【Interview】クルドの青年たちと、喜怒哀楽を共にして 『東京クルド』日向史有監督

入管法「改正」案は廃案になったが、今年3月にはスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんが施設収容中に死亡、中国人男性の死亡も発覚するなど、入管(出入国在留管理局)の非人道的な行いに注目が集まっている。抗議運動や署名活動

【連載】ウディ・アレンの逆説 ポスト・トゥルース時代のスキャンダル① text 大内啓輔

ウディ・アレンはどこにいるのか? ウディ・アレンにとって今のところの最新作となっている『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』(2019)は、昨年7月3日に日本での劇場公開を迎えた。ウディ・アレンの代名詞ともなっているニュー

【Review】めのまえのものに思いを馳せながら――『想像』text 吉田恭大

『想像』は、緊急事態宣言下、2021年の5月28日に公開された。2017年から2019年にかけて上演されたリクリエーション版『三月の5日間』の制作の様子を、主に俳優の板橋優里に焦点を当てて追った作品である。  それじゃ「

【Review】おやすみなさい、よい夢を――『ふゆうするさかいめ』text 井河澤智子

今、私は「眠ること」に対しての困難を抱えながら、これを書いている。 自らの内でコントロール不可能な「眠り」=不眠に悩まされながら、毎日を過ごしている。 いったい、眠りとは、なんなのだろうか。 日々の疲れを癒やすもの。ある

【自作を語る】「感動」の呪縛——『ラプソディ オブ colors』text 佐藤隆之(本作監督)

 「佐藤さんて、アイヌだったんですか?」  とは、前作『kapiwとapappo~アイヌの姉妹の物語~』(2016年)を撮っていた頃、よく聞かされた言葉だ。企画書やトレイラーを見て、知人たち(多くはプロデューサー)がそん

【Review】ふたつのキン・ザ・ザーー『クー!キン・ザ・ザ』 text 井河澤智子

フォースと共にあらんことを。 長寿と繁栄を。(人差し指と中指、薬指と小指をくっつけ、中指と薬指と親指を開き、相手に手のひらを見せつつ) そして 中腰ガニ股、頬をパンパンと叩き、両腕を下ぎみに開いて 「クー!」 筆者が勝手

【Review】デイヴィッド・バーンが向き合う人間ーー『アメリカン・ユートピア』 text 江頭シュンタロウ

 人間だけの舞台に、それを観る観客の人間たち。デイヴィッド・バーン、11人のバンドメンバー、観客。そして、それぞれの間にある空気を満たす音楽。舞台上には、マイクやドラム、配線すらもないのだ。ふと気が付けば、その空間に流れ

【Review】古書に魅せられて――『ブックセラーズ』 text 吉成秀夫

はじめて試写で『ブックセラーズ』を見終わったとき、あまりの情報量に驚き、感嘆のため息を一つついてしばし呆然としました。 つぎに見たとき、私はこころみに字幕のカットがいくつあるかを数えてみましたが、1300カットを超えたと

【Review】蘇る、記憶の熱情――『きみが死んだあとで』 text 藤田功一

 冒頭、雨の中、若者の遺影を掲げて立つ一人の男がまっすぐにスクリーンのこちら側に視線を送っている。やがてそれが本作の監督・代島治彦であることがわかる。詰襟の学生服で立っているショットがただならぬ気配を漂わせて映画は幕をあ

【対談】黄インイク×井上修×野嶋剛 世代を超えたドキュメンタリストが語り合うーー『緑の牢獄』公開記念特別対談

左から井上修氏、黄インイク監督、野嶋剛氏 2021年3月23日、アンスティチュ・フランセ東京で、西表島の炭鉱をめぐる台湾人移民をテーマとしたドキュメンタリー『緑の牢獄』の完成披露試写会、および特別対談が行われた。参加者は

【Review】死者たちの〈異界〉と〈ポスト・インタビュー時代〉――『緑の牢獄』 text 藤田修平

 西表島と言えば「ジャングルリゾート」(星野リゾート)として、近年、人気を集める沖縄県の離島であるが、映画『緑の牢獄』はそのイメージとは対照的に、太陽の光が十分に届かず、鳥の声が不気味に反響する密林に死者がさまよう〈異界

