【文学と記録②】古井由吉と赤牛 text 中里勇太

 小説において、作者と近しい登場人物が記憶を語るとき、作者自身が辿ってきた道行きを背景にして読めば、語られた記憶は時代証言となる「記録」の側面をもついっぽうで、小説において語られる記憶には、作中人物の記憶ともうひとつ、記

「ワカキコースケのDIG!聴くメンタリー」第33回 『小津安二郎の世界』

「ワカキコースケのDIG!聴くメンタリー」第33回 『小津安二郎の世界』 小津安二郎の唯一の肉声録音と、代表作の数々の名場面を収録した記念盤。 あの厳格な〈小津調〉のイメージを一切忘れ耳だけで小津に接すると、 何が浮かび

【連載】ドキュメンタリストの眼 vol.25 大森康宏(映像人類学者)インタビュー text 金子遊

 大森康宏さんは日本を代表する映像人類学者である。若かりし頃にフランスへ留学し、ジャン・ルーシュから直接、映像制作の方法を習ったことは有名である。その後、フランスのロマである「マヌーシュ」に関するドキュメンタリー映画を完

【文学と記録①】後藤明生と土筆 text 中里勇太

 文学、殊にフィクションである小説において「記録」とはなにか。小説のなかに描かれる歴史的事件や社会事象、社会風俗に加えて、ときには作者と近しい存在である登場人物の生活なども、そこに含まれるのだろう。いっぽうで、小説がフィ

【連載】ドキュメンタリストの眼 vol.24 ダルデンヌ兄弟インタビュー text 金子遊

   世界的な映画の巨匠として知られるジャン=ピエール・ダルデンヌと、リュック・ダルデンヌの兄弟だが、もとはドキュメンタリー畑の出身であることはあまり知られていない。1970年代半ばからベルギーのブリュッセルを

【連載】LA・ドキュメンタリー映画紀行 〈1〉北米のドキュメンタリー映画研究事情――研究者コミュニティの歴史と現在 text 中根若恵

映画の都・ロサンゼルスと聞くと、誰もが真っ先にハリウッドの華々しいイメージを連想するかもしれない。一年を通して温暖でカラっとした心地のよい気候のもとに発展したハリウッドの映画文化は、グローバルな伝播を通じてロサンゼルス、

【連載】「視線の病」としての認知症 第16回 長すぎる休日 text 川村雄次

「視線の病」としての認知症 第16回 長すぎる休日 (前回第15回はこちら)  前回は「なぜ声をあげたのか」について書いた。今回は、その声が忘れられた理由について書く。つまり、「なぜミッシングリンク(失われた環)になった

【連載】「視線の病」としての認知症 第15回 ミッシングリンク text 川村雄次

「視線の病」としての認知症 第15回 ミッシングリンク (前回 第14回 はこちら)   今回書こうと思うのは、 「ミッシングリンク」についてである。それはもともと生物進化の用語で、AがCになるには間にBがある

【連載】「視線の病」としての認知症 第14回 「認知症ケア」の夜明け text 川村雄次

クリスティーン、ポールと武田純子さん(2007年 札幌市) 「視線の病」としての認知症 第14回 「認知症ケア」の夜明け (前回 第13回 はこちら) 認知症という、不治で進行性の病を生きることにどんな希望があるというの

【連載】「視線の病」としての認知症 第13回 「目に見えない人たち」が姿を現す text 川村雄次

オーストラリア「認知症啓発週間」ののぼり(2008年シドニー) 「視線の病」としての認知症 第13回 「目に見えない人たち」が姿を現す 前回(第12回)はこちら 2008年9月14日の朝、私たちはブリズベン空港で成田から

【連載】ワカキコースケのDIG!聴くメンタリー 第32回 『実音 日大闘争の記録』

「ワカキコースケのDIG!聴くメンタリー」第32回 日大全共闘の闘争は、ふつうの学生が声を上げたことで学生運動のピークとなった。 彼らの純粋さをダイレクトに収録した青春の記念碑盤。 日大闘争とはなんだったのか みなさん、

