【論考】謙譲の過程としての「面」の提示―松林要樹監督『相馬看花 -第一部 奪われた土地の記憶-』 text 阿部嘉昭
森達也ほか四人の共同監督による『311』は、東日本大震災後、拙速で福島原発事故の立ち入り禁止区域から津波被災区域までを縦断した。準備不全、わが子が行方不明になった母親たちへの「不恰好」なインタビューなどによって、「公益性
【Essay】「うたはたましいの記録である」①友川カズキ text 金子鉄夫
自分の家の前で立ち止まり覚悟を決めてドアを押す地獄でもあるまいによ生きてるって言ってみろ(『生きてるって言ってみろ』) 骨抜きである。友川カズキ、1950年秋田県生まれ。先行する時代の赤裸々な
【Review】『こわれゆく女』ジョン・カサヴェテス レトロスペクティヴ text 指田文夫
1975年に作られたジョン・カサヴェテス監督、ジーナ・ローランズ主演のこの映画を見て、すぐに思い出したのは、藤田敏八監督、秋吉久美子主演の1973年の日活映画『赤ちょうちん』である。『妹』『バージン・ブルース』と続く秋吉
【自作を語る】偶然の旅人『孤独なツバメたち~デカセギの子どもに生まれて~』を作ること text 中村真夕
「孤独なツバメたち~デカセギの子どもに生まれて」は、浜松に暮らす5人の日系ブラジル人の青年たちを追ったドキュメンタリーだ。2008年8月、私はテレビの取材で浜松を訪れた。土曜日の夜、浜松の町を歩き、たむろしているブラジル
【Review】『隣る人』 text 吉田孝行
ある映画を観るときの醍醐味の一つは、間違いなく「始まり」と「終わり」の二つのショットを迎えるときの緊張や驚き、感動や失望にあると思うが、その二つのショットの素晴らしさにおいて、『隣る人』と題されたこのドキュメンタリー映画
【Essay】ドキュメンタリー「私」の時間「私」の回路 text 濱治佳
8月18日から開催予定の「ドキュメンタリー・ドリーム・ショー–山形in東京(DDS 2012)」では、ここ、neoneoとコラボレーションを組み、新しい試みを行っている。映画祭が開始された1989年から山形映画祭では、イ
【自作を語る】 『プッチーニに挑む―岡村喬生のオペラ人生』公開を目前にして text 飯塚俊男
[c]アムール+パンドラかつて小川プロに所属して社会的弱者に寄り添うように映画を作り、独立後は環境や歴史、民俗といった文化映像を主に監督してきた飯塚が、なんでオペラ歌手をテーマに撮ったのか? こんな疑問を持つ人がいるか
【論考】 ロジャー・コーマンと日本のロジャー・コーマンたち(前編) text モルモット吉田
1 「僕なんかが営々として八ミリや十六ミリを撮っているときに何を望んでいたかというと、ここに一人のロジャー・コーマンがなぜいないんだということだったですよね。つまり、若い才能はたぶん、アメリカと同じように日本にもいるはず
【特集】DDS2012×neoneo ヤマガタ人気投票プロジェクト関連企画「ヤマガタ・わたしのリクエスト」
「去年、山形までは足を運べなかったなあ」と嘆いておられる皆さん。山形で見逃したあの作品、もう一度見たいあの傑作。今年もやります、山形国際ドキュメンタリー映画祭の東京巡回上映! 今回はなんとDDS2012とneoneo w
【Review】『沈黙しない春』 「反原発デモ」という生きものの記録 text 青木ポンチ
映画、とりわけドキュメンタリーは、時に実社会にたしかな影響を及ぼす。3.11以降、「今ここ」でしか撮れないインディペンデントな作品が数多く作られ、その一石によって社会に新たな“意識”を芽生えさせてきた。©沈黙しない春3.