【Review】「障害」という壁を超え、自閉症の彼らが見る美しい世界――『僕が跳びはねる理由』 text 柴垣萌子

「僕が跳びはねる理由」  NHKの番組で東田直樹さんをはじめて知った時、東田さんの身体全体での感情表現を前に「なんて感情豊かで純粋な人なんだろう」と当時感極まって号泣したことを覚えている。それから数年後、東田さんの著書『

【Book Review】「私の映画言語」とは何か――『まだ見ぬ映画言語に向けて』 text 若林良

「個の姿勢」を尊重すること  本書は、2014年から15年にかけて東京・御茶ノ水のエスパス・ビブリオで行われた、吉田喜重、舩橋淳両監督による「まだ見ぬ映画言語に向けて」と題された対談イベントを書籍化したものである。  4

【Review】植民地支配や戦争責任を問い返す「東アジア反日武装戦線」のドキュメンタリー『狼をさがして』 text 小林蓮実

武装闘争は、どのような思いで実行されたのか。そしてそれを、どのように考えるのか。今回、この武装闘争を実行してきた「東アジア反日武装戦線」のドキュメンタリー作品が完成した。それが、韓国のキム・ミレ監督作品『狼をさがして』だ

【連載】LA・ドキュメンタリー映画紀行 〈3〉パンデミック下での映画製作と教育——南カリフォルニア大学プロダクション部門を中心に text 中根若恵

南カリフォルニア大学映画芸術学科のスタジオ外観 世界中で未曾有の事態をもたらしたパンデミックは、映画業界にも深刻なダメージを与えてきた。毎年2月に行われるのが恒例だったアカデミー賞が延期になったのをはじめとして、長引くパ

【自作を語る】人の強さに触れて――『たゆたえども沈まず』 text 遠藤隆(本作監督)

 東日本大震災から10年の節目となる2021年3月。テレビ各局は様々にこの10年を振り返り、被災地の今を伝える番組を放送するだろう。しかし、私はこの未曽有の大惨事を伝えるのにテレビという媒体には限界があると思っている。

【Review】そして、季節は巡りゆく――『夏時間』text 井河澤智子

 これは、「家」をめぐる物語。  建物としての「家」。そして、「家族」という意味の「家」。  家は、家族を包み込む。  これは、ある夏の、ある家の物語。  第24回釜山国際映画祭でGDK賞他4冠をはじめ、第49回ロッテル

【Review】それぞれの生を尊ぶこと――『きこえなかったあの日』 text 川瀬みちる

「津波の警報が鳴っていた。わたしは全くきこえなかった」  大災害という「想定外」において、聴覚障害者という存在はさらなる「想定外」とされてしまっていた。  映画「きこえなかったあの日」は、自らも聴覚障害を持つ今村彩子監督

【News】東京ドキュメンタリー映画祭 in OSAKA・第二弾 シアターセブンにて開催決定!

neoneo編集室が主催する「東京ドキュメンタリー映画祭」が2度目の大阪上陸! この春、大阪シアターセブンにてセレクション上映&新たな観客賞も! 映画祭のチラシはこちらから! テレビ、映画、ネット動画の枠を超えたドキュメ

【自作を語る】「つまらん映画」と言われたい/『あこがれの空の下 〜教科書のない小学校の一年〜』text 増田浩(本作共同監督)

  3年⽣の国語「ちいちゃんのかげおくり」で、晴れた⽇に校庭で実際に「影送り」をやってみた時の⼀コマ。何度か挑戦して、「⾒えた!」と喜んでいる⼦どもたち。 「和光小学校って知ってる? 教科書がない学校なんだって

【Review】台湾のマージナル――『私たちの青春、台湾』 text 荒井敬史

前代未聞の議会占拠 2014年3月に起こった台湾のひまわり学生運動のムーブメントは、学生たちが立法院(国会)占拠に成功したという耳を疑うようなニュースが流れたことで世界の注目を集めた。その背後には、果たしてどのようなネッ

【Book Review】描き直される映像詩人の肖像――『ジョナス・メカス論集 映像詩人の全貌』 text 大内啓輔

2019年1月23日に96歳で逝去したジョナス・メカス。その死から2年を迎えようとしているタイミングで刊行された『ジョナス・メカス論集 映像詩人の全貌』と題された本書は、ドキュメンタリー専門誌「neoneo」編集室が創刊