【Essay】すべてのレコードはドキュメンタリーである text 鈴木並木

我が家にやってきたステレオには、レコードが付属品についていた。汽車の走る音を録音したレコードだった。レコードをターンテーブルの上に乗せて針を落とすと、右から左へと汽車が駆け抜けていった。そして今後は左から右へ。     

【自作を語る】『Beyond the ONEDAY〜Story of 2PM&2AM〜』 text 大道省一

敬愛する市川崑監督曰く「映画は所詮、光と影だと思います」 その言葉に魅入られた挙げ句に進路を変更し、美大の映画コースへ。あれから14年、私は『Beyond the ONEDAY〜Story of 2PM & 2A

【Interview】『死刑弁護人』齊藤潤一監督インタビュー

「オウム真理教事件」や「光市母子殺害事件」など数々の死刑事件を扱ってきた安田好弘弁護士を被写体にした映画『死刑弁護人』が6月30日よりポレポレ東中野、名古屋シネマテークで公開されている。 世間からの様々なバッシングを受け

【自作を語る】『アジア映画の森 新世紀の映画地図』 text 夏目深雪・佐野亨

夏目深雪 編集・執筆 最初に断っておくと、書籍「アジア映画の森 新世紀の映画地図」は、自作というよりは、5人の監修者と私を含めた2人の編集者、24人の執筆者+αの共同作品である。あくまで私の視点からの出版の動機といきさつ

【Essay】 映されないものに目を凝らす ~震災のイメージと「記憶」についての雑感~ text 畑あゆみ

東日本大震災から1年。私たちは、今なおその影響が続く地震、大津波、原発事故という一連の出来事を、どのように認識し「記憶」しているだろうか。木々や家をなぎ倒していく真っ黒な津波のニュース映像、避難を呼びかけるアナウンサーの

【特別対談】それぞれのドキュメンタリー、それぞれのフィクション――『隣ざかいの街‐川口と出逢う‐』をめぐって(後篇) 星野智幸×岡本和樹

岡本和樹監督作『隣ざかいの街−川口と出逢う−』(2010)の上映会が、7/2(月)UPLINK-FACTORYにて開催されます。 この作品は、川口市情報・映像メディアセンター メディアセブンで2009年11月~2010年

【Interview】ETV特集『見狼記』スタッフ・インタビュー

「見えないものを見ようとした人々の、ものがたり。」 明治末期に絶滅したといわれるニホンオオカミ。この幻の獣に酷似した動物を目撃して以来、もう一度出会う悲願のため情熱を燃やし続ける男性がいる。痕跡を求めて調査していくうち、

【自作を語る】 『オロ』 自作を呟く text 岩佐寿弥

写真「オロと監督」 オロと一緒に、まるで“孫とおじいちゃん”のように映画に登場する岩佐寿弥監督ふとした偶然でチベット人と出会い、その魅力に惹き込まれて16年の歳月が流れた。 3年目くらいに一人のチベットのお婆さんに寄り添

【特別対談】それぞれのドキュメンタリー、それぞれのフィクション――『隣ざかいの街‐川口と出逢う‐』をめぐって(前篇) 星野智幸×岡本和樹

岡本和樹監督作『隣ざかいの街−川口と出逢う−』(2010)の上映会が、7/2(月)UPLINK-FACTORYにて開催されます。 この作品は、川口市情報・映像メディアセンター メディアセブンで2009年11月~2010年

【Interview】『希望のシグナル-自殺防止最前線からの提言-』 都鳥伸也&都鳥拓也監督インタビュー

日本で最も自殺率が高い秋田県で行われている自殺防止活動に焦点を当てた映画『希望のシグナル-自殺防止最前線からの提言-』が現在ポレポレ東中野で上映されている。 毎年約3万人が自らその命を絶っている現在の日本。無縁死の問題も

【特別寄稿】『阿賀に生きる』完成20周年 16mmニュープリント作成にご協力を! text 小林茂

『阿賀に生きる』は、過去の映画ではなく、東日本大震災や原発爆発を経験したわれわれが生きていく世界に、ひとすじの光を投げかけているのではないだろうか。  新潟水俣病が発生した阿賀野川を舞台にしたドキュメンタリー映画『阿賀に