【連載】ドキュメンタリストの眼 vol.23 タル・ベーラ(映画監督)インタビュー text 金子遊

ハンガリーが生んだ孤高の映画作家タル・ベーラ。日本では『ヴェルクマイスター・ハーモニー』(二〇〇〇年)や『倫敦から来た男』(二〇〇七年)といった代表作が公開されているが、初期の作品はまだ未紹介になっている。二〇一一年に完

【連載】「視線の病」としての認知症 第12回 新しい視線 text 川村雄次

エリザベスとクリスティーン  「視線の病」としての認知症 第12回 新しい視線 前回(第11回)はこちら エリザベス・マッキンレーから私たちが教えられたのは、「新しい視線」だった。それは、私たちが捉われていた「視線の病」

【連載】ドキュメンタリストの眼 vol.22 アミール・ナデリ(映画監督)インタビュー text 金子遊

イラン映画を代表するアミール・ナデリ監督。2018年の東京フィルメックスの「特集上映 アミール・ナデリ」では、監督の初期の代表作『タングスィール』『ハーモニカ』といった作品が並び、さらに上映されることの珍しい映像詩的な作

【連載】「視線の病」としての認知症 第11回「声をあげる人」と「聴く耳を持つ人」text 川村雄次

クリスティーンの話を聞くエリザベス・マッキンレー 「視線の病」としての認知症 第11回 「声をあげる人」と「聴く耳を持つ人」 【前回 第10回 はこちら】 2004年の2度にわたるオーストラリアロケの目標は、クリスティー

【連載】「視線の病」としての認知症 第10回「視線の病」に気づく text 川村雄次 (NHKディレクター)

クリスティーンとポール 「視線の病」としての認知症 第10回 「視線の病」に気づく 【前回 第9回 はこちら】 クリスティーンが帰国して半年経った2004年4月19日の夜。私は、2人のスタッフとともに成田空港の待合室にい

【連載】「ワカキコースケのDIG!聴くメンタリー」第31回『1975 4.13.』キャロル

日本にロックンロールを広めたバンド、キャロルの解散ライブ盤には矢沢永吉と内田裕也の挨拶が収録されていた。 この2人はMCもバリバリ! 矢沢永ちゃんと内田裕也、武田鉄矢が同じ場にいた 廃盤アナログレコードの「その他」ジャン

【連載】「視線の病」としての認知症 第9回 スタートラインに立つ text 川村雄次

小澤勲さんとクリスティーンの出会い 「視線の病」としての認知症 第9回 スタートラインに立つ 前回< 第8回> はこちら  この連載の第1回に私は、クリスティーンの言葉との出会いを「希望の光」と捉えた人々がいて、そうした

【連載】「視線の病」としての認知症 第8回 内側から見た認知症 クリスティーンが語ったこと text 川村雄次

松江での講演 「視線の病」としての認知症 第8回 内側から見た認知症 クリスティーンが語ったこと  前回<第7回>はこちら 2003年10月31日朝の関西空港。 私が認知症について作る初めての番組のビデオテープが回り始め

【連載】「視線の病」としての認知症 第7回 クリスティーンを待ちながら text 川村雄次 

クリスティーン夫妻訪問最終日のどじょうすくい 撮影 石倉康次  「視線の病」としての認知症 第7回 クリスティーンを待ちながら <前回 第6回はこちら> クリスティーン夫妻と別れてから8か月は慌ただしく過ぎた。 石橋典子

【連載】「視線の病」としての認知症 第6回「天国の待合室」にて text 川村雄次

クリスティーンと石橋典子さん 「視線の病」としての認知症 第6回「天国の待合室」にて <前回 第5回 はこちら> 2003年 2月23日。 この日、認知症の人の語る時代の扉が開いた。 その日の午前11時半、私はブリズベン

【連載】「視線の病」としての認知症 第5回 「その人」に会いに行く text 川村雄次

ブリズベンの街 「視線の病」としての認知症 第5回 「その人」に会いに行く <前回 第4回はこちら> 2003年2月22日、私はオーストラリアへと向かう飛行機の中にいた。夜9時半に真っ暗な関西空港を飛び立って、翌朝5時、