【Review】 『3月11日のマーラー』 美談の圧に潰されないために text 皆川ちか
ドキュメンタリー、とりわけテレビ放送用のドキュメンタリーには、フィクションさながらの物語性がある。起承転結の起から結に向かって、膨大な映像、たくさんの言葉の中から、各展開にふさわしい部分を抜き取り、さらにナレーションで作
【Interview】 「あたらしい間借りのかたち―まちのシェアへ」 まちづくり会社ドラマチック 今村ひろゆきさんインタビュー
すぐそばを隅田川の流れる浅草・江戸通り沿いに一軒の古めかしい建物がある。まちづくり会社ドラマチックの代表・今村ひろゆきさんの運営する「LwP asakusa」というスペースだ。今村さんはここをひとつの拠点として、あたらし
【Interview】 今村ひろゆき 「あたらしい間借りのかたち―まちのシェアへ」
すぐそばを隅田川の流れる浅草・江戸通り沿いに一軒の古めかしい建物がある。まちづくり会社ドラマチックの代表・今村ひろゆきさんの運営する「LwP asakusa」というスペースだ。今村さんはここをひとつの拠点として、あたらし
【自作を語る】『究竟の地 岩崎鬼剣舞の一年』 text 三宅流
『究竟の地−岩崎鬼剣舞の一年』は先月、一ヶ月にわたるポレポレ東中野での劇場公開を無事終えた。昨年の10月から「もりおか映画祭」を皮切りに東北巡回上映を続けてきて、今回の東京公開に繋がった。しかし東京での公開が終りではなく
【Review】『季節、めぐり それぞれの居場所』 text 萩野亮
♪今日は会社の月給日 お金もたくさんもらったし 芸者かおうか 女郎かおうか 嫁に相談してどやされた ストトン ストトン みどりのなかをゆっくりとくぐり抜け、一軒のつつましい宅老所にわたしたちはたどり着く。にぎやかな唄声が
【Review】『忘れられた地域史を歩く』藤野豊著 text 細見葉介
地域からの告発と葛藤の記録忘れてはいけない歴史が、各地域にある。一見レトロな趣のある近代建築も、そこにあった歴史を知れば苦々しい思いで向き合わざるを得ない。そんな示唆に満ちているのが本書である。著者の藤野豊氏は、私が通っ
【Review】『劇場版 笑ってさよなら~四畳半下請け工場の日々~』 text 中村のり子
割烹着姿のおばちゃんが、手作業で次々仕上げる小さな部品。「世界のトヨタ」に使われているが、果たして何のための部品なのか、は知らないのだそうだ。トヨタのお膝元・名古屋の放送局CBCが、小さな4次下請け工場の閉鎖を見つめたテ
【リレー連載】ワールドワイドNOW★NY発/アメリカで語られる東日本大震災の姿(後編) text 東谷麗奈
二本目の作品は、全米公共放送PBSで放映されたFrontlineシリーズの 一時間のドキュメンタリー「Inside Japan’s Nuclear Meltdown(日本の核メルトダウンの真相)」だ。この作品 は、ジャー
【論考】 視覚と身体のZ軸(後編) 『世界最古の洞窟壁画 3D 忘れられた夢の記憶』 text 神田映良
このように『Pina』では、3Dによる空間性は全て、肉体の実在感という中心軸から捉えられている。例外は、モノレールの車窓から街を捉えたショットだ。列車の先頭車両で、正面から迫ってくる光景を窓越しに眺めるあの体験がそのまま
【論考】 視覚と身体のZ軸(前編) 『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』 text 神田映良
3D映画というと、どうも、その大半がやたらと騒がしい映画という印象が拭えない。僕が3Dに期待するところは、アトラクション的な派手さなどではなく、物が、空間が、眼前に存在するというリアリティを、一段も二段も格上げするという
【連載②】 『究竟の地 岩崎鬼剣舞の一年』 text 若木康輔
♯2 『究竟の地 岩崎鬼剣舞の一年』2012年2月7日 映画美学校試写室山形国際ドキュメンタリー映画祭2009出品版は、10年の秋、ポレポレ東中野《ドキュメンタリー・ドリームショー》で見ている。161分の長尺だった。劇場
【Essay】ドキュメンタリー魂 text 伏屋博雄
※真ん中が小川紳介監督、左側が著者 敬愛する監督は小川紳介である。わたしはスタッフとして24年間、彼の死まで関わったから当然と思われるかもしれないが、彼以外にも(若い世代の監督を含めて)ずいぶん大勢の監督を知ったが、彼