【自作を語る】『モバイルハウスのつくりかた』を製作して text 本田孝義

『モバイルハウスのつくりかた』本題に入る前に、前章から書き起こしてみたい。前作『船、山にのぼる』の上映が一段落し、映像祭のディレクターの仕事を終えた2009年春、私はやっと次作の準備を始めた。前2作が、岡山県、広島県で撮

【記録文学論②】『内部の人間の犯罪』 text 中里勇太

文学において、ことばにおいて、岩盤を蹴る、その瞬間の沈黙へ抵抗することばをわたしたちは持ち得ていないのか。あるいはそれを獲得することは、わたしたちにとってひとつの未来の身体、新たな身振りへとなるのだろうか。昭和33年(1

【Review】「ひっくりかえる展」 text 成澤智美

アート集団「Chim↑Pom」がキュレーションする展覧会「ひっくりかえる展」。この展覧会には、世界を代表する4組のアーティヴィスト(アート+アクティヴィスト)とも呼べる者たちとそれに続く5組のグループの作品が一堂に会する

【Report】 フィルムとビデオの先へ 「イメージフォーラム・フェスティバル2012」 text 中村のり子

今年も、GWにイメージフォーラムフェスティバルの東京上映を見に行った。わたしが見ることのできたのは6プログラム21作品、中国のアイ・ウェイウェイの2作品以外は日本の作品だった。持ち味の異なる映像を順番に見ながら、ぼんやり

【Report】 出品作家から見た「イメージフォーラム・フェスティバル2012」 text 佐藤健人

佐藤健人(映像作家)セルフ・インタビュー──イメージフォーラムフェスティバル2012のジャパン・トゥモロウ(一般公募部門)で『5月/May』がノミネート上映された佐藤健人さんに「出品作家の眼から見たイメージフォーラムフェ

【特集】特集上映「記録映画作家・土本典昭」によせて text 熊谷博子・鎌仲ひとみ・松林要樹

2012年6月18日より、東京のアテネ・フランセ文化センターで始まる特集上映「記録映画作家・土本典昭」は、2008年6月に逝去された土本典昭監督その人について撮られた3本の映画とともに、土本作品を一挙上映するまたとない上

【Review】「エイガ雑誌なんて要らない」映画秘宝2012年7月号 text 雉雅威

今から15年ほど前、僕は新宿TUTAYAというお店のアルバイト店員でした。レンタルビデオのフロアは、当時日本で有数と言われるぐらいのビデオ在庫量でした。働いている店員も多種多様。邦画マニア・洋画マニア・アニメマニアから、

【Review】 <自然>とは何か―露口啓二×倉石信乃「Natural History」 text 吉成秀夫

また、ここでいう<自然>とは、そういった手がかりなしには決して捉えることのできないものであり、人間世界とはつねに並行していて決して交わることのない物質世界の謂いの裏返しでもある。倉石の詩的でありかつ批判的である思考は、世

【Review】「幻のモダニスト 写真家堀野正雄の世界」 text 岡本和樹 

東京都写真美術館で「幻のモダニスト 写真家堀野正雄の世界」が開催され、同名の書籍も発売された。一般的には写真集『カメラ・眼×鉄・構成』(1932年)での機械的な構成美からなるモダニストとしての堀野正雄の姿が有名であるが、

【Interview】『隣る人』刀川和也監督インタビュー text 山森亜沙美

児童養護施設「光の子どもの家」を8年かけて撮影したドキュメンタリー映画「隣る人」が、5月12日からポレポレ東中野で公開されている。 ――公開まで8年という長い時間をかけて、子どもたちとそれぞれの「関係」を、一人ひとり丁寧

【Review】 『うたう天皇』中西進著 text 樋口明

本書は、戦後を代表する万葉学者の中西進が、戦後の視点から新たに万葉集の精神について語ったものである。万葉集の精神については、戦前、日本浪漫派の保田與重郎が当時の「近代の超克」的な観点から読み解き、人々に大きな影響を与えた