

【連載】LA・ドキュメンタリー映画紀行〈4〉 アーカイヴとキュレーションの取り結ぶ有機的な関係性——パシフィック・フィルム・アーカイヴでの上映企画を通して

バークレー美術館&パシフィック・フィルム・アーカイヴ(HPより)  この連載ではこれまでに、パンデミック下の映画制作や映画研究者のコミュニティという視点から、ロサンゼルスでの生活で出会う人々やものたちを通じて映画文化の「

【Review】ほのかに育つ意思――『帆花』text 堤拓哉

 白い湯気が立ち昇る熱々の飲み物が入ったカップのように、淡くて温かいものを感じさせるドキュメンタリー映画だ。タイトルの「帆花」という名の女の子は、自宅のベッドに仰向けで横たわり、人工呼吸器を装着している。か細い手足は自力

【文学と記録⑨】太宰治と「隠沼」〜前編:『津軽』〜 text 中里勇太

 戦時中の一九四四年、太宰治は『津軽』(*)という小説を書いている。  津軽半島の中ほどにある金木で生まれた太宰は、上京までのあいだに、叔母の家があった五所川原、中学時代を過ごした青森、高校時代を過ごした弘前といった町に

【連載】ウディ・アレンの逆説 ポスト・トゥルース時代のスキャンダル⑤ text 大内啓輔

ウディ・アレンと運命論 転換点としての『マッチポイント』 ウディ・アレンのフィルモグラフィーの分水嶺となる作品とは何か。商業的な成功と、作家としての批評的な評価という点において、第一に名前が上がるのは『アニー・ホール』(

【自作を語る】あなたを揺さぶるブラジルのストリート 『街は誰のもの?』 text 阿部航太(本作監督)

2018年10月1日、僕はブラジルはサンパウロに到着した。季節は春。インターネットの情報から、ブラジルがいかに危険な場所か、嫌になるほど目にしていたので体は緊張で強張っている。日が暮れかかったころに到着した中心街には「悪

【TDFF特別Review】“困窮邦人”のなれのはて~歯のない男の悲歌《エレジー》~ 『ベイウォーク』 text 松崎まこと

 昨年は、「東京ドキュメンタリー映画祭2020」の審査に関わり、短編・長編問わず、日本のドキュメンタリー作品数十本をモニターした。その中の複数の作品で、思わずギョッとした瞬間がある。  “歯のない者”。……その登場がいつ

【Review】市庁舎の外――フレデリック・ワイズマン『ボストン市庁舎』 text 原田麻衣

 ボストンの風景から市庁舎の外観のショット、そして市庁舎のなかへ。多くのワイズマン作品がそうであるように、この作品もまた主題となる「建物」を取り巻くショットから始まる。そしてたいてい、その後に続くのは建物のなかで起きる出

【TDFF特別Review】奇跡の出会いが解き明かす「混血児」と生き別れた母の絆――『Yokosuka 1953』 text 井上健一

 「いろいろな困難があったけど、ドラッグにもお酒にも溺れずに、自分を大切にして生きてきました」  66年ぶりに訪れた故郷・横須賀で自らの半生を涙ながらに振り返った後、こう語るバーバラ・マウントキャッスル(日本名:木川洋子

【Review】喪失と再生の先に――『ドライブ・マイ・カー』 text 若林良

 濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』が公開されている。村上春樹の短編小説集『女のいない男たち』(文春文庫)に収録された同名の短編小説を原作とし、6月に行われたカンヌ国際映画祭では脚本賞をはじめ、計4つの賞を受賞した。

【Review】封印されていた音楽フェスを知って――『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』 text 澤山恵次

本作に収録された、ハーレム・カルチュラル・フェスティヴァルが開催されたのは1969年。当時は固定カメラによる撮影が基本だろうから、見たいミュージシャンの演奏の瞬間を捉えたショットなど最初から期待はせずに観たが、監督である

【Review】こどもとおとな、自由と事情ーー『屋根の上に吹く風は』 text 加納土

 鳥取県の山あいにその「学校」はある。新田サドベリースクール。この映画は新田サドベリースクールの1年を追ったドキュメンタリー映画だ。鳥取といえば、で真っ先に浮かぶのは鳥取出身で、僕の大好きな漫画家の水木しげるだ。「おばけ

【連載】ウディ・アレンの逆説 ポスト・トゥルース時代のスキャンダル④ text 大内啓輔

「ポストモダニスト」としてのウディ・アレン 異例の注目を集めた『夫たち、妻たち』 連載ではここまで、映画作家ウディ・アレンの軌跡を辿りながら、アレンがいかなる語りの戦略のもとで「ウディ・アレン」というオンスクリーンのペル

【Report】当たり前の自由を勝ち取った「表現の不自由展かんさい」 text 宮崎真子

 「表現の不自由展」がたどった道のり  7月18日大阪天満橋朝8時過ぎ、既にむっとする暑さ!「表現の不自由展かんさい」最終日。会場のエル・おおさか(大阪府立労働センター)入り口には入場の為の整理券を求める老若男女市民がず

叢書vol.2『アニエス・ヴァルダ 愛と記憶のシネアスト』刊行、web通販スタート

neoneo編集室が刊行する「ドキュメンタリー叢書」の第2弾。『アニエス・ヴァルダ 愛と記憶のシネアスト』が刊行されました。下記のフォームから、送料無料、合計2000円でneoneo編集室より、web通販で直接ご購入いた

【連載】ウディ・アレンの逆説 ポスト・トゥルース時代のスキャンダル③ text 大内啓輔

セレブリティの生態学 ウディ・アレンはそのキャリアを通じて、「スター・システム」に強い関心を寄せてきた映画作家である。実質的な監督デビュー作である『泥棒野郎』(1969)では、幾度となく犯罪に失敗しては、そのたびに刑務所

【連載】ウディ・アレンの逆説 ポスト・トゥルース時代のスキャンダル② text 大内啓輔

ウディ・アレンの誕生 ウディ・アレンのキャリアを改めて振り返るとき、1977年に公開された『アニー・ホール』について語ることを避けては通れないだろう。アレンとマーシャル・ブリックマンの共同脚本による『アニー・ホール』は、

【文学と記録⑧】ジョン・オカダと物語の不在 text 中里勇太

 ジョン・オカダという日系アメリカ人が書いた『ノーノー・ボーイ』(*1)という小説がある。舞台は第二次大戦後すぐのアメリカ・シアトル、主人公はイチロー・ヤマダという日系アメリカ人二世であり、物語の背景には第二次大戦中の日